文献情報
文献番号
202211039A
報告書区分
総括
研究課題名
自己炎症性疾患とその類縁疾患の全国診療体制整備、移行医療体制の構築、診療ガイドライン確立に関する研究
課題番号
20FC1047
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
西小森 隆太(久留米大学 医学部小児科)
研究分担者(所属機関)
- 井澤 和司(京都大学大学院医学研究科発達小児科学講座)
- 石村 匡崇(九州大学病院総合周産期母子医療センター(小児科))
- 井田 弘明(久留米大学 医学部 呼吸器・神経・膠原病内科)
- 伊藤 秀一(国立成育医療研究センター 内科系診療部 腎臓・リウマチ・膠原病科)
- 今井 耕輔(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 茨城県小児・周産期地域医療学講座)
- 大西 秀典(岐阜大学大学院医学系研究科 小児科学)
- 岡田 賢(広島大学大学院医系科学研究科 小児科学)
- 小原 收(かずさDNA研究所 ゲノム事業推進部)
- 金澤 伸雄(兵庫医科大学 医学部)
- 金兼 弘和(東京医科歯科大学 大学院 小児地域成育医療学講座)
- 河合 利尚(国立成育医療研究センター 成育遺伝研究部)
- 川上 純(国立大学法人長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科先進予防医学共同専攻)
- 神戸 直智(関西医科大学)
- 岸田 大(信州大学 医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科)
- 笹原 洋二(東北大学大学院医学系研究科 発生・発達医学講座 小児病態学分野)
- 杉浦 一充(藤田医科大学 医学部)
- 高田 英俊(筑波大学 医学医療系)
- 武井 修治(鹿児島大学 医学部 保健学科)
- 日衛嶋 栄太郎(京都大学医学部附属病院 小児科)
- 平家 俊男(京都大学 大学院医学研究科)
- 右田 清志(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
- 宮前 多佳子(東京女子医科大学 医学部)
- 向井 知之(川崎医科大学 免疫学)
- 盛一 享徳(国立成育医療研究センター 研究所 小児慢性特定疾病情報室)
- 森尾 友宏(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 発生発達病態学分野)
- 八角 高裕(京都大学大学院医学研究科発達小児科学)
- 山田 雅文(北海道大学大学院医学研究院小児科学教室)
- 和田 泰三(金沢大学医薬保健研究域医学系小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
27,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
自己炎症性疾患は自然免疫系遺伝子異常を原因とし、全身炎症や多臓器障害を呈する稀少疾患である。平成29-令和元年度“自己炎症性疾患とその類縁疾患の全国診療体制整備、重症度分類、診療ガイドライン確立に関する研究”班で、診療体制整備、患者登録システム構築、診療ガイドライン/フローチャートの作成・改訂、を行った。しかし、ガイドライン未整備疾患の存在、保険診療未対応遺伝子の解析体制の未完成、患者登録・非遺伝性疾患の全国疫学調査等が未達成であった。以上の問題を解消また新しい課題に取り組むべく、1)保険診療で行えない同疾患の遺伝子解析体制構築、2)国際遺伝子診断ガイドラインを基に本邦の遺伝子診断ガイドライン作成、3)保険収載・未収載ともに対応可能な遺伝子診断体制の整備、4)難病プラットフォームによる患者登録、5)診療ガイドライン/フローチャート作成・改訂、6)移行期医療指針の提案、7)各成果の自己炎症性疾患WEBサイト掲載による疾患啓発、を行う。
本研究の特色・独創的な点として、地域の拠点病院に所属する自己炎症性疾患専門小児科・内科・皮膚科医師等と疫学統計の専門家が研究分担者として加わっている。これにより地域に根ざした小児から成人まで対応する診療体制とエビデンスに基づいた診療ガイドイラン/フローチャートの作成が可能となる。また患者情報・検体により、他の横断的・探索的・創薬の研究班と連携し、自己炎症性疾患の診療エビデンスの構築のみならず、自然科学の発展に寄与する。
本研究の特色・独創的な点として、地域の拠点病院に所属する自己炎症性疾患専門小児科・内科・皮膚科医師等と疫学統計の専門家が研究分担者として加わっている。これにより地域に根ざした小児から成人まで対応する診療体制とエビデンスに基づいた診療ガイドイラン/フローチャートの作成が可能となる。また患者情報・検体により、他の横断的・探索的・創薬の研究班と連携し、自己炎症性疾患の診療エビデンスの構築のみならず、自然科学の発展に寄与する。
研究方法
今年度、以下の3つの研究を行った。1)診療体制整備、移行期医療の指針作成、関連研究との連携、2)患者登録システムの推進・全国調査、3)診療ガイドライン/フローチャート作成 、遺伝子検査の臨床的妥当性、有用性の評価と遺伝子診断に関する研究。
結果と考察
1)自己炎症性疾患の診療体制の整備、移行期医療に関する研究
JSIADと連携、保険診療による遺伝子解析結果解釈支援、結果問い合わせに対する支援体制を継続した(年間約800件)。WEBでの医師からの患者相談事業を継続した(年間約100件)。小児・成人の移行医療促進のため、Blau症候群の移行医療指針を作成した。コルヒチン抵抗性または不耐性の家族性地中海熱患者を対象に、トシリズマブの二重盲検無作為化並行群間比較試験を実施した。前試験では主要評価項目を達成できなかったが,トシリズマブの長期投与における有効性と安全性が確認された(Clin Exp Rheumatol, 2022)。中條-西村症候群・AGS・STING異常症を対象にバリシチニブの治験を行い、有効性及び安全性について報告した(Pediatr Rheumatol, in press)。
厚生労働省“難治性・希少免疫疾患におけるアンメットニーズの把握とその解決に向けた研究”班(代表、宮前多佳子)と連携してQOL調査票の検討を行った。自己炎症性疾患の患者会の協力の下、患者会に寄せられた相談事例について、国際生活機能分類(ICF)の概念を導入し、ICFの分類コードを対応させ、相談事例の客観的評価を試みた。
2)患者登録システムの推進・全国調査
難病プラットフォームへの患者登録を継続した。CDC42異常症はPyrinインフラマソームと関連していることを報告した(J Exp Med,2022)。ROSAH症候群の国際共同研究にて世界27名、本邦1名の患者を確認した(Ann Rheum Dis, 2022)。慢性再発性多発性骨髄炎の全国調査で、二次調査で250症例のデータを集積、最終的に205症例で解析を行った。クリオピリン関連周期熱症候群の全国調査で103名の臨床データを解析した。A20ハプロ不全症の全国調査で本邦に約60名弱の患者を確認した。
3)診療ガイドライン/フローチャート作成
PAPA症候群、中條・西村症候群、A20ハプロ不全症、家族性地中海熱、PFAPAの診療ガイドライン作成、改訂作業をMindsに準拠して行った。各疾患CQに対する推奨文を完成した。CDC42異常症、SPENCDIの診療フローチャートを完成した。ADA2欠損症の国際共同研究として関与しコンセンサスステートメントを作成した。前研究班から引き続き作成した診断基準、診療フローチャートをJSIADホームページへ掲載手続き中である。
以上、JSIADと連携しながら自己炎症性疾患の診療体制の整備をすすめた。また、小児・成人移行医療を推進し、各全国調査を進捗させた。難病プラットフォームによる登録事業を推進した。診療ガイドライン作成、改訂も順調に進行した。
JSIADと連携、保険診療による遺伝子解析結果解釈支援、結果問い合わせに対する支援体制を継続した(年間約800件)。WEBでの医師からの患者相談事業を継続した(年間約100件)。小児・成人の移行医療促進のため、Blau症候群の移行医療指針を作成した。コルヒチン抵抗性または不耐性の家族性地中海熱患者を対象に、トシリズマブの二重盲検無作為化並行群間比較試験を実施した。前試験では主要評価項目を達成できなかったが,トシリズマブの長期投与における有効性と安全性が確認された(Clin Exp Rheumatol, 2022)。中條-西村症候群・AGS・STING異常症を対象にバリシチニブの治験を行い、有効性及び安全性について報告した(Pediatr Rheumatol, in press)。
厚生労働省“難治性・希少免疫疾患におけるアンメットニーズの把握とその解決に向けた研究”班(代表、宮前多佳子)と連携してQOL調査票の検討を行った。自己炎症性疾患の患者会の協力の下、患者会に寄せられた相談事例について、国際生活機能分類(ICF)の概念を導入し、ICFの分類コードを対応させ、相談事例の客観的評価を試みた。
2)患者登録システムの推進・全国調査
難病プラットフォームへの患者登録を継続した。CDC42異常症はPyrinインフラマソームと関連していることを報告した(J Exp Med,2022)。ROSAH症候群の国際共同研究にて世界27名、本邦1名の患者を確認した(Ann Rheum Dis, 2022)。慢性再発性多発性骨髄炎の全国調査で、二次調査で250症例のデータを集積、最終的に205症例で解析を行った。クリオピリン関連周期熱症候群の全国調査で103名の臨床データを解析した。A20ハプロ不全症の全国調査で本邦に約60名弱の患者を確認した。
3)診療ガイドライン/フローチャート作成
PAPA症候群、中條・西村症候群、A20ハプロ不全症、家族性地中海熱、PFAPAの診療ガイドライン作成、改訂作業をMindsに準拠して行った。各疾患CQに対する推奨文を完成した。CDC42異常症、SPENCDIの診療フローチャートを完成した。ADA2欠損症の国際共同研究として関与しコンセンサスステートメントを作成した。前研究班から引き続き作成した診断基準、診療フローチャートをJSIADホームページへ掲載手続き中である。
以上、JSIADと連携しながら自己炎症性疾患の診療体制の整備をすすめた。また、小児・成人移行医療を推進し、各全国調査を進捗させた。難病プラットフォームによる登録事業を推進した。診療ガイドライン作成、改訂も順調に進行した。
結論
1)診療体制整備、移行期医療の指針作成、関連研究との連携に関して、2)患者登録システムの推進・全国調査、3)診療ガイドライン/フローチャート作成に関して、令和4年度もほぼ予定通りに行われた。
公開日・更新日
公開日
2024-04-04
更新日
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