文献情報
文献番号
202211016A
報告書区分
総括
研究課題名
血液凝固異常症等に関する研究
課題番号
20FC1024
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
森下 英理子(国立大学法人 金沢大学 医薬保健研究域保健学系)
研究分担者(所属機関)
- 柏木 浩和(大阪大学 医学部附属病院輸血部)
- 村田 満(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター)
- 桑名 正隆(日本医科大学 大学院医学研究科 アレルギー膠原病内科学分野)
- 島田 直樹(国際医療福祉大学 基礎医学研究センター)
- 松本 雅則(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部)
- 丸山 彰一(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院医学系研究科腎臓内科)
- 宮川 義隆(埼玉医科大学 血液内科)
- 小亀 浩市(国立循環器病研究センター 分子病態部)
- 横山 健次(東海大学医学部付属八王子病院 血液腫瘍内科)
- 大賀 正一(国立大学法人九州大学 医学研究院成長発達医学分野)
- 松下 正(名古屋大学 医学部附属病院輸血部)
- 根木 玲子(国立循環器病研究センター ゲノム医療支援部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
難治性疾患政策研究事業として、エビデンスに基づいた全国共通の診断基準・重症度分類の策定や改訂、診療ガイドライン等の確立や改正および普及・啓発活動などを行う。対象疾患は 血液凝固異常症等が主な病態である 4 つの指定難病、特発性血小板減少性紫斑病 (ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る。)である。小児と成人を対象とし、さらに小児から成人への移行期医療も含める。
研究方法
4疾患について、それぞれのサブグループに分かれて課題に取り組むとともに、グループ間の相互議論をweb会議等で活発に行い、①分子病態に基づいた診断基準、治療指針の確立/普及およびその効果の検証、改訂、②大規模な疫学的解析による我が国での発症頻度、予後の把握と治療の標準化等を進めた。
結果と考察
ITPは、2018年~2019年のITPの臨床調査個人票および医療意見書を用いて、患者数(受給者数)、新規発症者数、年齢および治療の実施状況についての最近の動向を明らかにした。また、2019年に改定された成人ITP治療参照ガイドの普及に努め、次期改定への準備を行った。特記すべきことは、2007年の診断基準案を基盤に、網状血小板比率(あるいは幼若血小板比率)および血漿トロンボポエチン濃度を組み入れた新たなITP診断基準を15年ぶりに提唱し、その有用性に関する検討を行った。さらにITP診断において骨髄検査を必要とする条件、および二次性ITPにおける診断基準の有用性についての個別研究も行った。
TTPは、奈良県立医科大学輸血部でADAMTS13活性とインヒビター検査を行い、TMA症例の集積を継続し、患者数は1635例となった。そのうち、本年度は先天性TTP 1例においてADAMTS13遺伝子解析を実施した。11施設で後天性TTP症例を前向きに検討し、脳、心臓、腎臓の臓器障害を3年にわたり調査する研究を開始した。また、令和4年11月に保険収載されたカプラシズマブを追加したTTP診療ガイド2023案を作成し、日本血液学会の査読後、「臨床血液」に受理された。
aHUSは、名古屋大学腎臓内科でaHUS疑い症例において、ヒツジ溶血性試験などを実施し、症例を集積した。また、aHUS診療ガイド2022を作成するため、改訂委員会を実施し、パブリックオピニオンを募集した。
特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る。)は、診断された患者を前向きに登録するレジストリを構築した。また、「新生児から成人までに発症する特発性血栓症の診療ガイド」を作成し、パブリックオピニオンを募集した。個別研究として、特発性血栓症患者を対象に血栓性素因の検索を行い先天性の素因が疑われるものを対象に遺伝子解析を実施して同定を行った他、マウス静脈血栓症モデルを用いてアンチトロンビン抵抗性プロトロンビン(ATR-FII)ノックインマウスの効果的な抗血栓療法について検討した。また、血栓症合併妊婦に対する未分画ヘパリン(UFH)による治療量抗凝固療法のプロトコールを独自に作成し、抗Xa活性(ヘパリン血中濃度)の測定と検証を行った。
TTPは、奈良県立医科大学輸血部でADAMTS13活性とインヒビター検査を行い、TMA症例の集積を継続し、患者数は1635例となった。そのうち、本年度は先天性TTP 1例においてADAMTS13遺伝子解析を実施した。11施設で後天性TTP症例を前向きに検討し、脳、心臓、腎臓の臓器障害を3年にわたり調査する研究を開始した。また、令和4年11月に保険収載されたカプラシズマブを追加したTTP診療ガイド2023案を作成し、日本血液学会の査読後、「臨床血液」に受理された。
aHUSは、名古屋大学腎臓内科でaHUS疑い症例において、ヒツジ溶血性試験などを実施し、症例を集積した。また、aHUS診療ガイド2022を作成するため、改訂委員会を実施し、パブリックオピニオンを募集した。
特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る。)は、診断された患者を前向きに登録するレジストリを構築した。また、「新生児から成人までに発症する特発性血栓症の診療ガイド」を作成し、パブリックオピニオンを募集した。個別研究として、特発性血栓症患者を対象に血栓性素因の検索を行い先天性の素因が疑われるものを対象に遺伝子解析を実施して同定を行った他、マウス静脈血栓症モデルを用いてアンチトロンビン抵抗性プロトロンビン(ATR-FII)ノックインマウスの効果的な抗血栓療法について検討した。また、血栓症合併妊婦に対する未分画ヘパリン(UFH)による治療量抗凝固療法のプロトコールを独自に作成し、抗Xa活性(ヘパリン血中濃度)の測定と検証を行った。
結論
以上、今年度も、疫学調査、遺伝子解析等を含む病態解明を継続的に行い、診断基準や診療参照ガイドの作成や臨床的有用性の高いデータベースの構築などに注力した。
ITP治療ガイドに関しては、本研究で収集した情報をもとに、今後の改訂を進めている。今回作成した診断基準は専門誌に投稿中であり、今後、その普及と更なる検証を進めていく必要がある。
TTP/aHUSに関しては、日本人におけるレジストリを作成することにより、日本人の特徴を明らかに、日本人で有効な治療法の選択が可能になる。また、診療ガイドラインを作成することにより、これらの疾患を経験したことのない担当医が適切な治療法の選択が可能になる。これらのガイドラインは、日本血液学会、日本腎臓学会、日本小児科学会などを通じて、学会誌などに発表していく予定である。
特発性血栓症に関しては、今後特発性血栓症レジストリ登録施設を拡大していく予定であり、 さらに症例の集積を図る。また、 「新生児から成人までに発症する特発性血栓症の診療ガイド」は論文化して発表、その後広く周知を図る。「遺伝性血栓性素因患者の妊娠分娩管理に関する診療の手引きQ&A」は今後改訂版作成を予定する。
ITP治療ガイドに関しては、本研究で収集した情報をもとに、今後の改訂を進めている。今回作成した診断基準は専門誌に投稿中であり、今後、その普及と更なる検証を進めていく必要がある。
TTP/aHUSに関しては、日本人におけるレジストリを作成することにより、日本人の特徴を明らかに、日本人で有効な治療法の選択が可能になる。また、診療ガイドラインを作成することにより、これらの疾患を経験したことのない担当医が適切な治療法の選択が可能になる。これらのガイドラインは、日本血液学会、日本腎臓学会、日本小児科学会などを通じて、学会誌などに発表していく予定である。
特発性血栓症に関しては、今後特発性血栓症レジストリ登録施設を拡大していく予定であり、 さらに症例の集積を図る。また、 「新生児から成人までに発症する特発性血栓症の診療ガイド」は論文化して発表、その後広く周知を図る。「遺伝性血栓性素因患者の妊娠分娩管理に関する診療の手引きQ&A」は今後改訂版作成を予定する。
公開日・更新日
公開日
2024-04-02
更新日
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