稀少てんかんに関する包括的研究

文献情報

文献番号
202211031A
報告書区分
総括
研究課題名
稀少てんかんに関する包括的研究
課題番号
20FC1039
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
井上 有史(国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 福山 哲広(信州大学医学部新生児学・療育学講座)
  • 本田 涼子(国立病院機構長崎医療センター)
  • 池田 昭夫(京都大学 大学院医学研究科 脳病態生理学講座 臨床神経学分野)
  • 今井 克美(国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター てんかん科)
  • 伊藤 進(東京女子医科大学 小児科)
  • 神 一敬(東北大学大学院医学系研究科 てんかん学分野)
  • 嘉田 晃子(国立循環器病センター研究所病因部)
  • 柿田 明美(新潟大学 脳研究所)
  • 加藤 光広(昭和大学 医学部)
  • 川合 謙介(自治医科大学)
  • 菊池 健二郎(埼玉県立小児医療センター 神経科)
  • 九鬼 一郎(大阪市立総合医療センター 小児神経内科)
  • 小林 勝弘(岡山大学病院 小児神経科)
  • 松尾 健(NTT東日本関東病院 脳神経外科)
  • 青天目 信(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 奥村 彰久(愛知医科大学 医学部)
  • 齋藤 明子(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター臨床研究センター 臨床研究企画部 臨床疫学研究室)
  • 齋藤 貴志(国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経診療部)
  • 佐久間 啓(公益財団法人東京都医学総合研究所 脳・神経科学研究分野)
  • 白石 秀明(北海道大学病院)
  • 白水 洋史(独立行政法人国立病院機構西新潟中央病院 脳神経外科)
  • 菅野 秀宣(順天堂大学 医学部)
  • 高橋 幸利(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部)
  • 河野 剛(聖マリア病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
稀少てんかんレジストリへの疾患登録、死因登録、遺伝子登録を継続しつつ、指定難病および類縁疾患についての実態調査、診断基準の見直し、ガイドラインの作成、移行医療・難病ケアのモデル構築、患児や家族の社会生活の実態把握、他研究事業および他研究班との連携推進、情報提供・教育・啓発活動を行う。
研究方法
当研究班が担当する23の指定難病(先天性核上性球麻痺、アイカルディ症候群、片側巨脳症、限局性皮質異形成、神経細胞移動異常症、ドラベ症候群、海馬硬化症を伴う内側側頭葉てんかん、ミオクロニー欠神てんかん、ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん、レノックス・ガストー症候群、ウエスト症候群、大田原症候群、早期ミオクロニー脳症、遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん、片側痙攣片麻痺てんかん症候群、環状20番染色体症候群、ラスムッセン脳炎、PCDH19関連症候群、徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症、ランドウ・クレフナー症候群、スタージ・ウェーバー症候群、アンジェルマン症候群、進行性ミオクローヌスてんかんを担当)につき疾患概要、診断基準、診療ガイドラインの検証に取り組み、さらに、近縁疾患(自己免疫介在性脳炎・脳症、異形成性腫瘍、視床下部過誤腫症候群、CDKL5遺伝子関連てんかん、血管奇形に伴うてんかん、ビタミンB6依存性てんかん、欠神を伴う眼瞼ミオクローヌス、外傷によるてんかん、てんかんを発症する先天異常症候群など)についても診断基準案の作成等を試みる。その際、稀少てんかんレジストリに登録された症例の横断的な分析を参考にする。また、発作や併存症のデータ分析および難病制度の利用状況の分析に基づいた重症度の再評価、患児の教育機関での実態、家族の社会的調査、難病医療ケア連携体制の整備に必要な情報収集を行う。
結果と考察
疾患レジストリには3815症例が登録された。これらのデータをもとに各難病の病態・治療状態や社会生活状態を分析した。アンジェルマン症候群では小児神経学会専門医に調査を行い、発作が経年的に減少すること、ミオクローヌスの影響などを明らかにした。COVID-19の罹患および予防接種の影響について家族会に調査を行い、特にドラベ症候群で罹患および予防接種による発熱のために発作が誘発されることが多かった。レット症候群や結節性硬化症についてもてんかんの側面から研究をすすめた。てんかんと関連の深い指定難病32疾患のうち28疾患は小児慢性特定疾病(または疾病群)と対応していたが、一部で病名の不一致や混乱が見られ、また小児慢性特定疾病に指定されているが指定難病に認定されていない疾患もあり、難病制度の整合性の改善が望まれた。
指定難病の臨床調査個人票の修正を21疾患について申請した。可能なかぎり、書式の統一につとめた。また難病情報センターの一般向け文書を19疾患について改訂した。修正にあたり各患者家族会に意見を求めた。3疾患(先天性核上性球麻痺、アイカルディ症候群、神経細胞移動異常症)についてMindsに準拠した診療ガイドラインを作成し、学会の承認を得て公表した。ビタミンB6依存性てんかんと欠神を伴う眼瞼ミオクローヌスではアンケート調査を行い、診断基準案を作成した。自己免疫介在性脳炎については診断アルゴリズムを作成した。
死因研究のレジストリも継続しており、86症例が登録され、突然死が1/4を占めていた。病理組織の診断は70例で行われた。てんかん難病にかかわる既知の166 遺伝子につきクリニカルエクソーム解析を行い、約1/3の症例で遺伝子異常が同定された。
てんかん診療を行っている成人診療科医師を対象に移行医療に関する意識調査を行い、移行例未経験医師には詳細な情報提供が求めらることを明らかにした。てんかん重積状態の病院前治療の有用性および使用法に関する要望をまとめた。
てんかん発作を主症状とする難病および難病類縁疾患につき、てんかん学会ガイドライン作成委員会と共同で「てんかん症候群の診断と治療の手引き」を作成、また、一般啓発を目的とした「てんかんの難病ガイド」を制作した。難病の教育・啓発活動の必要性を考察し、患者教育を含めて実践した。
結論
指定難病23疾患につき、疾患概要、診断基準、重症度分類、臨床調査個人票、指定難病の運用状況・利用状況を検証し、修正が必要な項目については提案を行った。難病情報センターの正確な情報提供に協力した。シームレスな移行医療のために必要な事項の研究をすすめた。また、難病患児を有する家族生活および学校生活への影響も調査した。難病の教育・啓発活動の必要性を考察し、実践した。疾患レジストリ、死因レジストリは、遺伝子研究、病理研究も結果を含めて、今後もデータ蓄積が期待される

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202211031B
報告書区分
総合
研究課題名
稀少てんかんに関する包括的研究
課題番号
20FC1039
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
井上 有史(国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 浜野 晋一郎(埼玉県立小児医療センター 神経科)
  • 福山 哲広(信州大学医学部新生児学・療育学講座)
  • 本田 涼子(国立病院機構長崎医療センター)
  • 池田 昭夫(京都大学 大学院医学研究科 脳病態生理学講座 臨床神経学分野)
  • 今井 克美(国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター てんかん科)
  • 伊藤 進(東京女子医科大学 小児科)
  • 神 一敬(東北大学大学院医学系研究科 てんかん学分野)
  • 嘉田 晃子(国立循環器病センター研究所病因部)
  • 柿田 明美(新潟大学 脳研究所)
  • 加藤 光広(昭和大学 医学部)
  • 川合 謙介(自治医科大学)
  • 菊池 健二郎(埼玉県立小児医療センター 神経科)
  • 九鬼 一郎(大阪市立総合医療センター 小児神経内科)
  • 小林 勝弘(岡山大学病院 小児神経科)
  • 松尾 健(NTT東日本関東病院 脳神経外科)
  • 青天目 信(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 奥村 彰久(愛知医科大学 医学部)
  • 齋藤 明子(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター臨床研究センター 臨床研究企画部 臨床疫学研究室)
  • 齋藤 貴志(国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経診療部)
  • 佐久間 啓(公益財団法人東京都医学総合研究所 脳・神経科学研究分野)
  • 白石 秀明(北海道大学病院)
  • 白水 洋史(独立行政法人国立病院機構西新潟中央病院 脳神経外科)
  • 菅野 秀宣(順天堂大学 医学部)
  • 高橋 幸利(独立行政法人国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部)
  • 石井 敦士(国際医療福祉大学)
  • 松石 豊次郎(久留米大学高次脳疾患研究所)
  • 河野 剛(聖マリア病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
担当する23の指定難病(先天性核上性球麻痺、アイカルディ症候群、片側巨脳症、限局性皮質異形成、神経細胞移動異常症、ドラベ症候群、海馬硬化症を伴う内側側頭葉てんかん、ミオクロニー欠神てんかん、ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん、レノックス・ガストー症候群、ウエスト症候群、大田原症候群、早期ミオクロニー脳症、遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん、片側痙攣片麻痺てんかん症候群、環状20番染色体症候群、ラスムッセン脳炎、PCDH19関連症候群、徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症、ランドウ・クレフナー症候群、スタージ・ウェーバー症候群、アンジェルマン症候群、進行性ミオクローヌスてんかん)につき、診断基準、重症度分類の検証、ガイドライン作成や啓発・教育、ケアモデル構築などを、関連機関、他研究事業および他研究班と連携しながら推進する。
研究方法
指定難病および近縁疾患につき、診断基準の検証、重症度の実態調査、ガイドラインの作成、難病の運用状況等に関する調査、小児慢性特定疾病との連携を行い、また患者の病態、社会生活の実態、移行やケアに関する調査を行って、適切な制度の運用に関するデータを得る。その際、当班が運営するレジストリのデータを参照する。また派生研究として死因や遺伝子変異登録を行う。これらの分析により難病制度の改善に関する提案および実践を行う。
結果と考察
指定難病の10疾患(アイカルディ症候群、片側巨脳症、ミオクロニー欠神てんかん、ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん、大田原症候群、早期ミオクロニー脳症、遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん、環状20番染色体症候群、PCDH19関連症候群、徐波睡眠期持続性棘徐波を示すてんかん性脳症)とその他の2疾患(ビタミンB6依存性てんかん、視床下部過誤腫症候群)を小児慢性特定疾病に申請し承認された。指定難病に1疾患(視床下部過誤腫症候群)を申請した。指定難病の通知の変更に関する具体案を提出した。臨床調査個人票の修正を21疾患について申請した。また難病情報センターの一般向け文書を全23疾患について改訂した。修正にあたり各患者家族会に意見を求めた。
3疾患(先天性核上性球麻痺、アイカルディ症候群、神経細胞移動異常症)について診療ガイドラインを作成し、学会の承認を得て公表した。
疾患レジストリに3815症例が登録された。2209症例について発作および併存症の重症度を検討し、1851例が難病法の基準に該当し、指定難病のリストにない疾患/症候群が存在し、また詳細な分類が可能でなかった症例に重症例があり、今後の症例の蓄積が期待された。発作に関する重症度の基準にも検討の余地があることがわかった。またウエスト症候群の303例の横断的調査結果および初発例27例の2年間の追跡結果を報告した。死因研究のレジストリを継続し、86症例が登録され、突然死が1/4を占めていた。てんかん難病にかかわる既知の166 遺伝子につきクリニカルエクソーム解析を行い、約1/3で遺伝子異常が同定された。病理組織の診断は70例/年で行われた。AMED班の医師主導治験の対照研究を新たなレジストリを設定して行い、科学的に妥当な成果を得て公表した。
移行医療および地域難病ケアにつき、成長に応じた心身の変化に対応する体制、地域内の病院間格差の是正、患者/家族の家庭環境、居住地域の医療および福祉体制などを考慮した柔軟性のある移行医療プランの構築、疾病学習や啓発活動の重要性を考察した。成人診療科医師を対象に移行医療に関する意識調査を行い、詳細な情報提供の必要性を考察した。てんかん重積状態の病院前治療の有用性に関する調査、ケトン食についての全国調査、患者家族会と溺水(入浴および水泳)に関するアンケート調査、COVID-19の罹患および予防接種の影響についての家族会の調査を行った。てんかんと関連の深い指定難病32疾患のうち28疾患は小児慢性特定疾病と対応していたが、一部で病名の不一致や混乱が見られ、また相互に認定されていない疾患もあり、難病制度の整合性の改善が望まれた。
啓発活動は対面もしくはオンラインで積極的に行った。てんかん発作を主症状とする難病および類縁疾患につき、てんかん学会ガイドライン作成委員会と共同で書籍「てんかん症候群の診断と治療の手引き」を作成、また一般啓発を目的とした冊子「てんかんの難病ガイド」を制作し公開した。
結論
指定難病疾患の診療ガイドラインや診断基準の作成、疾患概要の修正、重症度の調査・分類の修正を行った。成人期への円滑な診療移行のための調査、地域ケアシステムの構築を推進した。難病患児を有する家族の調査、疾患教育を行った。疾患レジストリに死因研究、遺伝子変異データベースに加え、他研究班との連携研究を行った。

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202211031C

収支報告書

文献番号
202211031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
33,000,000円
(2)補助金確定額
32,990,000円
差引額 [(1)-(2)]
10,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,841,776円
人件費・謝金 1,205,290円
旅費 1,446,779円
その他 17,496,925円
間接経費 3,000,000円
合計 32,990,770円

備考

備考
自己資金681円、その他(利息)89円

公開日・更新日

公開日
2024-01-25
更新日
-