文献情報
文献番号
200912019A
報告書区分
総括
研究課題名
血管内腔からがん組織への高効率・特異的移行を実現する革新的DDSの創成と脳腫瘍標的治療への展開
課題番号
H20-ナノ・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
片岡 一則(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 西山 伸宏(東京大学 大学院医学系研究科 )
- 稲生 靖(東京大学 医学部附属病院)
- 狩野 光伸(東京大学 大学院医学系研究科 )
- 西原 広史(北海道大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
29,344,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
膠芽腫(GBM)に代表される悪性脳腫瘍は、血液-腫瘍関門(BTB)が存在するために薬剤の集積性が著しく低下しており、その治療のためには従来型DDSのがん集積メカニズムであるEPR効果を超越した新しい薬剤のデリバリー戦略が必要である。そこで本研究では、研究代表者の片岡らが開発する高分子ミセル型DDSによる脳腫瘍への薬剤の送達効率を高めることを目的として、腫瘍血管特異的に物質透過性を高めることのできる薬剤の併用や腫瘍血管内皮細胞特異的にトランスサイトーシスを誘起するリガンド分子のミセル表面への導入に基づく新規治療戦略の開発を目指している。
研究方法
H21年度は、ヒトグリオーマの病理検体における腫瘍血管の解析を行った。また、マウスGBMモデルにおいて、DACHPt内包ミセルのがん組織への集積におけるTGF-β阻害剤の効果について検討を行った。さらに、環状RGDペプチドをリガンド分子として搭載したDACHPt内包ミセルを開発し、そのBTB透過能を評価するためのin vitroモデルの構築を行った。
結果と考察
ヒトグリオーマの病理検体における腫瘍血管の解析に関しては、肥厚血管が多く見られる症例で予後が不良となることが判明した。また、臨床検体ならびにマウスGBMモデルの内皮細胞においてTGFβシグナルの活性化が確認され、TGF-β阻害剤の利用によってDACHPt内包ミセルのがん組織への集積が顕著に高まることが確認された。環状RGDペプチドを搭載したDACHPt内包ミセルに関しては、その調製スキームを確立し、in vitroにおけるαvβ3インテグリンとの結合とそれを介した細胞毒性の増強を確認することができた。最後に、in vitro BTBモデルに関しては、トランスウェルを用いて、in vivo環境と同様に内皮細胞に周皮細胞が結合し、その周囲にアストロサイトーマが存在する環境を再現することによって、内皮細胞のバリア機能が高まることが確認された。
結論
以上のように本年度は、当初計画に従って、高分子ミセルによる悪性脳腫瘍の治療の戦略の基本コンセプトの確認とリガンド搭載高分子ミセルの調製法を確立した。最終年度となるH22年度においては、TGFβ阻害剤とDACHPt内包ミセルの併用ならびに環状RGDペプチド搭載DACHPt内包ミセルの機能に関して、in vivo実験を中心に行う予定である。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
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