RNA創薬を支援するバイオイメージング技術の確立

文献情報

文献番号
200912039A
報告書区分
総括
研究課題名
RNA創薬を支援するバイオイメージング技術の確立
課題番号
H20-ナノ・若手-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
浅井 知浩(静岡県立大学大学院 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではsiRNAの体内動態を非侵襲的、リアルタイムかつ高感度に解析する技術の確立を目的とし、siRNAの18Fポジトロン標識体の開発ならびにPETを用いた動態解析技術の構築を目指した。
研究方法
初年度に開発に成功したsiRNAポジトロン標識体を用い、2年目となる本年度は、siRNA体内動態のPET解析法の構築、PETと蛍光法の比較、および各種ベクターに搭載したsiRNAのPET体内動態解析を重点的に実施した。siRNAの体内動態を解析するにあたっては、siRNAベクターとしてカチオニックリポソームとポリエチレングリコール(PEG)修飾リポソームを用いた。これら物性のまったく異なるリポソームをsiRNAベクターとして用いることでsiRNAの体内動態を比較評価した。
結果と考察
予めsiRNAの血清中での安定性についてin vitroで検討し、siRNA単体では血清中で速やかに分解されるが、ベクターに搭載したsiRNAは安定であることを明らかにした。次に18Fポジトロン標識siRNAをマウスに尾静脈内投与し、その体内動態を簡易型二次元PET装置で解析した。その結果、siRNA単体では投与後速やかに腎臓に集積し、膀胱に移行する様子が観察された。カチオニックリポソームに搭載したsiRNAは投与後速やかに肺に集積し、そのまま肺に留まる様子が観察された。PEG修飾リポソームに搭載したsiRNAでは、全身からシグナルが検出され、PEG修飾リポソームの特徴である長期血中滞留性を示すイメージデータが得られた。PET計測終了後にマウスを解剖して各組織の放射線量を測定した結果、イメージデータとの整合性が得られた。以上のように、用いたベクターの性質に依存してsiRNAの体内動態が変化する様子を非侵襲的にイメージングすることに成功した。一方、PET解析データとの比較検証を目的とし、Alexa750標識siRNAを用いた近赤外蛍光in vivoイメージングにより、その体内動態を解析した。標識および測定装置以外はPET解析と全く同様の条件で動態を解析した。その結果、PETと蛍光法のデータ間には測定原理に基づく差が生じるものの、蛍光法はPET解析データの検証に有効であることが明らかになった。
結論
本年度までの研究事業計画はほぼ予定通りに遂行しており、siRNA体内動態のPET解析技術の確立に向けて、着実に研究成果が得られた。siRNAの体内動態に関して有益な情報が得られれば、RNA創薬の開発効率を高め、創薬の加速化に繋がると期待される。また、本技術の確立は、ヒトマイクロドーズ試験への応用に発展する可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
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