運動失調症の医療水準、患者QOLの向上に資する研究班

文献情報

文献番号
202211033A
報告書区分
総括
研究課題名
運動失調症の医療水準、患者QOLの向上に資する研究班
課題番号
20FC1041
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 理(国立大学法人新潟大学 脳研究所脳神経内科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 矢部 一郎(北海道大学大学院医学研究院)
  • 青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)
  • 池田 佳生(群馬大学大学院医学系研究科 脳神経内科学)
  • 石川 欽也(東京医科歯科大学医学部附属病院)
  • 桑原 聡(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院神経内科学)
  • 高橋 祐二(国立精神・神経医療研究センター・病院・神経内科)
  • 戸田 達史(東京大学大学院医学系研究科 神経内科学)
  • 田中 章景(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 渡辺 宏久(藤田医科大学 脳神経内科)
  • 勝野 雅央(名古屋大学 大学院医学系研究科 神経内科)
  • 下畑 享良(岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野)
  • 吉田 邦広(信州大学医学部)
  • 丸山 博文(広島大学大学院 医系科学研究科)
  • 花島 律子(鳥取大学 医学部 医学科 脳神経医科学講座 脳神経内科)
  • 和泉 唯信(徳島大学病院 脳神経内科)
  • 高嶋 博(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 瀧山 嘉久(山梨大学 大学院 総合研究部 医学域)
  • 金谷 泰宏(東海大学医学部基盤診療学系臨床薬理学)
  • 佐々木 征行(国立精神・神経医療研究センター病院小児神経科)
  • 高尾 昌樹(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院臨床検査部)
  • 宮井 一郎(社会医療法人大道会森之宮病院)
  • 二村 直伸(国立病院機構 兵庫中央病院 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
26,923,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、運動失調症に関する実態調査、発症前診断と早期診断システムの確立、失調症全般および各疾患の症状評価方法の確立、国際治験推進のための欧米研究組織との連携強化、既存の薬物療法とリハビリテーション療法の標準化、バイオマーカー研究の推進、生体試料研究の基盤整備、既存レジストリーの拡充整備に取り組む予定です。研究は3年間行われ、各項目間の連携や関連するAMED研究班との連携を強化して推進されます。特に、広汎型のポリグルタミン病や潜性遺伝性脊髄小脳変性症において、遺伝子治療や核酸治療の時代が訪れているため、治療に伴う課題への対策も重要な焦点です。
研究方法
①小児の小脳低形成と小脳萎縮の実態調査を行い、遺伝子解析や臨床的特徴の検討を行った。②小脳性運動失調症や自己免疫性小脳性運動失調症の診断や遺伝子解析に関する研究を行い、早期診断システムの確立を目指した。③特発性小脳失調症の自然歴や症状評価方法を明らかにし、アンケート調査やデータ収集法の開発を行った。④国際的な連携を強化し、遺伝性脊髄小脳変性症やDRPLAなどの研究推進や治験に取り組んだ。⑤特定の疾患に対する治療法の標準化や有効性・安全性の評価を行い、新たな治療法の開発に取り組んだ。⑥多系統萎縮症患者の皮膚発汗機能を評価するバイオマーカーの研究や脊髄小脳変性症の自然経過を解析し、臨床試験の妥当性向上や予後推計のためのベースラインの構築を行った。⑦運動失調症に関するバイオマーカー研究のために生体試料の整備や血液エクソソームの予備試験を行った。⑧既存のレジストリを拡充し、遺伝子解析や診断基準の比較などを行った。
結果と考察
小児を含む実態調査の結果、176家系中96家系から疾患の遺伝子バリアントが見つかりました。これらのバリアントに基づく早期治療の有効性が報告され、予後改善に役立っています。純粋小脳型の遺伝子検査により、SCA31やSCA6などの遺伝子変異が多く見つかりました。これにより、これらの疾患の早期診断と遺伝性の特定が可能となり、適切な治療法の選択と管理が進められるようになりました。また、免疫介在性小脳性運動失調症の診断が確立され、適切な治療法の選択と管理も進んでいます。
CANVASの研究が行われ、ACAGGのホモ接合性伸長がCANVASの特徴的な変異であることが確認されました。さらに、CANVASの病態理解と診断への貢献につながる症状の経過が報告されました。病理所見が解明され、Purkinje細胞の消失や神経細胞の脱落が観察されました。
MSAやPDの家系において、GBAやCOQ2などの病原性のバリアントが同定され、これらのバリアントに基づく病態理解が進められました。
失症の治療・ケアに関する研究も進展しています。抗体検査や免疫組織染色による診断方法の改善が報告されました。また、特発性小脳失調症、多系統萎縮症、SCA6、SCA31などの疾患を対象としたアンケート調査により、症状の自然経過や悪化速度の比較が行われ、特にMSA-Cの進行が速い傾向が示されました。
治療法やリハビリテーションの研究も進められており、特定の疾患における運動療法やリハビリテーションの効果が病型によって異なることが報告されました。さらに、SCA6に対するL-アルギニンの治療効果を検証する臨床試験や、動物モデルを用いた研究による特定の薬剤の効果の観察も行われました。
国際的な連携も重要視されており、欧米の研究組織との共同研究により、診断における髄液や血清の測定方法の確立が進められました。治験の推進も行われ、多くの研究機関や医療機関が協力して新たな治療法や介入法の開発に取り組んでいます。
結論
これらの研究の進展により、失調症の病態理解が深まり、診断や治療法の改善が実現しました。特定の遺伝子バリアントや疾患特異的な症状の把握が可能となり、個別化された治療プランの策定や予後の予測が行われるようになりました。総括すると、失調症に関する研究は多方面から進展しており、疾患の遺伝子バリアントや病態理解の向上、診断方法や治療法の改善が進んでいます。さらなる研究や臨床試験の実施、社会的な取り組みの強化が求められています。これにより、失調症を抱える患者の生活の質や予後の改善に貢献し、より良い支援体制の構築に向けた一歩となるでしょう。

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202211033B
報告書区分
総合
研究課題名
運動失調症の医療水準、患者QOLの向上に資する研究班
課題番号
20FC1041
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 理(国立大学法人新潟大学 脳研究所脳神経内科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 矢部 一郎(北海道大学大学院医学研究院)
  • 青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)
  • 池田 佳生(群馬大学大学院医学系研究科 脳神経内科学)
  • 石川 欽也(東京医科歯科大学医学部附属病院)
  • 桑原 聡(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院神経内科学)
  • 高橋 祐二(国立精神・神経医療研究センター・病院・神経内科)
  • 戸田 達史(東京大学大学院医学系研究科 神経内科学)
  • 田中 章景(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 渡辺 宏久(藤田医科大学 脳神経内科)
  • 勝野 雅央(名古屋大学 大学院医学系研究科 神経内科)
  • 下畑 享良(岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野)
  • 吉田 邦広(信州大学医学部)
  • 丸山 博文(広島大学大学院 医系科学研究科)
  • 二村 直伸(国立病院機構 兵庫中央病院 神経内科)
  • 花島 律子(鳥取大学 医学部 医学科 脳神経医科学講座 脳神経内科)
  • 和泉 唯信(徳島大学病院 脳神経内科)
  • 高嶋 博(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 瀧山 嘉久(山梨大学 大学院 総合研究部 医学域)
  • 金谷 泰宏(東海大学医学部基盤診療学系臨床薬理学)
  • 佐々木 征行(国立精神・神経医療研究センター病院小児神経科)
  • 高尾 昌樹(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院臨床検査部)
  • 宮井 一郎(社会医療法人大道会森之宮病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、脳表ヘモジデリン沈着症について、1)実態調査を通じて疾患の頻度と特徴を明らかにする。2)発症前診断および早期診断システムを確立する。3)失調の症状評価方法を確立する。4)欧米研究組織との連携を強化し、国際的な治験推進の基盤を作る。5)既存の治療法やリハビリテーション療法、進行期治療方法を標準化する。6)早期診断および重症度判定に資するバイオマーカー研究を推進する。7)生体試料研究の基盤を整備する。8)既存のレジストリを拡充し、医療機会の平等を促進する。
研究方法
実態調査:脊髄小脳変性症と多系統萎縮症の疾患頻度を明らかにする。発症前診断および早期診断システム:新たな診断基準を確立し、早期診断の方法を提案する。失調の症状評価方法:赤外線深度センサー、プリズム学習、加速度計を使用した評価方法を検証し、新たな臨床評価スケールを開発する。欧米研究組織との連携強化:国際治験推進の基盤を作り、共同研究やデータ共有を行う。治療法の標準化:リハビリテーションの検証と開発・普及を行い、緩和ケアの検討を進める。バイオマーカー研究の推進:自立機能検査や神経心理検査、画像診断を用いてバイオマーカーの可能性を検証し、疾患の診断や予後の評価に役立つバイオマーカーを見出す。生体試料研究の基盤整備:臨床試料の集積方法を検討し、バイオマーカーの開発に必要な基盤を整える。レジストリの拡充整備:疾患の自然歴研究を進める。
結果と考察
実態調査により、脊髄小脳変性症と多系統萎縮症の頻度と特徴が明らかにされた。特に皮質性小脳萎縮症の重要性が示された。発症前診断および早期診断システムの確立に成功し、新たな診断基準の有用性が検証された。失調の症状評価方法が検証され、新たな臨床評価スケールの開発が進められた。欧米研究組織との連携が強化され、国際的な治験推進の基盤が作られた。治療法の標準化が進み、リハビリテーションの効果や進行期治療方法の指針が確立された。バイオマーカー研究が推進され、自立機能検査や神経心理検査、画像診断によるバイオマーカーの有用性が検証された。生体試料研究の基盤が整備され、バイオマーカーの開発に向けた研究が進められた。レジストリが拡充され、疾患の自然歴研究が論文化され、医療機会の平等が促進されるプロトタイプが作られた。発症前診断や早期診断の確立は、遺伝性疾患の倫理的問題や経済・社会的な課題に対処する上でのプロトタイプとなる。また、治療体制整備や疾患のスクリーニング体制、治療前後のカウンセリング体制などにおいて提言を与える。実態調査の結果、疾患の頻度と特徴が明らかにされたことにより、疾患に関する理解が深まった。これにより、治療やケアの方針を適切に立てることができる。発症前診断や早期診断システムの確立は、治療の早期介入や遺伝性疾患の予防に大きく貢献する。新たな診断基準の妥当性が示されたことにより、今後の臨床試験や治療の対象選択においても有用な情報となる。症状評価方法の確立により、失調の程度や疾患毎の症状の評価がより客観的に行える。これにより、治療の効果の評価やリハビリテーションの効果の確認が容易になる。欧米研究組織との連携の強化や国際治験推進の基盤作りは、研究の国際的な質の向上や新たな治療法の開発につながる。また、データ共有や共同研究により、疾患に対する理解と治療の進歩が促進される。治療法の標準化により、患者への一貫性のある治療が行われる。これにより、治療の効果や安全性の比較が容易になり、患者のQOLの向上に寄与する。バイオマーカー研究の推進は、疾患の早期診断や病態解明につながる。特に早期診断や重症度の判定に資するバイオマーカーの開発は、治療の個別化や予後予測に役立つ。これにより、患者の適切な治療計画やケアの提供が可能になり、効果的な治療戦略の構築に貢献する。生体試料研究の基盤整備により、臨床試料の集積と解析が効率的に行われるようになる。これにより、バイオマーカーの探索や治療効果の評価に必要なデータの収集と分析が進められ、研究の進展が期待される。レジストリの拡充により、疾患に関する情報の収集と分析が行われ、医療機会の平等な提供が実現する。また、自然歴研究は、疾患の理解と診療の向上に寄与する。アンケート調査を通じて、本疾患に対する医療機関や医師の取り組みや患者サポート体制の実態を把握することができ、既存の社会的資源の活用や包括的な患者サポート体制の充実につながる。
結論
これらの取り組みにより、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、脳表ヘモジデリン沈着症の医療基盤が構築され、医療水準の向上と患者のQOLの向上に寄与することが期待される。また、遺伝性疾患の診断と治療における倫理的な問題や経済・社会的な課題にも対処し、社会的な側面からも難病施策のプロトタイプとなる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202211033C

収支報告書

文献番号
202211033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
34,999,000円
(2)補助金確定額
34,965,000円
差引額 [(1)-(2)]
34,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,742,705円
人件費・謝金 539,044円
旅費 1,327,491円
その他 10,280,190円
間接経費 8,076,000円
合計 34,965,430円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-01-22
更新日
-