難治性炎症性腸管障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
202211029A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性炎症性腸管障害に関する調査研究
課題番号
20FC1037
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
久松 理一(学校法人杏林学園 杏林大学 医学部消化器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤 朗(滋賀医科大学 医学部)
  • 穂苅 量太(防衛医科大学校 内科学)
  • 仲瀬 裕志(札幌医科大学医学部 消化器内科学講座)
  • 杉田 昭(横浜市立市民病院 臨床研究部 炎症性腸疾患科)
  • 西脇 祐司(東邦大学 医学部)
  • 松本 主之(岩手医科大学 内科学講座消化器内科分野)
  • 池内 浩基(兵庫医科大学 消化器外科学)
  • 金井 隆典(学校法人 慶應義塾 内科学(消化器)教室)
  • 中村 志郎(大阪医科薬科大学医学部 第二内科)
  • 緒方 晴彦(慶應義塾大学医学部内視鏡センター)
  • 小林 拓(北里大学 北里研究所病院)
  • 松岡 克善(東邦大学医療センター佐倉病院)
  • 猿田 雅之(東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科)
  • 清水 俊明(順天堂大学 医学部)
  • 平井 郁仁(福岡大学医学部 消化器内科)
  • 東 大二郎(福岡大学筑紫病院 外科)
  • 石原 聡一郎(東京大学医学部大学院医学系研究科 臓器病態外科学講座腫瘍外科学)
  • 長堀 正和(東京医科歯科大学 消化器内科)
  • 長沼 誠(関西医科大学 医学部 )
  • 江崎 幹宏(佐賀大学医学部 内科学講座消化器内科)
  • 野島 正寛(東京大学医科学研究所 TR・治験センター)
  • 高橋 賢一(東北労災病院 大腸肛門外科)
  • 内田 恵一(三重県立総合医療センター 小児外科)
  • 渡辺 憲治(兵庫医科大学 炎症性腸疾患センター 内科)
  • 岡本 隆一(東京医科歯科大学 医学部 消化器内科)
  • 土屋 輝一郎(筑波大学 医学医療系 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
17,806,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)および希少難病(クロンカイトカナダ症候群、非特異的多発性小腸潰瘍症(田口班)、家族性地中海熱関連腸炎(AMED仲瀬班)、腸管型ベーチェット(岳野班))に関する疫学調査研究、診断基準・治療指針作成、実地医家への啓発活動を通じて、患者QOL向上と医療経済への貢献を目指す。
研究方法
研究班は内科、外科、小児科、疫学統計から構成されている。プロジェクトは大きく6項目からなり、重点プロジェクトではレジストリ研究を中心に推進し、難病プラットフォームを積極的に利用する。他の研究班、学会、AMEDと緊密な連携をとっていく。患者参加型双方向性研究を取り入れながら国民と実地医家への啓発活動を行う。緊急プロジェクトとしてCOVID-19に関する情報発信、疫学調査研究などを推進する。
1. 総括的疫学解析プロジェクト
2. 診断基準・治療指針改訂プロジェクト
3. 重点プロジェクト
1)レジストリ構築:生物学的製剤新規導入患者、新規診断IBD患者、炎症性腸疾患外科手術例、潰瘍性大腸炎関連癌内視鏡治療例、IBD患者における妊娠・出産、高齢IBD患者
2)クローン病関連癌サーベイランス法の確立
4. 緊急プロジェクト IBD患者における新型コロナウィルス感染情報の収集と情報発信
5. 国民啓発と実地医家啓発プロジェクト
6. 腸管希少難病に関する実態調査と啓発活動プロジェクト 対象疾患:クロンカイトカナダ症候群、非特異性多発性小腸潰瘍症(田口班)、腸管ベーチェット病(岳野班、AMED水木班)、家族性地中海熱関連腸炎(AMED仲瀬班)
結果と考察
【結果】令和4年度改訂版診断基準・治療指針(内科、外科、小児科、腸管外合併症)が作成された。難病プラットフォーム利用のレジストリ(新規発症患者、外科手術、妊娠、高齢、クロンカイトカナダ)は利用締結と中央一括審査が終了した。外科手術例、潰瘍性大腸炎関連癌内視鏡治療のレジストリについても順調に進んでいる。COVID-19については、J-COSMOS、J-DESIRE、J-COMABTの3試験が研究班主導でオールJAPAN体制行われており英文化された。小児科との連携も良好でワクチン接種に関するコンセンサスや移行期医療についてはコンセンサスステートメントが公開され英文化された。食事療法の見直しなど患者参加型の企画も進行中である。潰瘍性大腸炎患者における青黛成分を含む漢方薬の自費購入については、実態把握の一・二次調査の結果をもとにエキスパートコンセンサスを公開した。
腸管希少難病に関するプロジェクトについてはクロンカイトカナダ症候群については内視鏡カラーアトラスを公開し英文書籍化も行った。腸管ベーチェット病については岳野班、AMED水木班の患者レジストリに協力している。また腸管ベーチェット病重症度判定基準作成プロジェクトに本研究班に協力している。非特異性多発性小腸潰瘍症については田口班と協力し、小児から成人におけるシームレスなデータベース構築と診断基準改訂を進めている。家族性地中海熱関連腸炎についてはAMED仲瀬班と連携し本疾患概念の確立、診断基準と重症度基準の作成、治療指針の作成に協力している。

【考察】最終年度ということで多くの課題で結果が公開され、多数の英文論文が発表された。本研究班の特徴として班員は内科医、外科医、小児科医、疫学統計から構成され、すべての課題について混成メンバーで取り組んでいるということである。この効果がトランジションに関するエキスパートコンセンサス公開などの成果として現れたと考えられる。また、COVID-19については研究班の強力なリーダーシップの下、学会とも連携しオールJAPAN体制で取り組むことができた。これまでにない患者参加型企画もすすんでおり今後の発展が期待される。レジストリ構築については難病プラットフォーム利用締結も終了し、中央一括審査による倫理審査が承認された。運用開始が少し遅れているが運用には支障はない。潰瘍性大腸炎関連癌内視鏡治療例については日本消化器内視鏡学会との連携によりすでに解析結果は英文誌に投稿中である。クロンカイトカナダ症候群については世界初のカラーアトラスが公開され、英文書籍化された。今後の課題は構築した各種レジストリの運用開始、得られた成果の実地医家・患者への効果的なフィードバック方法の確立、移行期医療の実践と検証、患者を含めた双方向性の取り組みの推進と考えられる。さらにAMEDとの協力のもと、病態に迫る新たな研究の支援も行っていきたい。
結論
消化器内科、外科、小児科、疫学統計専門家からなる研究班により、炎症性腸疾患診断基準・治療指針の作成、レジストリ研究、COVID-19への対応、患者と実地医家への啓発活動、希少疾患のレジストリと啓発活動の推進を行った。

公開日・更新日

公開日
2024-04-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202211029B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性炎症性腸管障害に関する調査研究
課題番号
20FC1037
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
久松 理一(学校法人杏林学園 杏林大学 医学部消化器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤 朗(滋賀医科大学 医学部)
  • 穂苅 量太(防衛医科大学校 内科学)
  • 仲瀬 裕志(札幌医科大学医学部 消化器内科学講座)
  • 杉田 昭(横浜市立市民病院 臨床研究部 炎症性腸疾患科)
  • 西脇 祐司(東邦大学 医学部)
  • 松本 主之(岩手医科大学 内科学講座消化器内科分野)
  • 池内 浩基(兵庫医科大学医学部 消化器外科講座炎症性腸疾患外科)
  • 金井 隆典(学校法人 慶應義塾 内科学(消化器)教室)
  • 中村 志郎(大阪医科薬科大学医学部 第二内科)
  • 緒方 晴彦(慶應義塾大学医学部内視鏡センター)
  • 小林 拓(北里大学 北里研究所病院)
  • 松岡 克善(東邦大学医療センター佐倉病院)
  • 猿田 雅之(東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科)
  • 清水 俊明(順天堂大学 医学部)
  • 平井 郁仁(福岡大学医学部 消化器内科)
  • 二見 喜太郎(福岡大学筑紫病院 臨床医学研究センター(外科))
  • 東 大二郎(福岡大学筑紫病院 外科)
  • 石原 聡一郎(東京大学医学部大学院医学系研究科 臓器病態外科学講座腫瘍外科学)
  • 長堀 正和(東京医科歯科大学 消化器内科)
  • 岡崎 和一(関西医科大学 香里病院)
  • 長沼 誠(関西医科大学 医学部)
  • 江崎 幹宏(佐賀大学医学部 内科学講座消化器内科)
  • 野島 正寛(東京大学医科学研究所 TR・治験センター)
  • 高橋 賢一(東北労災病院 大腸肛門外科)
  • 内田 恵一(三重県立総合医療センター 小児外科)
  • 渡辺 憲治(兵庫医科大学 炎症性腸疾患センター 内科)
  • 岡本 隆一(東京医科歯科大学 医学部 消化器内科)
  • 土屋 輝一郎(筑波大学 医学医療系 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究の目的:難治性炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎【97】・クローン病【96】)および希少難病(クロンカイト・カナダ症候群【289】、非特異的多発性小腸潰瘍症【290】(田口班)、家族性地中海熱関連腸炎【266】(AMED仲瀬班)、腸管型ベーチェット【56】(岳野班))に関する疫学調査研究、診断基準・治療指針作成、実地医家への啓発活動を通じて、患者QOL向上と医療経済への貢献を目指す。
研究方法
研究班は内科、外科、小児科、疫学統計から構成されている。プロジェクトは大きく6項目からなり、重点プロジェクトではレジストリ研究を中心に推進する。他の研究班、学会、AMEDと緊密な連携をとる。患者参加型双方向性研究を取り入れながら国民と実地医家への啓発活動を行う。緊急プロジェクトとしてCOVID-19に関する情報発信、疫学調査研究などを推進する。
1. 総括的疫学解析プロジェクト
2. 診断基準・治療指針改訂プロジェクト
3. 重点プロジェクト
1)レジストリ構築:生物学的製剤新規導入患者、新規診断IBD患者、炎症性腸疾患外科手術例、潰瘍性大腸炎関連癌内視鏡治療例、IBD患者における妊娠・出産、高齢IBD患者
2)クローン病関連癌サーベイランス法の確立
4. 緊急プロジェクト IBD患者における新型コロナウィルス感染情報の収集と情報発信
5. 国民啓発と実地医家啓発プロジェクト
6. 腸管希少難病に関する実態調査と啓発活動プロジェクト 対象疾患:クロンカイトカナダ症候群、非特異性多発性小腸潰瘍症(田口班)、腸管ベーチェット病(岳野班、AMED水木班)、家族性地中海熱関連腸炎(AMED仲瀬班)
結果と考察
【結果】学会や他研究班と協力し、炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020 改訂第2版、クローン病小腸狭窄に対する内視鏡的バルーン拡張術ガイドライン、ベーチェット病診療ガイドライン2020を公開した。さらに小児期発症炎症性腸疾患患者の移行医療(トランジション)に関するコンセンサス・ガイドライン、IBD患者におけるワクチン接種エキスパートコンセンサスが公開された。実地医家のために潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針改訂版が毎年度公開された。COVID-19についてはタスクフォースが結成され、最新の情報を実地医家へ定期発信し、各種提言を行った。さらにJ-COSMOS、J-DESIRE、J-COMABTの3試験が研究班主導でオールJAPAN体制行われ英文化された。難病プラットフォーム利用のレジストリ(新規発症患、外科手術、妊娠、高齢、クロンカイトカナダ)は中央一括審査が終了した。日本消化器内視鏡学会と協力した潰瘍性大腸炎関連癌内視鏡治療のレジストリについてはすでに解析結果が英文誌に投稿中である。外科手術例レジストリについても順調に進んでいる。啓発活動については市民公開講座が学会と協力してWeb開催形式で行われた。患者参加型企画を推進しており、適正な食事療法の提案に患者も加わっている。潰瘍性大腸炎患者における青黛成分を含む漢方薬の自費購入の問題については、エキスパートコンセンサスを公開した。クロンカイトカナダ症候群については内視鏡カラーアトラスが公開され英文書籍化された。レジストリも構築も準備が完了した。腸管ベーチェット病、非特異性多発性小腸潰瘍症、家族性地中海熱関連腸炎については関連研究班やAMEDに協力している。

【考察】この3年間はCOVID-19への対応が喫緊の課題であったが、リモート会議を活用し、研究班のリーダーシップの下、学会とも連携しオールJAPAN体制で取り組むことができた。その結果多くの課題が順調に進み、ガイドラインを含め多くの成果が英文論文として発表され本研究班の国際的地位向上に貢献した。多くの課題について内科医、外科医、小児科医、疫学統計の混成メンバーで取り組んでいる効果が、トランジションに関するエキスパートコンセンサス公開などの成果として現れたと考えられる。新たな取り組みとして患者参加型企画もすすんでおり今後の発展が期待される。レジストリ構築については難病プラットフォームの運用開始が少し遅れたが実施には支障はない。クロンカイトカナダ症候群については世界初のカラーアトラスが公開され、英文書籍化された。レジストリも進捗中である。今後の課題はレジストリの運用開始、得られた成果の実地医家・患者への効果的なフィードバック、移行期医療の実践と検証、患者を含めた双方向性の取り組みの推進と考えられる。さらにAMEDで実施される病態に迫る研究の支援も行っていきたい。


結論
消化器内科、外科、小児科、疫学統計専門家からなる研究班により、ガイドラインや治療指針の作成、レジストリ研究、COVID-19への対応、患者と実地医家への啓発活動、希少疾患のレジストリと啓発活動の推進を行った。

公開日・更新日

公開日
2023-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2023-08-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202211029C

収支報告書

文献番号
202211029Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
23,147,000円
(2)補助金確定額
22,323,000円
差引額 [(1)-(2)]
824,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,099,965円
人件費・謝金 2,769,105円
旅費 540,713円
その他 9,572,831円
間接経費 5,341,000円
合計 22,323,614円

備考

備考
自己資金 613円 その他(利息)1円(補助金所要額を算出する際の端数が発生)
交付額と実績額に差額が生じた理由:班会議がコロナを考慮して2回ともzoom開催となり、会場費に使用することがなくなり、残金が発生したため

公開日・更新日

公開日
2023-11-21
更新日
-