新生児スクリーニング対象疾患等の先天代謝異常症における生涯にわたる診療体制の整備に関する研究

文献情報

文献番号
202211017A
報告書区分
総括
研究課題名
新生児スクリーニング対象疾患等の先天代謝異常症における生涯にわたる診療体制の整備に関する研究
課題番号
20FC1025
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
中村 公俊(熊本大学 大学院生命科学研究部 小児科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 濱崎 考史(大阪市立大学 医学部)
  • 和田 陽一(東北大学 東北大学病院)
  • 伊藤 康(東京女子医科大学 医学部 小児科)
  • 長尾 雅悦(独立行政法人国立病院機構北海道医療センター)
  • 村山 圭(千葉県こども病院 代謝科)
  • 小林 弘典(島根大学医学部小児科)
  • 福田 冬季子(浜松医科大学 小児科学)
  • 笹井 英雄(岐阜大学医学部附属病院)
  • 伊藤 哲哉(藤田医科大学医学部小児科学)
  • 児玉 浩子(帝京大学 医学部)
  • 高橋 勉(秋田大学 大学院医学系研究科)
  • 小須賀 基通(国立成育医療研究センター 小児内科系専門診療部 遺伝診療科)
  • 但馬 剛(国立成育医療研究センター 研究所 マススクリーニング研究室)
  • 大石 公彦(東京慈恵会医科大学 小児科)
  • 羽田 明(ちば県民保健予防財団 調査研究センター)
  • 青天目 信(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 村上 良子(国立大学法人大阪大学 微生物病研究所 )
  • 石毛 美夏(和田 美夏)(日本大学 医学部)
  • 清水 教一(東邦大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
17,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、タンデムマススクリーニング対象疾患をふくむ先天代謝異常症の生涯にわたる全国で均一化された診断と治療が可能となるための課題について、整備することを目標とした。そのために、対象となる47疾患について、(1)本研究班で作成し学会で承認された診療ガイドラインの改定と、新規のガイドラインの策定、(2)移行期医療と成人期の診療体制に特化した診療ガイドの作成、(3)先天代謝異常症の患者登録制度への登録の推進、患者会の支援および海外の患者会、登録制度との連携、(4)新生児スクリーニングと特殊ミルク制度に関する課題整理をおこなった。他の研究組織との連携では、笹井班(診療ガイドラインと遺伝子診断)、奥山班(ライソゾーム病)、村山班(ミトコンドリア病)、斯波班(脂質異常症)、但馬班(新生児マススクリーニング)、和田班(難病均てん化)などと連携した。そして、先天代謝異常症に関わる専門医師、診断施設、学会などのオールジャパンとしての取り組みで、生涯にわたる診療支援が継続的に可能になる体制作りを目指した。
研究方法
今年度の研究では
(1)対象となる47疾患のガイドラインの改訂または新規ガイドラインの作成
(2)移行期医療と成人期の診療体制の整備
(3)患者登録制度の推進と患者会の支援
(4)新生児代謝スクリーニングと特殊ミルク制度に関する課題整備をおこなった。「特殊ミルク治療ガイドブック」の出版後に、その活用について学会での講演等を行い周知に努めている。さらに患者会との合同で意見交換会を開催し、ガイドラインの役割、外来診療や成人期の診療について討議をおこないガイドラインに反映させた。各研究者は施設における倫理審査をそれぞれ受け、倫理審査状況及び利益相反の管理について、施設長から報告文書で受理している。
結果と考察
ガイドラインの改訂または新規ガイドラインの作成では、本研究班が作成、日本先天代謝異常学会編として発行された「新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2019」(診断と治療社)の25疾病+2つの病態の改訂作業に着手し、さらに、新規の診療ガイドラインとして残りの21疾患についてガイドラインを改訂または新規に作成し、理事会承認を申請した。移行期医療と成人期の診療体制の整備について、成人患者や移行期における課題を明らかにした。その一部はガイドラインの新規作成、改訂作業に加筆している。患者登録制度の推進と患者会の支援については、先天代謝異常症患者登録制度(JaSMIn)において、新たに21名の患者登録を達成し、総登録者数は1,752名となった。患者会の支援として、令和5年1月28日にはハイブリッド形式にて合同患者会「第9回先天代謝異常症患者会フォーラム」をTKP ガーデンシティプレミアム田町にて開催した。さらに新生児代謝スクリーニングと特殊ミルク制度に関する課題整備については、新生児スクリーニングにおける新規の診断指標を検討し、新規作成、改訂作業中のガイドラインに反映させている。特殊ミルクによる治療の対象となる疾患、年齢などを記載した「特殊ミルク治療ガイドブック」を出版後、その活用について学会での講演等を行い周知に努めた。患者会との連携および患者登録制度、新生児マススクリーニング、診療と患者支援、成人期の診療については、これらの疾患を統合して対応する分担研究を並行して行った。また、臨床調査個人票改定についての確認作業を、対象となる31の指定難病中19疾病について依頼があり対応した。厚労科研和田班から、「指定難病の各疾患群ごとの共通の重症度基準策定の試み」についての依頼を受け、中村班以外の研究班とも連携して、代謝疾患43疾患の重症度分類について共通の基準を用いることが可能な疾病と独自の基準が必要となる疾病についての分類をおこない和田班に報告した。
これらの成果について、研究班のホームページ( http://plaza.umin.ac.jp/~N-HanIMD )を作成し、研究班の目的や班の構成、課題や成果を公表し、承認されたガイドラインを掲載している。これらの結果として、先天代謝異常症患者の生涯にわたる診療が可能となり、疾患登録と患者会支援が進み、新生児スクリーニングや特殊ミルクなどの課題の解決が進むと考えられる。
結論
対象となる21疾病のガイドラインは、日本先天代謝異常学会の理事会承認を経て令和5年度中に診断と治療社から発行予定であり、移行期に関わる調査を行いガイドラインに反映させた。対象なる疾患の診断と治療の標準化が進むと考えられ、さらに先天代謝異常症の診療の均てん化を図ることが可能となっている。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202211017B
報告書区分
総合
研究課題名
新生児スクリーニング対象疾患等の先天代謝異常症における生涯にわたる診療体制の整備に関する研究
課題番号
20FC1025
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
中村 公俊(熊本大学 大学院生命科学研究部 小児科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 濱崎 考史(大阪市立大学 医学部)
  • 和田 陽一(東北大学 東北大学病院)
  • 伊藤 康(東京女子医科大学 医学部 小児科)
  • 長尾 雅悦(独立行政法人国立病院機構北海道医療センター)
  • 村山 圭(千葉県こども病院 代謝科)
  • 小林 弘典(島根大学医学部小児科)
  • 福田 冬季子(浜松医科大学 小児科学)
  • 笹井 英雄(岐阜大学医学部附属病院)
  • 伊藤 哲哉(藤田医科大学医学部小児科学)
  • 児玉 浩子(帝京大学 医学部)
  • 高橋 勉(秋田大学 大学院医学系研究科)
  • 奥山 虎之(国立成育医療研究センター 病院 臨床検査部)
  • 小須賀 基通(国立成育医療研究センター 小児内科系専門診療部 遺伝診療科)
  • 但馬 剛(国立成育医療研究センター 研究所 マススクリーニング研究室)
  • 大石 公彦(東京慈恵会医科大学 小児科)
  • 羽田 明(ちば県民保健予防財団 調査研究センター)
  • 青天目 信(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 村上 良子(国立大学法人大阪大学 微生物病研究所 )
  • 石毛 美夏(和田 美夏)(日本大学 医学部)
  • 清水 教一(東邦大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、遺伝難病である先天代謝異常症の多くの疾患の中で、タンデムマススクリーニング対象疾患を含む先天代謝異常症の、生涯にわたる全国で均一化された診断と治療が可能となるための課題について、整備することを目標とした。そのために、対象となる47疾患について、(1)本研究班で作成し学会で承認された診療ガイドラインの改定と、新規のガイドラインの策定、(2)移行期医療と成人期の診療体制に特化した診療ガイドの作成、(3)先天代謝異常症の患者登録制度への登録の推進、患者会の支援および海外の患者会、登録制度との連携、(4)新生児スクリーニングと特殊ミルク制度に関する課題整理をおこなった。他の研究組織との連携では、笹井班(診療ガイドラインと遺伝子診断)、奥山班(ライソゾーム病)、村山班(ミトコンドリア病)、斯波班(脂質異常症)、但馬班(新生児マススクリーニング)、和田班(難病均てん化)などと連携した。そして、先天代謝異常症に関わる専門医師、診断施設、学会などのオールジャパンとしての取り組みで、生涯にわたる診療支援が継続的に可能になる体制作りを目指した。
研究方法
令和2年度~令和4年度の研究では
(1)対象となる47疾患のガイドラインの改訂または新規ガイドラインの作成
(2)移行期医療と成人期の診療体制の整備
(3)患者登録制度の推進と患者会の支援
(4)新生児代謝スクリーニングと特殊ミルク制度に関する課題整備をおこなった。「特殊ミルク治療ガイドブック」の出版後に、その活用について学会での講演等を行い周知に努めている。さらに患者会との合同で意見交換会を開催し、ガイドラインの役割、外来診療や成人期の診療について討議をおこないガイドラインに反映させた。各研究者は施設における倫理審査をそれぞれ受け、倫理審査状況及び利益相反の管理について、施設長から報告文書で受理している。
結果と考察
令和2年度~令和4年度の研究において、対象となる47疾患について、(1)本研究班で作成し学会で承認された診療ガイドラインの改定と、新規のガイドラインの策定、(2)移行期医療と成人期の診療体制に特化した診療ガイドの作成、(3)先天代謝異常症の患者登録制度への登録の推進、患者会の支援および海外の患者会、登録制度との連携、(4)新生児スクリーニングと特殊ミルク制度に関する課題整理をおこなった。新規の診療ガイドラインとして21疾患についてガイドラインを改訂または新規に作成し、理事会承認を申請し、令和5年度に発刊されることとなった。移行期医療と成人期の診療体制の整備について、ガイドラインの新規作成、改訂作業に加筆している。当研究班の対象疾病のひとつであるホモシスチン尿症が新たに指定難病(指定難病337)に追加され、それに伴ってホモシスチン尿症、メチオニン血症の診療ガイドラインの改訂を行っている。患者登録制度の推進と患者会の支援については、先天代謝異常症患者登録制度(JaSMIn)において、3年間に173名の患者登録を達成し、総登録者数は1,752名となった。患者会の支援として、令和4年にはWeb形式で、令和5年にはハイブリッド形式にてそれぞれ合同患者会「第8回先天代謝異常症患者会フォーラム」、「第9回先天代謝異常症患者会フォーラム」を開催した。新生児スクリーニングにおける新規の診断指標を検討し、新規作成、改訂作業中のガイドラインに反映させている。特殊ミルクによる治療の対象となる疾患、年齢などを記載した「特殊ミルク治療ガイドブック」を出版後、その活用について学会での講演等を行い周知に努めた。厚労科研和田班から、「指定難病の各疾患群ごとの共通の重症度基準策定の試み」についての依頼を受け、中村班以外の研究班とも連携して、代謝疾患43疾患の重症度分類について共通の基準を用いることが可能な疾病と独自の基準が必要となる疾病についての分類をおこない和田班に報告した。
結論
本研究で取り上げる疾患の多くは全国の自治体で新規に推進されている新生児マススクリーニングの対象疾患になっている。対象となる21疾病のガイドラインは、日本先天代謝異常学会の理事会承認を経て令和5年度中に診断と治療社から発行予定であり、指定難病の対象となる先天代謝異常症の診療の均てん化に資すると考えられる。厚労科研和田班から、「指定難病の疾患群ごとの共通の重症度基準策定の試み」についての依頼を受け、中村班以外の研究班とも連携して、代謝疾患43疾患の重症度分類について共通の基準を用いることが可能な疾病と独自の基準が必要となる疾病についての分類をおこない均てん化に供した。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202211017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
対象となる47疾患について、(1)診療ガイドラインの改定と策定、(2)移行期医療と成人期の診療体制整備、(3)患者登録推進、患者会の支援、(4)新生児スクリーニングと特殊ミルク制度に関する課題整理をおこなった。
タンデムマススクリーニング対象疾患を含む先天代謝異常症47疾患の、生涯にわたる全国で均一化された診断と治療が可能となるための課題について整備した。並行して全国実態調査を行い、その成果は海外から高く評価された。
臨床的観点からの成果
新規の診療ガイドライン21疾患について作成し、令和5年度に発刊される。先天代謝異常症患者登録制度(JaSMIn)の総登録者数は1,752名となった。代謝疾患43疾患の重症度分類について共通基準と独自の基準の分類をおこない報告した。
対象となる21疾病のガイドラインは先天代謝異常症の診療を全国で可能にすると考えられる。代謝疾患43疾患の重症度分類について共通の基準を用いることが可能な疾病と独自の基準が必要となる疾病についての分類をおこない均てん化に資すると考えられた。
ガイドライン等の開発
新規の診療ガイドラインとして先天代謝異常症21疾患についてガイドラインを改訂または新規に作成し、令和5年度に発刊されることとなった。対象となる21疾病のガイドラインは先天代謝異常症の診療の均てん化に資すると考えられる。
その他行政的観点からの成果
研究班の対象疾病のひとつであるホモシスチン尿症が新たに指定難病(指定難病337)に追加され、難病情報等の追加作成を行った。それに伴ってホモシスチン尿症、メチオニン血症の診療ガイドラインの改訂を行った。
その他のインパクト
令和4年1月29日にはWeb形式で、令和5年1月28日にはハイブリッド形式にてそれぞれ合同患者会「第8回先天代謝異常症患者会フォーラム」、「第9回先天代謝異常症患者会フォーラム」を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
37件
その他論文(和文)
16件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
21件
ガイドライン作成21件
その他成果(普及・啓発活動)
6件
講演5件、合同患者会1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nabatame S, Tanigawa J, Tominaga K. et al
Association between cerebrospinal fluid parameters and developmental and neurological status in glucose transporter 1 deficiency syndrome
J Neurol Sci , 447 , 120597-  (2023)
doi.org/10.1016/j.jns.2023.120597
原著論文2
Nakamura S, Ito Y, Hayakawa H. et al
Establishment of a flow cytometry screening method for patients with glucose transporter 1 deficiency syndrome.
MGM reports , 34 , 1-7  (2023)
10.1016/j.ymgmr.2022.100954.
原著論文3
Kido, J., Sugawara, K., Nakamura, K. et al
Pathogenic variants of ornithine transcarbamylase deficiency: Nation-wide study in Japan and literature review
Frontiers in Geneticst , 13 , 952467-  (2022)
10.3389/fgene.2022.952467
原著論文4
Nohara F, Tajima G, Sasai H. et al
MCAD deficiency caused by compound heterozygous pathogenic variants in ACADM
Human Genome Variation , 9 (1) , 2-  (2022)
10.1038/s41439-021-00177-3
原著論文5
Wada Yoichi, Arai‐Ichinoi Natsuko, Kikuchi Atsuo. et al
β‐Galactosidase therapy can mitigate blood galactose elevation after an oral lactose load in galactose mutarotase deficiency.
J Inherit Metab Dis , 45 (2) , 334-339  (2022)
10.1002/jimd.12444
原著論文6
Kido J, Haberle J, Nakamura K. et al
Clinical manifestation and long-term outcome of citrin deficiency: Report from a nationwide study in Japan
J Inherit Metab Dis , 45 (3) , 431-444  (2022)
10.1002/jimd.12483
原著論文7
Kuwayama R, Suzuki K, Murakami Y. et al
Establishment of mouse model of inherited PIGO deficiency and therapeutic potential of AAV-based gene therapy
Nat Commun , 13 (1) , 3107-  (2022)
10.1038/s41467-022-30847-x

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
202211017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
22,880,000円
(2)補助金確定額
22,880,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,233,928円
人件費・謝金 1,955,898円
旅費 1,360,126円
その他 7,055,674円
間接経費 5,280,000円
合計 22,885,626円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-01-15
更新日
-