ホウ素ナノデバイス型中性子捕捉治療

文献情報

文献番号
200912022A
報告書区分
総括
研究課題名
ホウ素ナノデバイス型中性子捕捉治療
課題番号
H20-ナノ・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中村 浩之(学習院大学 理学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松村 明(筑波大学 人間総合科学研究科)
  • 李 千萬(大阪大学 医学部)
  • 鈴木 実(京都大学 原子炉実験所)
  • 丸山 一雄(帝京大学 薬学部)
  • 柳衛 宏宣(東京大学 工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
33,140,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中性子捕捉療法(BNCT)は、低エネルギーである熱・熱外中性子とホウ素と核反応により生ずる細胞致死効果の高いα線でがんを破壊する組織選択的な放射線療法である。低毒性のホウ素化合物を用いるため化学療法のような重篤な副作用はなく、また放射線療法のような照射場内の正常組織へのダメージもきわめて低い治療法である。現在、京都大学で開発している加速器からは、すでに原子炉と同等の中性子線量が得られている。動物実験による線量評価を経て、22年度には臨床応用が予定されており、近い将来病院併設型加速器中性子捕捉療法の実現により本治療法は一般的放射線療法の1つとなると考える。本研究では腫瘍内ホウ素濃度30 ppm以上の高濃度ホウ素デリバリーシステムを構築することで、BNCTの適用拡大を指向し、各腫瘍に最適なホウ素ナノデバイスの開発研究を行うことを目的とする。
研究方法
初年度において生体リン脂質の構造に着目し、その水溶性部位にホウ素イオンクラスターを導入した血中滞留性の高いホウ素脂質リポソームを開発した。そこで本年度は、GMP基準トランスフェリンホウ素ナノデバイスのプロセスの確立、ヒアルロン酸修飾ホウ素ナノデバイスの作成ならびに中皮腫モデルマウスへの集積性検討、蛍光ラベルホウ素ナノデバイスの開発による生体内局在化の検証を行った。
結果と考察
生体内で安定なホウ素ナノデバイスの最適化はほぼ確立し、マウスへの投与量が最高56mgB/kgが可能となり目標値を達成した。蛍光標識ホウ素ナノデバイスを開発し、細胞内局在化を明らかにした。GMP基準トランスフェリンホウ素ナノデバイスの大量供給プロセスを確立した。ヒアルロン酸ホウ素ナノデバイスの胸膜中皮腫に発現するCD44への結合性を明らかにした。胸膜中皮腫モデルにおけるヒアルロン酸ホウ素ナノデバイスの取り込みを検証し、中皮腫/正常肺および中皮腫/血液のホウ素濃度比がそれぞれ6.7、15以上であった。肝腫瘍モデルウサギへの肝動注では、肝腫瘍へのホウ素濃度が最高80ppmであった。
結論
ヒアルロン酸ホウ素ナノデバイスでは、胸膜中皮腫に対し目標値であるホウ素集積濃度30ppmをほぼ達成し、中皮腫/正常肺および中皮腫/血液のホウ素濃度比も目標値5を大きく上回り達成した。22年度では中性子照射による治癒効果を検証する。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-