稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究

文献情報

文献番号
202211044A
報告書区分
総括
研究課題名
稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究
課題番号
20FC1052
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 真志(国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学 大学院医学系研究科皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 青山 裕美(川崎医科大学 医学部)
  • 天谷 雅行(慶應義塾大学 医学部 皮膚科学教室)
  • 池田 志斈(順天堂大学 医学部)
  • 石河 晃(東邦大学 医学部)
  • 氏家 英之(北海道大学 大学院医学研究院)
  • 黒沢 美智子(順天堂大学 医学部)
  • 下村 裕(山口大学 大学院医学系研究科)
  • 鈴木 民夫(山形大学 医学部)
  • 高橋 勇人(慶應義塾大学 医学部)
  • 田中 暁生(広島大学大学院 医系科学研究科 皮膚科学)
  • 玉井 克人(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 照井 正(日本大学医学部)
  • 室田 浩之(国立大学法人 長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 山上 淳(東京女子医科大学 皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
稀少難治性皮膚疾患を対象とし、全国調査等による科学的根拠を集積、エビデンスに基づいたガイドラインの作成と改訂を進め、医療情報提供と社会啓発活動を通して医療の質の向上に寄与し研究成果の国民への還元を目的とする
研究方法
1.各疾患の研究
[天疱瘡] 臨床症状スコアであるpemphigus disease area index(PDAI)で中等症/重症に分類される症例に対して後方視的に解析を行った。
[類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)] COVID-19ワクチン接種後の疾患再燃や新規発症の頻度を患者の診療録を基盤に単施設後向観察研究を実施し、免疫チェックポイント阻害薬投与後に生じた類天疱瘡の実態を把握するためにclinical question(CQ)を設定し調査票を作成した。
[膿疱性乾癬] 患者の遺伝子解析と、日本皮膚科学会臨床研究指定施設を対象としたアンケート調査を行った。
[表皮水疱症] 全ての研究プロセスにおいて患者視点を反映するために患者が参画し、研究者と患者の協働による患者参画型研究を実施した。
[先天性魚鱗癬] 薬剤の治療効果と安全性に焦点をあてた臨床実態調査、啓発活動、遺伝学的解析を行った。
[弾性線維性仮性黄色腫] レジストリを再構築し、新たな検査法として高解像度末梢骨用定量的CT(HR-pQCT)の評価を行った。
[眼皮膚白皮症] ガイドライン・補遺版の広報を行い、眼皮膚白皮症を含む遺伝性色素異常症症例の遺伝子診断結果をレジストリに追加した。
[遺伝性血管性浮腫] オンラインのレジストリシステム(Rudy)を用いて「発作の記録」と「患者QOL調査」の集計と解析を行った。
2.共通研究課題
[症例登録と疫学解析] 2012、2015~17年度の天疱瘡受給者の性別年齢分布、病型別の割合、治療状況等を比較し難病法施行前後の変化を確認し、重症度については2015~17年度の変化を確認した。
結果と考察
1.各疾患の研究
[天疱瘡] 67名の患者が対象となり、治療開始前の平均PDAIは32.4であり、重症39例、中等症28例であった。追加治療を必要とした29例のDay0におけるPDAIの平均は、追加治療を必要としなかった38名のPDAIの平均より有意に高かった。治療において客観的な臨床スコアを定期的に評価することの重要性が証明された。
[類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)] ワクチン接種後に新規発症または再燃した症例は8例、接種後に再燃のない類天疱瘡は33例であった。調査票を全国11施設に送付し、設定した6つのCQに関して推奨文と解説を作成している。
[膿疱性乾癬] ミエロペルオキシダーゼ(MPO)はMPO変異陰性患者の海綿状膿疱の好中球に豊富に発現が認められ、MPO変異陽性患者におけるMPOの発現量は著しく低下していた。大都市に比較して過疎地域施設の方が患者を診察している割合が多かった。人口の少ない地域では特定の病院に診療が集中していることが推察される。
[表皮水疱症] 【第一回検討会:現行QOL調査の質問票に対する検討】、【第二回検討会:研究テーマの検討と研究成果の利用】、【第三回検討会:研究テーマの検討】の検討会を開催し、現行のQOL質問票への問題点が指摘された。
[先天性魚鱗癬] 二次調査で返信を得た全140例について統計学的解析を施行した。複数の病因遺伝子を同定するとともに、Conradi-Hünermann-Happle症候群症例にIL-4/13経路の阻害剤を投与し皮膚症状を大きく改善できたことを報告した。
[弾性線維性仮性黄色腫] レジストリ登録の再編集と、HR-pQCTについては皮内石灰化の程度を定量化することで重症度の客観的評価を行った。
[眼皮膚白皮症] ガイドラインについて解説した。遺伝子診断できた症例は15例であった。
[遺伝性血管性浮腫] 58件の発作記録が登録され質問票には24件の自己申告データが蓄積された。発作は時間帯に関係なく、様々な部位で突然の浮腫を生じ、高いQOL障害を引き起こすことが明らかとなった。
2.共通研究課題
[症例登録と疫学解析] 治療実施のうち改善した割合は2012年と比べて2015年以降にステロイド治療、血漿交換療法、ステロイドパルス療法、免疫抑制剤の更新例で低下していた。2015年以降の受給者数の減少は治療による改善例であった可能性も考えられるが引き続き詳細な検討が必要である。
結論
最終年度となる2022年度は、2020~2021年度に各疾患で推し進めてきた、全国調査等による疫学動向の統合的な分析、全国の患者レジストリの拡充、関連学会や患者会のサポート等を通じた継続的な医療情報提供と社会啓発をまとめ上げ、稀少難治性皮膚疾患対策に貢献することができた。

公開日・更新日

公開日
2024-04-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202211044B
報告書区分
総合
研究課題名
稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究
課題番号
20FC1052
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 真志(国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学 大学院医学系研究科皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 青山 裕美(川崎医科大学 医学部)
  • 天谷 雅行(慶應義塾大学 医学部 皮膚科学教室)
  • 池田 志斈(順天堂大学 医学部)
  • 石河 晃(東邦大学 医学部)
  • 氏家 英之(北海道大学 大学院医学研究院)
  • 黒沢 美智子(順天堂大学 医学部)
  • 澤村 大輔(弘前大学医学部皮膚科)
  • 下村 裕(山口大学 大学院医学系研究科)
  • 鈴木 民夫(山形大学 医学部)
  • 高橋 勇人(慶應義塾大学 医学部)
  • 田中 暁生(広島大学大学院 医系科学研究科 )
  • 玉井 克人(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 照井 正(日本大学 医学部)
  • 秀 道広(広島大学大学院 医歯薬保健学研究院(皮膚科学))
  • 室田 浩之(国立大学法人 長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 山上 淳(東京女子医科大学 皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、稀少難治性皮膚疾患を対象として、全国疫学調査、QOL調査等による科学的根拠の集積・分析を推進するとともに、医療情報提供と社会啓発活動を通して、臨床現場における医療の質の向上を図り、国民への研究結果の還元を促進することである。
研究方法
1.各疾患群の研究
[天疱瘡] 診療ガイドラインの改訂・最適化を行うため、罹患状況の調査、ガイドラインに準拠した天疱瘡の治療成績の評価を行なった。
[類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)] 2017年に成立したガイドラインの普及に努めるとともに、薬剤との因果関係を含めた罹患実態および臨床情報の調査を行った。
[膿疱性乾癬] ガイドラインの普及による治療水準の向上に努めるとともに、継続的に患者QOL調査を行った。
[表皮水疱症] 新規治療法開発とガイドライン策定に向けて、患者会との連携を強化しつつ、疫学調査を計画した。
[先天性魚鱗癬] 罹患実態および患者QOLに関する全国調査を通じて、現在の診断基準と重症度分類の妥当性を評価するとともに、診療ガイドラインの策定を進めた。
[弾性線維性仮性黄色腫] 患者の実態調査に基づいた診療ガイドラインを作成するとともに、その普及と啓発活動に努めた。
[眼皮膚白皮症] 診療ガイドラインの啓蒙と普及を進めるとともに、最適化を図るため、症例レジストリの構築、網羅的な遺伝子診断方法の開発を行った。
[遺伝性血管性浮腫] レジストリを立ち上げて罹患実態を把握するとともに、治療薬の位置づけと使用法の確立、診療体制の構築をめざした。
2.共通研究課題
[症例登録と疫学解析] 全国規模で各疾患の臨床疫学像・重症度分布を把握するとともに、臨床調査個人票などに基づいたデータベースを解析する。
[生体試料蓄積] 多施設共同で各疾患の臨床情報と連結可能な生体試料を寄託・管理・分譲できるネットワークシステムの整備に取り組む。
結果と考察
1.各疾患群の研究
[天疱瘡] 本研究が行われた3年間で、自己免疫性水疱症に対するリツキシマブの有効性を示した本邦初の前向き試験の結果、天疱瘡診療ガイドラインに従って治療方針を立てることの有用性の検討、などの成果が報告された。
[類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む)] 英語版を含めた診療ガイドラインを発表できた。またDPP-4阻害薬に関連した水疱性類天疱瘡の全国調査を通じて、今後のガイドライン改訂に向けて重要な情報が得られた。
[膿疱性乾癬] 英語版も発表されたことで、診療ガイドラインの普及・啓蒙活動が進んだ。患者QOL調査では、ガイドラインの整備や生物学的製剤の適応拡大などにより、膿疱性乾癬の治療水準が向上していることが示唆された。
[表皮水疱症] 患者に最新医療情報を提供し、QOL向上を図るためには、新規治療法の開発チーム、患者会との連携が重要であることが再認識された。さらに、ガイドライン作成に向けて、全国レベルでの症例集積を継続していく。
[先天性魚鱗癬] 全国疫学調査およびQOL調査の結果から、これまでに策定された診断基準・重症度分類の妥当性が示された。今後さらに情報を集積し、診療ガイドラインの策定を進める。
[弾性線維性仮性黄色腫] 診療ガイドラインにより、各医療者の診療水準が高まってきたのは明らかであり、今後さらに範囲を広げて啓蒙活動を続ける。
[眼皮膚白皮症] 2015年から新たに指定難病となった時期に一致して、診療ガイドラインおよび補遺が発表できた。また、これまでの研究で設計された色素異常症診断パネルが実用化され、正確かつ迅速な診断が可能となった。
[遺伝性血管性浮腫] レジストリを用いた研究により、発作時の治療が自己注射による在宅へ移行している傾向が確認できた。今後も、治療効果などの検討を継続的に行なっていく。
2.共通研究課題
[症例登録と疫学解析] 対象疾患の臨床疫学像を把握することは、稀少難治性皮膚疾患のガイドライン作成および改訂時には必須である。引き続き、患者情報を分析し、診療に関わる医師、患者・家族、行政等に研究成果を還元していく。
[生体試料蓄積] 本バンク事業は、手続きが煩雑であることから、各共同研究期間から協力を得ることが困難であった。今後は、主要な医療機関で情報を共有できるシステムを検討していくことが重要と考えられた。
結論
本研究班の目的は稀少難治性皮膚疾患における、1)診療ガイドライン作成・改訂、2)データベース作成・疫学解析、3)情報提供と社会啓発であり、各疾患群の研究と共通研究課題が協調しながら研究が進められた。今後も、ガイドライン最適化のための科学的根拠の集積、QOL調査、レジストリ構築などを通じて、対象疾患の患者・家族をはじめとした国民生活に有意義に還元できるような研究の継続が期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202211044C

収支報告書

文献番号
202211044Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
36,000,000円
(2)補助金確定額
36,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 11,518,070円
人件費・謝金 8,646,495円
旅費 199,440円
その他 7,639,619円
間接経費 8,000,000円
合計 36,003,624円

備考

備考
自己資金 3624円

公開日・更新日

公開日
2023-11-21
更新日
-