前眼部難病の標準的診断基準およびガイドライン作成のための調査研究

文献情報

文献番号
202211024A
報告書区分
総括
研究課題名
前眼部難病の標準的診断基準およびガイドライン作成のための調査研究
課題番号
20FC1032
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
西田 幸二(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 脳神経感覚器外科学(眼科学))
研究分担者(所属機関)
  • 村上 晶(順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 東 範行(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
  • 島崎 潤(東京歯科大学市川総合病院 眼科)
  • 宮田 和典(医療法人明和会 宮田眼科病院)
  • 山田 昌和(杏林大学 医学部眼科学教室)
  • 外園 千恵(京都府立医科大学 視覚機能再生外科学)
  • 白石 敦(愛媛大学 医学部 眼科学講座)
  • 平山 雅敏(慶應義塾大学 医学部)
  • 小林 顕(金沢大学 眼科)
  • 堀 裕一(東邦大学 医学部)
  • 臼井 智彦(国際医療福祉大学 医学部 眼科)
  • 宮井 尊史(東京大学 医学部眼科学教室)
  • 山田 知美(大阪大学 医学部附属病院)
  • 大家 義則(大阪大学医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
18,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は日本眼科学会主導のもと、関連学会と連携して、これまでに希少難治性前眼部疾患の診断基準および重症度分類を策定して来た。本研究ではこれらをより質の高いものに改定するとともに、Mindsに準拠した方法でエビデンスに基づく診療ガイドラインを作成し、医師、患者ならびに広く国民に普及・啓発活動を行うことで、国内における診療の均てん化を図ることを目的とする。さらに患者の視覚の質の実態調査を行い、療養生活環境改善への提案に資する。また難病プラットフォームへ症例登録を行い、国内外の難病研究班と情報共有する事により、新しい治療の開発等、希少難治性疾患の克服へ貢献する。これらにより希少難治性前眼部疾患の医療水準の向上、予後改善が期待でき、最終的には医療費や社会福祉資源の節約に大きく寄与することが期待される。
研究方法
今年度は、前眼部形成異常の診療ガイドラインおよび無虹彩症の診療ガイドラインについて、普及・啓発活動および使用状況実態調査を実施する。
膠様滴状角膜ジストロフィーについては、診療ガイドライン策定に向けて定性的システマティックレビューを実施し、SRレポートをもとに推奨および解説文草案を作成する。
眼類天疱瘡については、皮膚科の指定難病である類天疱瘡に含めるため、患者眼組織について免疫学的検査の有効性検証プロトコルを作成し、全国実態調査についてアンケート票案を作成する。
Fuchs角膜内皮ジストロフィーについては、難病プラットフォームレジストリの構築を行い症例登録を行う。また患者およびコントロール群に対して視機能検査およびアンケート調査を行い、グレア負荷による視機能変化および遮光眼鏡の装用効果について解析を行う。
結果と考察
前眼部形成異常および無虹彩症について、診療ガイドラインの使用状況実態調査を行った。解析の結果、どちらも希少疾患であるため症例を有する施設は少なく、本診療ガイドラインは認知度に課題があると考えられたが、CQの数や推奨の分かりやすさ、解説の内容等おおむね高評価であったほか、当該疾患の認知度の向上や診療の標準化、教育の向上、アウトカムの向上等に役立てられていた。
膠様滴状角膜ジストロフィーの診療ガイドラインについては、CQ,BQごとに文献検索およびシステマティックレビューを実施し、推奨を決定した。今後は外部評価やパブリックコメントにより最終化し、学会承認を得る予定である。
眼類天疱瘡については、免疫学的検査方法および全国実態調査について検討を行った。今後二次調査を行い実態を把握するとともに、口腔粘膜を用いた検査等についても検討する予定である。
Fuchs角膜内皮ジストロフィー(FECD)については、難病プラットフォームにレジストリを構築し、360症例について症例登録および中間解析を行った。その結果、男女比は約3:7であり6%に家族歴が見られた。またFECD患者およびコントロール群に対して視機能検査およびアンケート調査を行い、グレア負荷による視機能変化および遮光眼鏡の装用効果について解析を行った。グレア負荷による視機能変化解析では、FECD患者においてグレア負荷による高コントラスト視力の低下は見られなかったが、コントラスト感度は有意に低下している事が判明した。遮光眼鏡の装用効果解析では、FECD患者において遮光眼鏡は暗所のグレア条件下でのコントラスト感度と自覚的な羞明感の改善に有用であることが初めて示唆された。
結論
今年度は、前眼部形成異常および無虹彩症の診療ガイドラインについて、普及・啓発活動および使用状況実態調査を行った。膠様滴状角膜ジストロフィーの診療ガイドラインについては、システマティックレビュー結果について統計チームによる確認およびレビュワーによる修正を行い、推奨および解説草案を最終化した。眼類天疱瘡については免疫学的検査の方法等について詳細な検討を行った。Fuchs角膜内皮ジストロフィーについては患者レジストリを構築し登録・解析を行ったほか、視機能評価解析を実施した。

公開日・更新日

公開日
2024-04-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202211024B
報告書区分
総合
研究課題名
前眼部難病の標準的診断基準およびガイドライン作成のための調査研究
課題番号
20FC1032
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
西田 幸二(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 脳神経感覚器外科学(眼科学))
研究分担者(所属機関)
  • 村上 晶(順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 東 範行(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
  • 島崎 潤(東京歯科大学市川総合病院 眼科)
  • 宮田 和典(医療法人明和会 宮田眼科病院)
  • 山田 昌和(杏林大学 医学部眼科学教室)
  • 外園 千恵(京都府立医科大学 視覚機能再生外科学)
  • 白石 敦(愛媛大学 医学部 眼科学講座)
  • 榛村 重人(慶応義塾大学 医学部)
  • 平山 雅敏(慶應義塾大学 医学部)
  • 小林 顕(金沢大学 眼科)
  • 堀 裕一(東邦大学 医学部)
  • 臼井 智彦(国際医療福祉大学 医学部 眼科)
  • 宮井 尊史(東京大学 医学部眼科学教室)
  • 山田 知美(大阪大学 医学部附属病院)
  • 大家 義則(大阪大学医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は日本眼科学会主導のもと、関連学会と連携して、これまでに希少難治性前眼部疾患の診断基準および重症度分類を策定して来た。本研究ではこれらをより質の高いものに改定するとともに、Mindsに準拠した方法でエビデンスに基づく診療ガイドラインを作成し、医師、患者ならびに広く国民に普及・啓発活動を行うことで、国内における診療の均てん化を図ることを目的とする。さらに患者の視覚の質の実態調査を行い、療養生活環境改善への提案に資する。また難病プラットフォームへ症例登録を行い、国内外の難病研究班と情報共有する事により、新しい治療の開発等、希少難治性疾患の克服へ貢献する。これらにより希少難治性前眼部疾患の医療水準の向上、予後改善が期待でき、最終的には医療費や社会福祉資源の節約に大きく寄与することが期待される。
研究方法
本研究では難治性の前眼部疾患として、前眼部形成異常、無虹彩症、膠様滴状角膜ジストロフィー、眼類天疱瘡、Fuchs角膜内皮ジストロフィー(FECD)の5疾患を対象とする。前眼部形成異常および無虹彩症については診療ガイドラインの学会承認を得て普及啓発活動を実施するとともに、使用状況実態調査等による評価を行う。膠様滴状角膜ジストロフィーについてはMindsが提案する診療ガイドライン作成方法に従い診療ガイドラインを策定する。眼類天疱瘡については、指定難病である類天疱瘡に含まれるよう診断基準および重症度分類の改定を行うことを目的に、免疫学的検査について検討を行う。Fuchs角膜内皮ジストロフィーについては、診断基準および重症度分類の改定を実施する。
全ての年度を通して患者QOV調査および症例収集を行い、研究班REDCapレジストリおよび難病プラットフォームレジストリへの登録を行う。また確定診断を目的に遺伝子検査を行い、これらについて解析を行う。
結果と考察
前眼部形成異常および無虹彩症については、診療ガイドラインの学会承認を得て普及啓発活動を実施した。また使用状況実態調査の結果、本診療ガイドラインは認知度に課題があると考えられたが、CQの数や推奨の分かりやすさ、解説の内容等おおむね高評価であったほか、当該疾患の認知度の向上や診療の標準化、教育の向上、アウトカムの向上等に役立てられていた。
膠様滴状角膜ジストロフィーについては、重要診療課題6項目についてCQ1~3、BQ1~3を設定し、それぞれについてシステマティックレビューを実施した。SRレポートをもとに推奨および解説草案を作成し、今後は外部評価およびパブリックコメントを行い最終化した後、学会承認を得る予定である。
眼類天疱瘡については、免疫学的検査方法および全国実態調査について検討を行った。今後二次調査を行い、実態を把握するとともに、口腔粘膜を用いた検査等についても検討する予定である。
Fuchs角膜内皮ジストロフィー(FECD)については、システマティックレビューを実施し、診断基準および重症度分類の改訂を行った。
全ての疾患について患者QOV調査および遺伝子検査を実施し、解析を行った。今後これらの実態調査に基づき療養生活環境改善への提案、早期診断や適切な診療施設への誘導等を実施することで、診療レベルの向上なども併せ巨視的な視点で我が国における難治性前眼部疾患の予後の改善に寄与する事が可能である。更に難病データベースを介して国内外の難病研究班と情報を共有する事により、新しい治療の開発等、希少難治性疾患の克服への貢献が期待できる。
結論
研究期間の3年間において、前眼部形成異常および無虹彩症の診療ガイドラインについては学会承認を得て普及・啓発活動を行った。また使用状況実態調査としてアンケートを実施し、ガイドラインの評価を行った。膠様滴状角膜ジストロフィーについては診療ガイドライン草案を作成した。眼類天疱瘡については免疫学的検査の方法等について詳細な検討を行い、プロトコルを作成した。Fuchs角膜内皮ジストロフィーについては診断基準および重症度分類の改訂を行った。全ての疾患について患者QOV調査および症例収集を行い、研究班REDCapレジストリおよび難病プラットフォームレジストリへ登録を行った。また確定診断を目的として遺伝子検査を実施し、解析を行った。

公開日・更新日

公開日
2024-04-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202211024C

成果

専門的・学術的観点からの成果
前眼部形成異常および無虹彩症の診療ガイドラインを策定し、学会承認を得た。また眼科医を対象に診療ガイドラインの使用実態調査を行い、問題点の洗い出しと改訂に向けた検討を行った。
Fuchs角膜内皮ジストロフィーのレジストリを難病プラットフォーム上に構築し、症例登録および解析を行った。
臨床的観点からの成果
前眼部形成異常および無虹彩症の診療ガイドラインを策定、学会承認を得た後、学会HPおよびMinds HPにて公開した。
本診療ガイドラインを臨床現場で使用することにより、希少疾患である前眼部形成異常および無虹彩症の認知度が向上するとともに、診療に役立てられた。
ガイドライン等の開発
前眼部形成異常および無虹彩症の診療ガイドラインを策定した。前眼部形成異常の診療ガイドラインは2021令和3年6月発行の日本眼科学会雑誌 第125巻6号に掲載され、無虹彩症の診療ガイドラインは令和3年1月発行の日本眼科学会雑誌 第125巻1号に掲載された。また学会HPおよびMinds HPにて公開され、広く活用されることとなった。
その他行政的観点からの成果
無虹彩症の遺伝学的検査について実態調査を行った。この結果は診療報酬改定の検討資料として活用され、保険収載に役立てられた。
その他のインパクト
日本眼科学会雑誌125巻6号において、前眼部形成異常の診療ガイドラインが掲載された。また日本眼科学会雑誌125巻1号において無虹彩症の診療ガイドラインが掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
49件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
ガイドライン作成2件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
ホームページ2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
山田昌和、東範行、西田幸二、他
前眼部形成異常の診療ガイドライン
日本眼科学会雑誌 , 125 (6) , 605-629  (2021)
原著論文2
西田 幸二、東 範行、阿曽沼 早苗、他
無虹彩症の診療ガイドライン
日本眼科学会雑誌 , 125 (1) , 38-76  (2021)

公開日・更新日

公開日
2024-04-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
202211024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,000,000円
(2)補助金確定額
23,819,000円
差引額 [(1)-(2)]
181,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,751,017円
人件費・謝金 8,241,479円
旅費 2,286,568円
その他 6,001,953円
間接経費 5,538,000円
合計 23,819,017円

備考

備考
自己資金 17円

公開日・更新日

公開日
2023-12-11
更新日
-