文献情報
文献番号
202211020A
報告書区分
総括
研究課題名
小児腎領域の希少・難治性疾患群の診療・研究体制の発展
課題番号
20FC1028
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
石倉 健司(北里大学 医学部 小児科学)
研究分担者(所属機関)
- 上村 治(一宮医療療育センター)
- 服部 元史(東京女子医科大学腎臓小児科)
- 中西 浩一(琉球大学大学院医学研究科)
- 丸山 彰一(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院医学系研究科腎臓内科)
- 濱崎 祐子(東邦大学 医学部)
- 伊藤 秀一(横浜市立大学 大学院医学研究科)
- 森貞 直哉(神戸大学大学院医学研究科)
- 野津 寛大(神戸大学 大学院医学研究科)
- 張田 豊(東京大学 医学部附属病院)
- 濱田 陸(地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立小児総合医療センター 腎臓・リウマチ膠原病科)
- 郭 義胤(福岡市立こども病院 腎疾患科)
- 三浦 健一郎(東京女子医科大学 腎臓小児科)
- 竹内 康雄(学校法人北里研究所北里大学 医学部)
- 土田 聡子(秋田赤十字病院)
- 長岡 由修(札幌医科大学 医学部小児科学講座)
- 奥田 雄介(北里大学 医学部)
- 西 健太朗(国立成育医療研究センター 器官病態系内科部)
- 谷口 佳織(菊永 佳織)(北里大学 医学部)
- 金子 徹治(地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立小児総合医療センター 臨床試験科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
18,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は,アルポート症候群(指定難病告示番号218),ギャロウェイ・モワト症候群(219),エプスタイン症候群(287),ネイルパテラ症候群/LMX1B関連腎症(315),ネフロン癆(335)および常染色体優性尿細管間質性腎疾患,先天性腎尿路異常,先天性ネフローゼ症候群,バーター/ギッテルマン症候群,小児特発性ネフローゼ症候群,ロウ症候群,鰓耳腎症候群(190.当研究では,直接の対象疾患とせず,宇佐美班に協力し腎疾患,腎予後に関する研究支援を行う)を主たる対象とする.これらの疾患の診療水準の向上と,疫学情報,治療情報や研究成果を専門医のみならず非専門医,患者及び国民に広く普及・周知に資する活動を行うことを目的とする.
研究方法
上記の対象疾患に対して1.学会承認された診断基準・重症度分類の改訂と普及,指定難病や小児慢性特定疾病としての情報収集,診断の手引きや概要等の整備,改定,2.学会承認のもと作成される,エビデンスに基づいた診療ガイドラインや患者向けガイドの編集,改訂と普及,3.小児慢性腎臓病コホート(2010年に確立)の継続,4.全国疫学調査で実態が把握された疾患のコホート構築と予後調査,5.成人移行医療(トランジション)プログラムの実施等を行った.
結果と考察
先天性腎尿路異常(先天性低形成腎),ロウ症候群,バーター・ギッテルマン症候群に関して,指定難病への疾病追加を見据え,診断基準を改訂した.改訂した診断基準はすでに日本小児腎臓病学会の承認を得,今後日本小児科学会と日本腎臓学会の承認も得て行く予定である.小児腎領域の難病の診療に関する調査では,ギャロウェイ・モワト症候群,エプスタイン症候群,ロウ症候群,ネフロン癆,鰓耳腎症候群,バーター/ギッテルマン症候群,ネイルパテラ症候群,先天性および乳児ネフローゼと新たに加えたWT1腎症に関して,遺伝子解析の有無,腎代替療法の実施状況および生命予後を明らかにした.小児CKDコホートの追跡予後調査に関して,2010年時点でそれぞれCKDステージ3a,3b,4,5の患者の解析時点での腎生存率(開始後12年時点)は,CAKUT群で53.5%,37.6%,4.8%,0%,非CAKUT群で60.1%,47.9%,0%,0%であった.一部疾患で,EDCを用いたレジストリを構築した.小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020補遺の作成等,ガイドライン,ガイドの作成,整備を行った.北里大学病院内移行プログラム実施し,かながわ移行期医療支援センターとの連携を開始した.新潟市で,小児科医を主な対象とした啓発目的のセミナーを開催した.研究班のWebページを整備し,とくに英文化をすすめた(www.pckd.jpn.org).
小児腎領域の難病の診療に関する調査では,新規症例報告,疾患関連遺伝子異常の有無,最終受診時の腎機能など継続して報告されている.小児CKDコホート研究は,開始12年後の情報の解析を行った.今後も小児CKDの成人への移行期を超えた小児CKDの自然史の解明のために,高い追跡率を確保しつつ調査を継続することが望まれる.一部の対象疾患で診療ガイドラインを整備できた一方,特に希少でエビデンスの確立していない疾患に関しては,エビデンスに基づいたガイドラインの作成は困難で,より実地医療に基づいた診療ガイドや患者向けのパンフレットの作成,Webの作成等による情報発信が必要である.学会と連携し,整備したガイドライン,各種ガイドや診断基準の普及啓発をすすめることが望まれる.
小児腎領域の難病の診療に関する調査では,新規症例報告,疾患関連遺伝子異常の有無,最終受診時の腎機能など継続して報告されている.小児CKDコホート研究は,開始12年後の情報の解析を行った.今後も小児CKDの成人への移行期を超えた小児CKDの自然史の解明のために,高い追跡率を確保しつつ調査を継続することが望まれる.一部の対象疾患で診療ガイドラインを整備できた一方,特に希少でエビデンスの確立していない疾患に関しては,エビデンスに基づいたガイドラインの作成は困難で,より実地医療に基づいた診療ガイドや患者向けのパンフレットの作成,Webの作成等による情報発信が必要である.学会と連携し,整備したガイドライン,各種ガイドや診断基準の普及啓発をすすめることが望まれる.
結論
小児腎領域の全ての指定難病と主要な小児慢特定疾病の診療実態を明らかにした.小児腎領域の希少・難治性疾患群に共通しかつ最大の合併症といえる小児CKDに関して,コホート研究により長期の予後と進行のリスク因子が明らかになった.今後策定した成人移行支援プログラムを実行していく.研究成果を,班のWebページ等を活用し患者への情報公開を続けていく.
公開日・更新日
公開日
2024-04-10
更新日
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