皮膚貫通型医療機器およびストーマを有する患者のQOL向上を目的としたスキンボタンシステムの開発・実用化研究

文献情報

文献番号
200913005A
報告書区分
総括
研究課題名
皮膚貫通型医療機器およびストーマを有する患者のQOL向上を目的としたスキンボタンシステムの開発・実用化研究
課題番号
H20-活動・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
巽 英介(国立循環器病センター研究所 人工臓器部)
研究分担者(所属機関)
  • 妙中 義之(国立循環器病センター研究所 人工臓器部)
  • 武輪 能明(国立循環器病センター研究所 人工臓器部 )
  • 水野 敏秀(国立循環器病センター研究所 人工臓器部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(活動領域拡張医療機器開発研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
36,483,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、長期間留置される皮膚貫通型医療機器の創部治療を緩和・不要化するスキンボタンを開発することである。留置カテーテル・チューブ類や補助人工心臓(VAD)の送脱血管/駆動ラインなどでは皮膚貫通部の炎症や感染が問題となり、患者のQOLや予後を大きく左右している。本研究ではこれら患者の創部管理を緩和・不要化し、患者QOLの大幅な向上と在宅医療を推進することを目指す。
研究方法
 昨年度までにSPU多孔体の物性・機能性評価、材料設計(ミクロデザイン)、基礎的製造技術の確立について完了したが」、本年度は、具体的開発目標としてVAD送脱血管/駆動ライン用およびCAPD用のスキンボタンを採り上げ、それらのマクロデザイン設計を行ってプロトタイプを試作し、慢性動物実験で実際の長期評価を開始した。
結果と考察
1)各種スキンボタンのマクロデザイン設計・試作
 治癒性・保護性・柔軟性を併せ持つ構造・力学物性を考慮し、CAPDチューブおよびVAD送脱血管/駆動ライン用のスキンボタンのマクロデザインを設計した。ライン貫通部分と接して外力を分散する均質材のディスクと組織との癒着の役割をなす多孔体フランジ部分を一体化させた構造とし、プロトタイプの試作・改良を重ねた。CAPD用スキンボタンに関してはCAPDチューブと一体化した最終試作を完了し、またVAD用スキンボタンについても長期動物評価の段階に到達した。
2)スキンボタンの慢性動物実験評価
 CAPD用スキンボタンに関しては、実際に毎日CAPDを施行する長期動物試験で2ヶ月間の創部管理不施行下での維持に成功した。安定期には強い外力を加えても皮下フランジ部分の動揺を認めず、スキンボタンと皮膚の一体化とも言える強固な癒着形成により、皮膚の損傷等も一切観察されなかった。剖検所見においても皮膚のダウングロースは完全に防止され、微小孔内部への良好な組織浸潤と血管増生像が確認された。VAD用スキンボタンについては、送脱血管用カフ型ボタンおよびドライブライン用スキンボタン共に1例ずつ長期動物評価を行ったが、感染を全く認めない極めて安定した状態でそれぞれ2および3ヶ月の維持に成功した。
結論
 具体的開発目標としてVAD送脱血管/駆動ライン用およびCAPD用のスキンボタンを設計・試作し、長期動物評価で良好な初期成績を得た。現在量産可能なミニプラントを整備中であり、製品化を念頭においた研究開発段階に進む予定である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-