重症多形滲出性紅斑に関する調査研究

文献情報

文献番号
202211027A
報告書区分
総括
研究課題名
重症多形滲出性紅斑に関する調査研究
課題番号
20FC1035
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
浅田 秀夫(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部皮膚科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺 秀晃(昭和大学横浜市北部病院 皮膚科)
  • 阿部 理一郎(新潟大学医歯学総合研究科)
  • 橋爪 秀夫(浜松医科大学 医学部 皮膚科)
  • 外園 千恵(京都府立医科大学 視覚機能再生外科学)
  • 黒沢 美智子(順天堂大学医学部)
  • 莚田 泰誠(国立研究開発法人 理化学研究所 統合生命医科学研究センター)
  • 大山 学(杏林大学 医学部 皮膚科学教室)
  • 高橋 勇人(慶應義塾大学 医学部)
  • 藤山 幹子(国立病院機構四国がんセンター 併存疾患センター 皮膚科)
  • 川村 龍吉(山梨大学 医学部附属病院)
  • 山口 由衣(横浜市立大学 大学院医学研究科 環境免疫病態皮膚科学)
  • 野村 尚史(京都大学医学研究科皮膚科学)
  • 新原 寛之(島根大学医学部皮膚科)
  • 乾 あやの(済生会横浜市東部病院こどもセンター 小児科)
  • 金子 美子(京都府立医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学)
  • 藤枝 幹也(高知大学 医学部)
  • 宮川 史(奈良県立医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
19,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、重症多形滲出性紅斑であるStevens-Johnson症候群(SJS)/中毒性表皮壊死症(TEN)及び薬剤性過敏症症候群(DIHS)を対象として、治療法、予後、合併症・後遺症に着目して疫学調査による実態把握を進めるとともに、国内外で経験的に行われてきた治療法の有用性を評価し、診療ガイドラインの策定・改定に資することを目的とする。同時に、講習会の開催を通して、全国の重症薬疹診療拠点病院を中心とした適切な診療提供体制の構築を進めるとともに、疾患・診療情報のホームページへの公開を継続することにより、国民への正しい知識の普及・啓発を図る。
研究方法
1.SJS/TEN、DIHS等の重症薬疹の適切な診療に必要な一定基準を満たす施設について診療拠点病院の新規認定および認定更新を行う。2. 診療ガイドラインの改訂・策定に向けて、SJS/TENの臓器合併症・後遺症(呼吸器障害、肝障害、腎症害)の実態把握のための疫学調査、免疫チェックポイント阻害薬による多型滲出性紅斑の実態を把握するための疫学調査、DIHSの診断・治療・合併症・予後に関する疫学調査を実施する。3.重症多形滲出性紅斑患者およびその対照者のDNAおよび診療情報の収集を行い、重症薬疹発症症例の遺伝情報及び診療情報に基づいてデータベースを構築し、それを基に重症薬疹発症に関与する遺伝的要因を解析し、薬剤投与前にリスクを回避するための迅速診断法を開発する。4. 重症薬疹の診断および治療法の向上のための研究として、(1)SJS/TENに対する抗TNFα療法の多施設共同試験の実施、(2)SJS/TENの生命予後に影響を与える発症早期のリスク因子の同定と、予後予測スコアリングシシテムの開発、(2)DIHSの予後に影響を与えるリスク因子の同定と、予後予測スコアリングシシテムの開発、(5)DIHSの早期診断および重症度予測のためのバイオマーカーの探索を行う。
結果と考察
重症多形滲出性紅斑の診療レベルの向上と均てん化のために、重症薬疹講習会を第52回日本皮膚免疫アレルギー学会において開催した。現在、92施設が重症薬疹診療拠点病院の認定を受け、各地域の重症薬疹診療において中心的役割を担っている。診療ガイドラインの改訂・策定に向けて実施したSJS/TENの臓器合併症・後遺症に関する全国疫学調査(三次調査)、免疫チェックポイント阻害薬による多型滲出性紅斑の実態調査、DIHSの診断・治療・合併症・予後に関する疫学調査を行い、SJS/TENの予後予測因子、SJS/TENにおける呼吸器・肝臓・腎臓の合併症と予後との関連、DIHS死亡例の特徴が明らかになった。今回の全国疫学調査の結果を踏まえて、SJS/TEN診療ガイドラインの改訂ならびにDIHS診療ガイドラインの策定を進めている。 SJS/TENの疫学調査の結果に基づいて早期に予後を予測するスコアリングシシテムを開発し、その妥当性を検証するための調査を海外施設と共同で進めている。重症多形滲出性紅斑の発症に関わる遺伝的背景を明らかにするため、カルテ情報、SNP情報、HLA遺伝子型情報から構築した「臨床ゲノム薬疹情報統合データベース」を用いて本邦におけるアロプリノール誘発薬疹関連遺伝子をメタGWASにより検出した。また、アロプリノール誘発薬疹関連遺伝子を迅速、簡便に検出できる核酸クロマトグラフィー法を開発し、その有用性を確認した。本検査法は再現性の検証を経て臨床応用につながることが期待できる。SJS/TENに対する治療法の向上を目指して、2021年から開始した抗TNFα療法の多施設共同試験を継続している。DIHSを治療・管理する上で重要な重症合併症や予後の予測に、DDSスコアが有用な指標となり得ることを多施設共同研究で明らかにした。また、DIHSの早期診断のマーカーとして注目されている血清TARCに関して、これまでに実施された複数の臨床研究におけるデータを解析し、その有用性を検証した。DDSスコア、TARC検査については、今後臨床応用に繋げてゆくことが重要である。
結論
重症薬疹診療拠点病院の認定を受けた施設は、各地域の重症薬疹診療において中心的役割を担うとともに、疫学調査、情報収集の拠点となっている。今回実施した全国疫学調査の解析結果を踏まえてSJS/TEN診療ガイドラインの改訂作業を進めている。また、DIHS診療ガイドラインについては原案が完成し、ブラッシュアップを進めている。重症多形滲出性紅斑の発症に関わる遺伝的背景の研究では、新規薬疹関連遺伝子の検出と共にその迅速診断法の開発も行っている。本研究で得られた重症多形滲出性紅斑の新規治療法、診断法、病態に関する知見は、今後の臨床応用に資するものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-04-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202211027B
報告書区分
総合
研究課題名
重症多形滲出性紅斑に関する調査研究
課題番号
20FC1035
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
浅田 秀夫(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部皮膚科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 末木 博彦(昭和大学 医学部 )
  • 渡辺 秀晃(昭和大学横浜市北部病院 皮膚科)
  • 阿部 理一郎(新潟大学医歯学総合研究科)
  • 橋爪 秀夫(浜松医科大学 医学部 皮膚科)
  • 外園 千恵(京都府立医科大学 視覚機能再生外科学)
  • 黒沢 美智子(順天堂大学医学部)
  • 莚田 泰誠(国立研究開発法人 理化学研究所 統合生命医科学研究センター)
  • 大山 学(杏林大学 医学部 皮膚科学教室)
  • 高橋 勇人(慶應義塾大学 医学部)
  • 藤山 幹子(国立病院機構四国がんセンター 併存疾患センター 皮膚科)
  • 川村 龍吉(山梨大学 医学部附属病院)
  • 山口 由衣(横浜市立大学 大学院医学研究科 環境免疫病態皮膚科学)
  • 野村 尚史(京都大学医学研究科皮膚科学)
  • 新原 寛之(島根大学医学部皮膚科)
  • 乾 あやの(済生会横浜市東部病院こどもセンター 小児科)
  • 金子 美子(京都府立医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学)
  • 藤枝 幹也(高知大学 医学部)
  • 宮川 史(奈良県立医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、重症多形滲出性紅斑であるStevens-Johnson症候群(SJS)/中毒性表皮壊死症(TEN)及び薬剤性過敏症症候群(DIHS)を対象として、治療法、予後、合併症・後遺症に着目して疫学調査による実態把握を進めるとともに、国内外で経験的に行われてきた治療法の有用性を評価し、診療ガイドラインの策定・改定に資することを目的とする。同時に、講習会の開催を通して、全国の重症薬疹診療拠点病院を中心とした適切な診療提供体制の構築を進めるとともに、疾患・診療情報のホームページへの公開を継続することにより、国民への正しい知識の普及・啓発を図る。
研究方法
1.SJS/TEN、DIHS等の重症薬疹の適切な診療に必要な一定基準を満たす施設について診療拠点病院の新規認定および認定更新を行う。2. 診療ガイドラインの改訂・策定に向けて、SJS/TENの臓器合併症・後遺症(呼吸器障害、肝障害、腎症害)の実態把握のための疫学調査、免疫チェックポイント阻害薬による多型滲出性紅斑の実態を把握するための疫学調査、DIHSの診断・治療・合併症・予後に関する疫学調査を実施する。3.重症多形滲出性紅斑患者およびその対照者のDNAおよび診療情報の収集を行い、重症薬疹発症症例の遺伝情報及び診療情報に基づいてデータベースを構築する。データベースを基に重症薬疹発症に関与する遺伝的要因を解析する。また、薬剤の投与前にリスク回避するための迅速診断法を開発する。4. 重症薬疹の診断および治療法の向上のための研究として、(1)AIによる早期画像診断法の開発に向けた研究、(2)SJS/TENに対する抗TNFα療法の多施設共同試験の実施、(3)SJS/TEN、DIHSの生命予後に影響を与える発症早期のリスク因子の同定と、予後予測スコアリングシシテムの開発、(4)SJS/TEN、DIHSの診断および重症度予測のためのバイオマーカーの探索を行う。
結果と考察
重症多形滲出性紅斑の診療レベルの向上と均てん化のために、重症薬疹講習会の開催および重症薬疹診療拠点病院の認定を行った。現在、認定を受けた施設は92施設に達し、各地域の重症薬疹診療において中心的役割を担っている。SJS/TENの臓器合併症・後遺症に関する全国疫学調査(三次調査)、免疫チェックポイント阻害薬による多型滲出性紅斑の実態調査、DIHSの診断・治療・合併症・予後に関する疫学調査を行い、SJS/TENの予後予測因子、SJS/TENにおける呼吸器・肝臓・腎臓の合併症と予後との関連、SJS/TENの眼後遺症に影響を及ぼす因子、DIHS死亡例の特徴が明らかになった。今回の全国疫学調査の結果を踏まえて、SJS/TEN診療ガイドラインの改訂ならびにDIHS診療ガイドラインの策定を進めている。 疫学調査の結果に基づいてSJS/TENの予後を早期に予測するスコアリングシシテムを開発し、その妥当性を検証するための調査を海外施設と共同で進めている。重症多形滲出性紅斑の発症に関わる遺伝的背景を明らかにするため、カルテ情報、SNP情報、HLA遺伝子型情報から「臨床ゲノム薬疹情報統合データベース」構築し、複数の薬疹関連遺伝子を同定した。アロプリノール誘発薬疹については、同定した関連遺伝子を迅速、簡便に検出できる検査法を開発した。AIによるSJS/TENの早期画像診断法の研究の結果、感度、特異度ともに、⽪膚科専⾨医を上回ることが示された。SJS/TENに対する抗TNFα療法の多施設共同試験を継続中である(目標10症例に対し、現在8症例を登録済み)。DIHSを治療・管理する上で重要な重症合併症や予後の予測に、DDSスコアが有用な指標となり得ることを多施設共同研究で明らかにした。また、DIHSの早期診断のマーカーとして注目されている血清TARCに関して、その有用性を検証した(保険適用拡大に向けて申請中)。
結論
重症薬疹診療拠点病院の認定を受けた施設は、各地域の重症薬疹診療において中心的役割を担うとともに、疫学調査、情報収集の拠点となっている。今回実施した全国疫学調査の解析結果を踏まえてSJS/TEN診療ガイドラインの改訂作業を進めている。また、DIHS診療ガイドラインについては原案が完成し、ブラッシュアップを進めている。重症多形滲出性紅斑の発症に関わる遺伝的背景の研究では、新規薬疹関連遺伝子の検出と共にその迅速診断法の開発も進めている。本研究で得られた重症多形滲出性紅斑の新規治療法、診断法、病態に関する知見は、今後の臨床応用に資するものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202211027C

収支報告書

文献番号
202211027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,000,000円
(2)補助金確定額
24,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,877,421円
人件費・謝金 6,140,090円
旅費 480,754円
その他 4,055,739円
間接経費 4,500,000円
合計 24,054,004円

備考

備考
自己資金:54,001円
利息:3円

公開日・更新日

公開日
2023-12-08
更新日
-