Claudin binder修飾ナノリポソームを利用した上皮癌の早期診断・治療法の開発

文献情報

文献番号
200912042A
報告書区分
総括
研究課題名
Claudin binder修飾ナノリポソームを利用した上皮癌の早期診断・治療法の開発
課題番号
H21-ナノ・若手-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 昌夫(大阪大学大学院 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 亮(帝京大学 薬学部)
  • 阿部 康弘(医薬基盤研究所 基盤的研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
上皮細胞が癌化すると、分裂軸が水平方向から垂直方向に回転し、細胞間隙面に局在するclaudin (CL)を表面に露出した状態で増殖を開始する可能性が示唆されており、 CLリガンドを利用すれば癌化早期イベントを利用した新規癌診断・治療法の開発に繋がると考えられる。そこで本研究では、上皮細胞の癌化超早期イベントである分裂軸の回転に着目した癌診断・治療用ナノメディシンの創出を試みる。
研究方法
平成21年度は、CL-4 binder(C-CPE)と蛋白合成阻害因子(PSIF)との融合蛋白質を作製、CLを利用した癌治療戦略の特性を解析し、C-CPEをprototypeとして用いた新規CL binderの創出を試み、C-CPEを用いてCL指向性リポソーム調製条件の検討を行った。
結果と考察
1)CLを利用した癌治療法の検証:CL-4 binderと緑膿菌エキソトキシン由来蛋白合成阻害因子(PSIF)との融合蛋白質C-CPE-PSIFを作製した。C-CPE-PSIFはCL-4指向性を有しており、細胞極性依存的な細胞障害性を示していた。さらに、マウス乳癌細胞に対してin vitroおよびin vivoにおいて抗腫瘍効果を有していた。
2)新規CL binderの創製:CL発現出芽バキュロウイルスを用いて、C-CPE誘導体ライブラリ等の中からCL-1、-4 binderのスクリーニングを試みたところ、CL-1結合分子、およびC-CPEに比して4-20倍のCL-4結合性および6-20倍の溶解性を示すC-CPE誘導体の取得に成功した。
3)C-CPEを用いたCL-4指向性リポソームの創製:C-CPEをPEG末端に付加したC-CPE修飾PEGリポソームを作製した。リポソーム作製に使用したローダミン標識脂質の蛍光を指標に本リポソームのCL-4指向性を解析したところ、C-CPE修飾PEGリポソームはC-CPEを介してCL-4発現細胞特異的な結合性を有していた。
結論
平成21年度は、CLを標的とした癌治療法の可否を検証し、既存のCL binderに比して優れたCL結合特性を有する分子の取得に成功した。さらに、C-CPEを用いてリポソーム修飾条件に関する情報を得た。これらの成果を踏まえ、引き続き新規CL binderの創出を進めると同時にCL指向性ナノ粒子の作製および機能解析を試みる予定である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-