非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を基盤分子とするアミロイドイメージングプローブの開発

文献情報

文献番号
200912036A
報告書区分
総括
研究課題名
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を基盤分子とするアミロイドイメージングプローブの開発
課題番号
H19-ナノ・若手-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小野 正博(京都大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、フラボノイド系化合物とは異なる、新たな分子ライブラリー構築のため、Aβ凝集体への結合性が報告されている、NSAIDsを基本骨格とする新規アミロイドイメージングプローブの開発を計画した。今年度は、新たに、NSAIDs化合物から派生したフェニインドールおよびジフェニルオキサジアゾールを基本骨格とする数種類の放射性ヨウ素標識体を設計・合成し、そのSPECT用アミロイドイメージングプローブとしての有用性について検討を行った。
研究方法
(1) 種々の置換基を導入した5種の2-PI誘導体、1種の1-PI誘導体および6種の1,3,4-DPOD誘導体の合成
(2) Aβ(1-42)凝集体を用いたインビトロ結合実験
(3) Tg2576脳切片を用いた蛍光染色実験
(4) 正常マウスを用いた体内放射能分布実験
結果と考察
NSAIDsを基盤分子とする数種類の新規SPECT用プローブを設計・合成した。アミロイド凝集体を用いたインビトロ結合実験において、ジフェニルオキサジアゾール誘導体化合物36と化合物37は、アミロイド凝集体に対する高い結合親和性を示した。アルツハイマー病モデルマウス脳切片を用いた蛍光染色実験より、化合物および化合物は、脳への高い移行性を示した。今後、ジフェニルオキサジアゾール骨格へ更なる分子修飾を行い、高性能なアミロイドイメージングプローブの開発を推進していくとともに、アミロイドイメージングプローブとなりうるNSAIDsを基盤分子とした新規リード化合物を探索していく予定である。
結論
NSAIDsを基盤分子とする放射性ヨウ素標識化合物の中から、ジフェニルオキサジアゾール骨格が新規SPECT用アミロイドイメージングプローブとして機能することが示唆された。また、本結果はNSAIDsを基盤分子としたアミロイドイメージングプローブ開発の妥当性を示すものであり、今後更なるリード化合物の探索研究の必要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200912036B
報告書区分
総合
研究課題名
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を基盤分子とするアミロイドイメージングプローブの開発
課題番号
H19-ナノ・若手-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小野 正博(京都大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルツハイマー病(AD)の早期診断は早期治療に不可欠であるが、現在、ADの確定診断は死後脳の病理学的所見(老人斑の沈着、神経原線維変化の出現)に委ねられており、広範な脳障害が生じる前の早期段階でADを診断することは困難となっている。これまでにADの生物学的診断マーカーとしていくつかの報告があるが、臨床上実用的なものは未だ開発されていない。このような状況下、ADの早期診断に対する社会的要求は高く、その早急な開発が強く望まれている。そこで申請者は、簡便で非侵襲的かつ信頼性と再現性に優れる早期AD診断法の確立を目的とし、AD発症過程における最も初期の脳病変である老人斑を体外から画像化できる放射性プローブの開発を計画するに至った。
研究方法
① Aβに選択的に結合する母体化合物の選定を行う。この際の候補化合物として、Aβとの結合性を有することが報告されている、非ステロイド性抗炎症薬を用い、数種の置換基を導入した放射性ヨウ素あるいは99mTc標識化合物を設計・合成する。
② インビトロ結合実験によるAβとの親和性の評価及び正常マウスにおける放射能動態の検討を行う。
③ AD脳の病理学的変化を再現したトランスジェニックマウスをモデル動物として用い、オートラジオグラフィー法によりAD脳での老人斑アミロイドへの集積性を検討し、本化合物のAD画像診断用放射性プローブとしての有用性を評価する
結果と考察
種々の置換基を導入した5種の2-PI誘導体、1種の1-PI誘導体および6種の1,3,4-DPOD誘導体を合成することに成功した。Aβ(1-42)凝集体を用いたインビトロ結合実験において、インドール骨格の2位にフェニル基を導入した2-PIは側鎖に導入した置換基に関わらず、Aβ凝集体に対し高い結合親和性を示したのに対してインドール骨格の1位にフェニル基を導入した1-PIはAβ凝集体に対して、顕著な結合親和性を示さなかった。1,3,4-DPOD誘導体はいずれの化合物もAβ凝集体に対して結合親和性を示したが、導入した側鎖によって結合性には変化が見られた。正常マウスを用いた体内放射能分布実験において2-PIは脳への移行性を示したものの、クリアランスが遅く、脳内での滞留性が示唆された。
結論
NSAIDsを基盤分子とする放射性ヨウ素標識化合物の中から、DPODおよび2-PI骨格が新規SPECT用アミロイドイメージングプローブとして機能することが示唆された。また、本結果はNSAIDsを基盤分子としたアミロイドイメージングプローブ開発の妥当性を示すものであり、今後更なるリード化合物の探索研究の必要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200912036C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究成果によって、NSAIDsを基盤分子とする放射性ヨウ素標識化合物の中から、DPODおよび2-PI骨格が新規SPECT用アミロイドイメージングプローブとして機能することが示唆された。また、本結果はNSAIDsを基盤分子としたアミロイドイメージングプローブ開発の妥当性を示すものであり、新規SPECT用アミロイドイメージングプローブ開発の可能性が示された。
臨床的観点からの成果
日本においてPET診断が実施できる施設は200施設程度であり、1施設あたりの診断数は5,6人/日であることから、今後急増するAD患者およびその発症前の人口を、PET診断によって早期・予防診断することは不可能と考えられる。一方、SPECT診断が可能な施設は日本で2000以上あることから、SPECT製剤の開発は意義深い。
ガイドライン等の開発
ガイドラインなどの開発に関して特記する事項なし。
その他行政的観点からの成果
SPECTによるアルツハイマー病の早期・予防診断技術の開発の必要性は、患者やその家族の生活の質の向上を図り、患者の介護による経済的・社会的負担を軽減する上においても極めて大きいと考えられる。また、現在問題となっている過剰な医療費の削減にもその意義は大きいと考えられる。
その他のインパクト
その他のインパクトに関して特記する事項なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計5件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ono M, Haratake M, Saji H et al.
Development of novel β-amyloid probes based on 3,5-diphenyl-1,2,4-oxadiazole.
Bioorganic and Medicinal Chemistry , 16 , 6867-6872  (2008)
原著論文2
Maya Y, Ono M, Watanabe H et al.
Novel radioiodinated aurones as probes for SPECT imaging of b-amyloid plaques in the brain.
Bioconjugate Chemistry , 20 , 95-101  (2009)
原著論文3
Ono M, Watanabe R, Kawashima H et al.
18F-labeled flavones for in vivo imaging of b-amyloid plaques in Alzheimer’s brains.
Bioorganic and Medicinal Chemistry , 17 , 2069-2076  (2009)
原著論文4
Watanabe H, Ono M, Ikeoka R et al.
Synthesis and biological evaluation of radioiodinated 2,5-diphenyl-1,3,4-oxadiazoles for detecting b-amyloid plaques in the brain.
Bioorganic and Medicinal Chemistry , 17 , 6402-6406  (2009)
原著論文5
Ono M, Hayashi S, Kimura H et al.
Push-pull benzothiazole derivatives as probes for detecting b-amyloid plaques in Alzheimer’s brains.
Bioorganic and Medicinal Chemistry , 17 , 7002-7009  (2009)
原著論文6
Ono M, Watanabe R, Kawashima H et al.
Fluoro-pegylated chalcones as positron emission tomography probes for in vivo imaging of b-amyloid plaques in Alzheimer’s disease.
Journal of Medicinal Chemistry , 52 , 6394-6401  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-