文献情報
文献番号
202211028A
報告書区分
総括
研究課題名
希少難治性筋疾患に関する調査研究
課題番号
20FC1036
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
青木 正志(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 神経内科)
研究分担者(所属機関)
- 西野 一三(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
- 林 由起子(東京医科大学 病態生理学分野)
- 小牧 宏文(国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経科)
- 高橋 正紀(大阪大学大学院 医学系研究科 機能診断科学)
- 平澤 恵理(順天堂大学 大学院医学研究科老人性疾患病態・治療研究センター(脳神経内科兼務))
- 大野 欽司(名古屋大学 大学院医学系研究科)
- 杉江 和馬(公立大学法人奈良県立医科大学 脳神経内科学)
- 山下 賢(熊本大学 大学院生命科学研究部 脳神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
20,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班では、1. 周期性四肢麻痺、非ジストロフィー性ミオトニー症候群といった骨格筋チャネル病、2. 先天性筋無力症候群、3. Schwartz -Jampel症候群、4. Danon病や過剰自己貪食を伴うX連鎖性ミオパチーなどの「自己貪食空胞性ミオパチー」、5. 封入体筋炎、6. 先天性ミオパチー、7. 縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(GNEミオパチー)、8. 眼・咽頭遠位型ミオパチー、9. 三好型ミオパチー(およびその他の遠位型)、10. マリネスコ・シェーグレン症候群、11. べスレムミオパチー・ウルリッヒミオパチーの11の希少難治性筋疾患を調査研究の対象としている。各疾患について、分担・協力施設で連携しつつ担当を定め、検体の収集・診療の手引きの策定と学会承認、診療の手引きの検証・改訂、予後・治療効果の評価、レジストリ構築、エビデンス向上のための調査研究を継続して行っている。
研究方法
2022年度も各疾患に関し新規患者の診断を行うと共に、新規原因遺伝子発見に伴う診断基準の見直しと学会承認、自然歴の調査、Remudy・Rudy Japanといった筋疾患レジストリの発展・維持に寄与してきた。診断精度の向上を目的とした遺伝子診断の診断体制の整備も行い、次世代シークエンサーを用いた診断目的での遺伝子解析を行った。特筆すべき点として、眼・咽頭遠位型ミオパチーについては新たな原因遺伝子についての臨床遺伝学的解析を行い、GNEミオパチーについては臨床試験の遂行に患者登録の点で貢献した。
結果と考察
1. 骨格筋チャネル病においては、RUDY Japanに2017年12月から2021年12月までに登録された24名の骨格筋チャネル病参加者より回答を得た。病型別では先天性ミオトニー11名、ナトリウムチャネルミオトニー2名、先天性パラミオトニー4名、高カリウム性周期性四肢麻痺1名、低カリウム性周期性四肢麻痺5名、Andersen-Tawil症候群1名であった。2. 先天性筋無力症候群に関しては2022年に発表された論文などさらに85報を追加して439報の参考文献を引用した「先天性筋無力症候群の診療の手引き」案を作成し2023年3月の段階で日本神経学会の承認を待っている。3. Schwartz Jampel症候群では診療領域を超えた疾患の広報活動、情報交換により、パールカン遺伝子変異をもつ症例としてSJS1例の診療依頼、Dyssegmental dysplagia 5例の情報提供があった。4. 自己貪食空胞性ミオパチーでは本邦で26家系48例を把握している。心筋症は全例で呈したが、LAMP-2遺伝子のエクソン9bに変異を有する症例では軽症であった。5. 封入体筋炎に関しては臨床情報および骨格筋・血清・DNAなどの生体試料を全国の協力施設での蓄積を継続している。Crycopharyngeal barが嚥下障害を伴う症例で見られ、臨床病型と相関することを報告した。6. 先天性ミオパチーではこれまでに先天性筋疾患としては77名、先天性ミオパチーとしては33名の登録があった。協力施設数は51であり、協力医師数は75名であった。7. 縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーに関しては日本人患者で2番目に頻度が高いc.620A>T(p.D207V)について解析したところ78歳で筋症状のない健康なホモ接合体がみつかった。8. 眼・咽頭遠位型ミオパチーの159例の遺伝学的に未診断なコホートにおいて、RILPL1におけるCGGリピート伸長を有する症例は認めず、これを論文報告した。9. 三好型ミオパチーをはじめとしたdysferlin異常症の症例も2022年11月時点で229家系に92種以上の変異を見出している。10. Marinesco-Sjögren症候群(MSS)は新規に登録された1名を加えたSIL1変異を有するMSS患者計27例の臨床情報をまとめた。本邦で最も多いSIL1 c.936dupG (p.L313fsx39)は47/54 chromosome (87%)となった。11. ベスレム・ウルリッヒミオパチーでのCOL6A1、COL6A2、COL6A3の変異は、それぞれ75、51例、24例に認めた。
結論
上記のように各疾患に関して、新規患者の診断を行うと共に、診断基準や診療の手引きの整備と学会承認、自然歴の調査、レジストリの発展などに寄与してきている。これらの基盤を元に将来的には各疾患において、眼・咽頭遠位型ミオパチーにおける新規原因遺伝子の同定やGNEミオパチーの臨床試験などの病態解明・治療法開発へとつなげていきたい。そのためには今後も継続した診断・患者調査が必要である。公費負担を含めた社会的支援も重要であり、指定難病制度の実際の運用にも引き続き協力していく。
公開日・更新日
公開日
2024-04-03
更新日
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