文献情報
文献番号
202211037A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性腎障害に関する調査研究
課題番号
20FC1045
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
成田 一衛(国立大学法人 新潟大学 大学院医歯学総合研究科 腎・膠原病内科学)
研究分担者(所属機関)
- 柏原 直樹(学校法人川崎学園 川崎医科大学 医学部 腎臓・高血圧内科学)
- 和田 隆志(国立大学法人 金沢大学 事務局)
- 丸山 彰一(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院医学系研究科腎臓内科)
- 旭 浩一(岩手医科大学 医学部)
- 清水 章(日本医科大学医学部 病理学 (解析人体病理学))
- 安藤 昌彦(名古屋大学医学部附属病院 先端医療開発部データセンター)
- 杉山 斉(川崎医療短期大学)
- 廣村 桂樹(群馬大学大学院医学系研究科内科学講座腎臓・リウマチ内科学)
- 木村 友則(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 難治性疾患研究開発・支援センター)
- 鈴木 祐介(順天堂大学 腎臓内科)
- 横尾 隆(東京慈恵会医科大学 医学部)
- 山縣 邦弘(筑波大学 医学医療系臨床医学域腎臓内科学)
- 坪井 直毅(藤田医科大学 医学部)
- 猪阪 善隆(大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学)
- 中川 直樹(旭川医科大学 内科学講座 循環・呼吸・神経病態内科学分野)
- 武藤 智(順天堂大学 医学部)
- 星野 純一(東京女子医科大学 医学部)
- 服部 元史(東京女子医科大学腎臓小児科)
- 岩野 正之(福井大学医学部)
- 岡田 浩一(埼玉医科大学 医学部)
- 古市 賢吾(金沢医科大学 腎臓内科学)
- 鈴木 仁(順天堂大学医学部大学院医学研究科腎臓内科学)
- 臼井 丈一(筑波大学医学医療系)
- 和田 健彦(東海大学医学部)
- 西尾 妙織(北海道大学 北海道大学病院 内科Ⅱ)
- 金子 佳賢(新潟大学大学院医歯学総合研究科 腎研究センター 腎・膠原病内科学分野)
- 忰田 亮平(新潟大学医歯学総合病院 腎・膠原病内科)
- 大塚 忠司(新潟大学医歯学総合病院 腎・膠原病内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
27,690,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究事業は難治性腎障害に関する調査研究を行い、医療水準の向上と良質かつ適切な診療提供体制の構築に貢献することを目的とする。本事業の主な対象となる7つの腎領域指定難病 (IgA腎症、多発性嚢胞腎、急速進行性糸球体腎炎、抗糸球体基底膜腎炎、一次性ネフローゼ症候群、一次性膜性増殖性糸球体腎炎、紫斑病性腎炎)、および腎疾患の小児・成人移行医療については、エビデンスに基づく診療ガイドラインが公表されているが、より有効な周知と普及、腎予後・生命予後の改善,QOLの向上に繋がる効果的な運用が求められる。そのためには、日本腎臓学会、日本小児腎臓病学会等の関連学会、ならびに各疾患患者会などとの緊密な連携の下、普及・啓発をすすめる必要がある。
また、日本腎臓学会との連携で構築運営されている腎疾患登録システム (J-RBR(日本腎生検レジストリー)/J-KDR(日本腎臓病レジストリー))、J-RBRと連携した腎病理バーチャルスライドシステム、電子カルテから直接データを抽出するJ-CKD-DB(日本慢性腎臓病データベース)など大規模データベースが構築されているが、これらをさらに有効活用する取り組みが必要である。指定難病臨床調査個人票データを活用した診断・重症度分類の検証も今後の課題である。本研究事業では、これらを通してエビデンスの蓄積、治療指針の検証、改訂を行うことも目的とする。
さらに、AMED研究をはじめとする関連研究の基盤を提供し、研究成果情報の共有や取りまとめ、新たな問題点の抽出等、関連研究グループと密接な連携体制を構築し、腎臓領域の難病に係る研究開発の推進に貢献する。
また、日本腎臓学会との連携で構築運営されている腎疾患登録システム (J-RBR(日本腎生検レジストリー)/J-KDR(日本腎臓病レジストリー))、J-RBRと連携した腎病理バーチャルスライドシステム、電子カルテから直接データを抽出するJ-CKD-DB(日本慢性腎臓病データベース)など大規模データベースが構築されているが、これらをさらに有効活用する取り組みが必要である。指定難病臨床調査個人票データを活用した診断・重症度分類の検証も今後の課題である。本研究事業では、これらを通してエビデンスの蓄積、治療指針の検証、改訂を行うことも目的とする。
さらに、AMED研究をはじめとする関連研究の基盤を提供し、研究成果情報の共有や取りまとめ、新たな問題点の抽出等、関連研究グループと密接な連携体制を構築し、腎臓領域の難病に係る研究開発の推進に貢献する。
研究方法
研究組織は、「研究代表者」が統括する「疾患登録・調査研究分科会」と「診療ガイドライン分科会」の2つの分科会、「研究管理推進委員会」「事務局」を合わせて研究班全体を統括する「研究運営委員会」で構成する。「疾患登録・調査研究分科会」では各WGにおいて各疾患の診療実態と予後を検討し、2次研究を行う。「診療ガイドライン分科会」では、より有効な周知と普及、腎予後・生命予後の改善,QOLの向上に繋がる効果的な運用を推進する。関連学会、各疾患患者会との緊密な連携の下、普及・啓発および遵守状況や予後への効果の調査をすすめ、次期改訂への情報とする。
結果と考察
「疾患登録・調査研究分科会」では、J-RBR/J-KDRが改訂なされ、2018年1月より新システムでの登録・運用が開始された。新旧システムにおける集計結果を報告した。さらに、J-RBRデータと連結した腎生検病理組織のバーチャルスライドシステムが稼働し、ほぼすべてのフォーマットに対応できるシステムが整備された。このシステムの利活用について、日本腎臓学会のもと、ワーキンググループが発足した。IgA腎症、急速進行性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、多発嚢胞腎の各WGでは、それぞれの研究計画に沿って、診療実体、予後、患者QOLに調査した。疾患の診断基準・重症度分類・治療指針の検証を行い、診療ガイドラインの改訂、治療法未確立の腎障害に対する普及・啓発、診療体制の整備に貢献するに資する充実した研究成果を挙げた。移行WGでは、日本小児腎臓病学会との連携により、小児期に腎代替療法を開始した小児ESKD患者の成人期の実態(医学的、社会的、心理・社会的、精神的アウトカム)を調査し、その結果から「思春期・青年期の患者のための末期(ESKD)診療ガイド」が公表された。小児期発症ESKD患者の医学的予後のみならず心理社会的、精神的予後の向上につながるものと期待される。
診療ガイドライン分科会では、診療ガイドライン2020の普及状況の把握のために実施した腎臓専門医アンケート結果を解析し、次回改訂のための問題点を整理し、論文化を進めた。J-CKD-DBExや臨床個人票データベースを用いて、ガイドライン推奨の遵守状況の調査を進めた。さらに患者・家族向けの療養ガイド2023を執筆し、PDF版を研究班ホームページに公開している。
厚生労働省より提供を受けた臨床調査個人票由来の難病データベースやレジストリデータを用いて、人工知能(AI)による深層学習等を用いて解析した。
診療ガイドライン分科会では、診療ガイドライン2020の普及状況の把握のために実施した腎臓専門医アンケート結果を解析し、次回改訂のための問題点を整理し、論文化を進めた。J-CKD-DBExや臨床個人票データベースを用いて、ガイドライン推奨の遵守状況の調査を進めた。さらに患者・家族向けの療養ガイド2023を執筆し、PDF版を研究班ホームページに公開している。
厚生労働省より提供を受けた臨床調査個人票由来の難病データベースやレジストリデータを用いて、人工知能(AI)による深層学習等を用いて解析した。
結論
本事業により、腎領域関連AMED研究との連携、指定難病 7疾患の判定・重症度分類の検証、申請書様式の見直し、申請書のデータベース化と2次利用、申請を促す普及活動、診療体制の整備とバーチャルスライドの症例登録の充実、移行医療の啓発・普及に対する取り組み、2020年度版ガイドラインの普及の各課題について、大きな成果が得られた。これらの成果を通して難治性腎障害の発症・重症化の抑制、医療提供体制の整備、腎代替療法を要する患者数の抑制に結びつく医療水準の向上、患者のQOL向上に繋がることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2024-04-02
更新日
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