網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究

文献情報

文献番号
202211021A
報告書区分
総括
研究課題名
網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究
課題番号
20FC1029
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 泰二(鹿児島大学 医歯学域医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田 知弘(東京女子医科大学 医学部)
  • 大野 京子(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 古泉 英貴(琉球大学 大学院医学研究科)
  • 近藤 寛之(産業医科大学 医学部)
  • 近藤 峰生(三重大学 大学院医学系研 究科)
  • 園田 康平(九州大学 大学院医学研究院)
  • 高橋 寛二(関西医科大学 医学部)
  • 辻川 明孝(京都大学 大学院医学研究科)
  • 中村 誠(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 柳 靖雄(横浜市立大学 医学研究科)
  • 山本 修一(千葉大学 医学部附属病院)
  • 西口 康二(東海国立大学機構 名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 森實 祐基(岡山大学 医歯薬学域)
  • 池田 康博(宮崎大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
12,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はオールジャパン体制での希少疾患研究であり、視覚障害の原因疾患のうち、指定難病3疾患(網膜色素変性、黄斑ジストロフィ、レーベル遺伝性視神経症)、ならびに指定難病候補の希少疾患であるが十分な情報が集積されていない4疾患(萎縮型加齢黄斑変性、家族性滲出性硝子体網膜症、黄斑部毛細血管拡張症2型、急性帯状潜在性網膜外層症)、さらに類縁疾患である強度近視性脈絡膜萎縮を対象とし、各疾患の医療水準の向上を目的として、客観的な指標に基づく疾患概念の確立、診断基準や診療ガイドラインの策定および疫学調査を実施する。また、難治性眼疾患の多くは視覚身体障害の原因疾患と関連があるため、視覚身体障害の認定状況の全国調査を行い、難治性眼疾患患者に対する福祉行政の現状を把握する。
研究方法
本研究の対象とする疾患は多岐にわたるため、疾患毎に研究グループを形成して研究計画を進める体制とする(さらに各専門分野の研究協力者を募る)。並行して、全国視覚障害認定の実態疫学調査を実施する。研究代表者は研究全体を統括する。また、班会議を年に2回開催し、各グループの進捗状況を報告する。
結果と考察
萎縮型加齢黄斑変性:本邦における複数の疫学研究より、患者数・重症度を明確化し、性別、年齢、罹病期間、喫煙歴、診断時視力、前駆病変の有無、萎縮の大きさ、対側眼所見などを記載した英語原著論文を作成した。さらに、国内6施設より症例を集積した患者実態調査を実施し、臨床的特徴などの検討を行った。2023年4月の日本眼科学会総会で結果は発表済みで、英文論文化予定。今後は指定難病として申請を目指す。
網膜色素変性:日本網膜色素変性レジストリプロジェクトは難病プラットフォームと連携し、現在27施設が参加、当初の目標である5000例を超える症例が既に登録されている。「遺伝性網膜ジストロフィにおける遺伝学的検査のガイドライン」を作成、関連学会の承認を受けた(日眼会誌2023年6月号掲載予定)。「日本版遺伝性網膜疾患ACMGガイドライン」を作成し、日本網膜硝子体学会の承認を受け、現在英文論文化中である。
黄斑ジストロフィ:初年度に全国規模の患者数調査を行い、患者数と病型毎の頻度を解析し、現在英文論文化中である。今後は、黄斑ジストロフィのレジストリを構築する。また、病型毎の遺伝子情報を収集し、解析を行う。
強度近視性脈絡膜萎縮:病的近視に伴う網脈絡膜萎縮は、近視性黄斑部新生血管が生じた後でその周囲に進行することが知られている。近視性黄斑部新生血管に対する治療方針をまとめた診療ガイドラインを作成中である。
家族性滲出性硝子体網膜症:連携施設で蓄積してきたDNA検体の遺伝子解析を進めている。また、全国データベースを用いた研究によって新たに全数調査を進行中である。
黄斑部毛細血管拡張症2型:黄斑部毛細血管拡張症2型の診断基準・重症度分類をまとめ、診療ガイドラインを策定した(日眼会誌2022)。本診療ガイドラインに基づいた第一次疫学調査後に、症例数の多い15施設を対象とした第二次調査を実施中である。各施設での倫理審査後に、症例を集積する予定である。
急性帯状潜在性網膜外層症:初年度に患者数調査を行った。患者数と重症度を解析し、論文化中である。また、腫瘍関連網膜症などを含めた自己免疫性網膜症という概念をあらたに提唱し、診断基準の作成と患者数調査を実施する予定である。
レーベル遺伝性視神経症:初年度にレジストリを構築した。17施設が参加し、118例が登録されている。また、初年度に実施した2019年度の新規発生患者数全国調査を解析し、Orphanet Journal of Rare Diseasesに掲載した。並行して、症例数の多い施設を選定し、詳細な臨床データの解析などを行う。
全国視覚障害認定の実態疫学調査:全都道府県全自治体を対象とした視覚障害認定の2019年度の実態調査の結果がJpn J Ophthalmolに掲載された。今後は都道府県別の視覚障害認定の主要な原因疾患に関するデータを論文化する予定である。
結論
本研究で策定した診療ガイドラインおよび疫学データは日本眼科学会を通じて広く全国の眼科医に周知される。それにより難治性眼疾患に対する診療の標準化が進むことが期待される。また、わが国の希少難治性眼疾患に対する理解、疾病予防の啓発が進むことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202211021B
報告書区分
総合
研究課題名
網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究
課題番号
20FC1029
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
坂本 泰二(鹿児島大学 医歯学域医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田 知弘(東京女子医科大学 医学部)
  • 大野 京子(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 古泉 英貴(琉球大学 大学院医学研究科)
  • 近藤 寛之(産業医科大学 医学部)
  • 近藤 峰生(三重大学 大学院医学系研究科)
  • 園田 康平(九州大学 大学院医学研究院)
  • 高橋 寛二(関西医科大学 医学部)
  • 辻川 明孝(京都大学 大学院医学研究科)
  • 中村 誠(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 柳 靖雄(横浜市立大学 医学研究科)
  • 山本 修一(千葉大学 医学部附属病院)
  • 西口 康二(東海国立大学機構 名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 森實 祐基(岡山大学 医歯薬学域)
  • 池田 康博(宮崎大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は視覚障害の原因疾患のうち、指定難病3疾患(網膜色素変性、黄斑ジストロフィ、レーベル遺伝性視神経症)、ならびに指定難病候補の希少疾患であるが十分な情報が集積されていない4疾患(萎縮型加齢黄斑変性、家族性滲出性硝子体網膜症、黄斑部毛細血管拡張症2型、急性帯状潜在性網膜外層症)、さらに類縁疾患である強度近視性脈絡膜萎縮を対象として、各疾患の医療水準の向上を目的として、客観的な指標に基づく疾患概念の確立、診断基準や診療ガイドラインの策定および疫学調査を実施することである。また、難治性眼疾患の多くは視覚身体障害の原因疾患と関連があるため、視覚身体障害の認定状況の全国調査を行い、難治性眼疾患患者に対する福祉行政の現状を把握する。特にオールジャパン体制で研究を推進する。
研究方法
本研究の対象疾患は多岐にわたり、相互に独立したものが多い。そこで、疾患毎に研究グループを形成して研究計画を進める体制とした(研究班員以外でも各専門分野の研究協力者を募る)。それと並行して、全国視覚障害認定の実態疫学調査を実施した。研究代表者は研究全体を統括した。また、班会議を年に2回開催し、各グループの進捗状況を報告した。
結果と考察
萎縮型加齢黄斑変性:本邦における複数の疫学研究(舟形町スタディ、長浜スタディ、久山町研究)より、患者数ならびにその重症度を明確化し、過去の本症に関わる性別、年齢、罹病期間、喫煙歴、診断時視力、前駆病変の有無、萎縮の大きさ、対側眼所見などを記載した英語原著論文を作成した(Jpn J Ophthalmol. 2022)。さらに、国内6施設より症例を集積した患者実態調査を実施し、臨床的特徴などの検討を行った。2023年4月の日本眼科学会総会で結果は発表済みで、英文論文化予定。今後は指定難病としての申請を目指す。
網膜色素変性:オールジャパン体制の疾患レジストリである日本網膜色素変性レジストリプロジェクトは難病プラットフォーム(研究代表者:松田文彦先生)と連携し、現在27施設が参加している。目標である5000例を超える症例が既に登録された。また、「遺伝性網膜ジストロフィにおける遺伝学的検査のガイドライン」を作成し、日本網膜硝子体学会、ならびに日本眼科学会の承認を受けた(日眼会誌2023年6月号掲載予定)。また、「日本版遺伝性網膜疾患ACMGガイドライン」を作成し、日本網膜硝子体学会の承認を受け、現在英文論文化中である。
黄斑ジストロフィ:初年度に全国規模の患者数調査を行い、患者数と病型毎の頻度を解析し、現在英文論文化中である。今後は、黄斑ジストロフィのレジストリを構築する。また、病型毎の遺伝子情報を収集し、解析を行う。
強度近視性脈絡膜萎縮:病的近視に伴う網脈絡膜萎縮は、近視性黄斑部新生血管が生じた後でその周囲に進行することが知られている。近視性黄斑部新生血管に対する治療方針をまとめた診療ガイドラインを作成中である。
家族性滲出性硝子体網膜症:連携施設で蓄積してきたDNA検体の遺伝子解析を進めている。また、全国データベースを用いた研究によって新たに全数調査を進行中である。
黄斑部毛細血管拡張症2型:特発性傍中心窩毛細血管拡張症と称されていたもののうち、傍中心窩型(type 2)を「黄斑部毛細血管拡張症2型」と新たな病名と定め、診断基準、重症度分類、診療ガイドラインを策定した(日眼会誌2022)。本診療ガイドラインに基づいた第一次疫学調査後に、症例数の多い15施設を対象とした第二次調査を実施中である。各施設での倫理審査後に、症例を集積する予定である。
急性帯状潜在性網膜外層症:初年度に患者数調査を行った。患者数と重症度を解析し、論文化中である。また、腫瘍関連網膜症などを含めた自己免疫性網膜症という概念をあらたに提唱し、診断基準の作成と患者数調査を実施する予定である。
レーベル遺伝性視神経症:初年度にレジストリを構築した。17施設が参加し、118例が登録されている。また、初年度に実施した2019年度の新規発生患者数全国調査を解析し、Orphanet Journal of Rare Diseasesに掲載した。並行して、症例数の多い施設を選定し、詳細な臨床データの解析などを行う。
全国視覚障害認定の実態疫学調査:全都道府県全自治体を対象とした視覚障害認定の2019年度の実態調査の結果がJpn J Ophthalmolに掲載された。今後は都道府県別の視覚障害認定の主要な原因疾患に関するデータを論文化する予定である。
結論
本研究で策定した診療ガイドラインおよび疫学データは日本眼科学会を通じて広く全国の眼科医に周知される。それにより難治性眼疾患に対する診療の標準化が進むことが期待される。また、わが国の希少難治性眼疾患に対する理解、疾病予防の啓発が進むことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202211021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
萎縮型加齢黄斑変性は、現在治療薬が米国で承認されて世界中で実態調査が注目されている。アジアにおいては精度の高い調査結果がなく、今回の調査で本方における患者数や・症度などの実態がわかった事は大きな意義がある。
臨床的観点からの成果
診療ガイドラインに沿って診断された患者数が全国調査にて明らかにされ、一部の疾患についてはレジストリへの登録が進んでいる。その結果、各疾患における更なる理解に繋がることが期待される。さらに、視覚身体障害認定状況の全国調査の結果を解析・実態を把握することで有効な医療福祉資源配分につながる。
ガイドライン等の開発
黄斑部毛細血管拡張症2型診療ガイドライン(第 1 版)を作成、2022年4月に日本眼科学会雑誌に発表した。
その他行政的観点からの成果
 本研究で策定した診療ガイドラインおよび疫学データは日本眼科学会を通じて広く全国の眼科医に周知される。それにより難治性眼疾患に対する診療の標準化が進むことが期待される。また、わが国の希少難治性眼疾患に対する理解、疾病予防の啓発が進むことが期待される。
その他のインパクト
特記なし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
飯田 知弘、辻川 明孝、柳 靖雄 他
黄斑部毛細血管拡張症2型診療ガイドライン(第 1 版)
日本眼科学会雑誌  (2022)
原著論文2
Akitaka Tsujikawa, Kanji Takahashi, Tomohiro Iida, et al.
Dry age-related macular degeneration in the Japanese population
Japanese Journal of Ophthalmology  (2021)

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
202211021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,000,000円
(2)補助金確定額
16,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,772,341円
人件費・謝金 0円
旅費 618,090円
その他 7,917,569円
間接経費 3,692,000円
合計 16,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-01-24
更新日
-