非侵襲的生体膵島イメージングによる糖尿病の超早期診断法の開発

文献情報

文献番号
200912017A
報告書区分
総括
研究課題名
非侵襲的生体膵島イメージングによる糖尿病の超早期診断法の開発
課題番号
H19-ナノ・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
稲垣 暢也(京都大学医学研究科 糖尿病・栄養内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 豊田 健太郎(京都大学医学研究科)
  • 平尾 佳(アークレイ株式会社)
  • 天滿 敬(京都大学薬学研究科)
  • 上田 真史(京都大学医学研究科)
  • 興津 輝(京都大学医学研究科)
  • 佐治 英郎(京都大学薬学研究科)
  • 河嶋 秀和(京都大学薬学研究科)
  • 松田 哲也(京都大学情報学研究科)
  • 富樫 かおり(京都大学医学研究科)
  • 斉藤 美佳子(東京農工大学共生科学技術研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
38,742,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 膵島量は、糖尿病の発症過程のごく早期から減少しており、糖尿病発症後も経時的に減少し続けることが報告されている。このような糖尿病の発症・進展の病態を解明するためには、生体内の膵島量を非侵襲的に検知する必要があるが、そのような技術はこれまで存在しなかった。本研究では糖尿病の超早期診断を目的とした、生体内の膵島量を測定する非侵襲的画像診断技術の開発を目標として、新しい標識プローブの開発を行う。
研究方法
 直径50~500μmの大きさしかない膵島が膵臓内に散在しているため、それらを非侵襲的に検知して定量化するためには、膵島特異的に集積し、撮影機器が有する空間分解能と時間分解能で識別可能な、周囲組織とのコントラストを発生させるプローブが必要となる。そこで、 (1)膵β細胞特異的な標的分子の探索、(2)標的を認識するプローブ化合物の設計・合成、(3)プローブの標識化と基礎評価ならびに(4)定量評価系の構築を試みた。
結果と考察
 膵β細胞特異的な標的分子として、1)グルコース輸送担体(GLUT2)、2)KATPチャネル、3)小胞モノアミントランスポーター(VMAT2)、4)GPR40 (Gタンパク共役受容体40)、5)ペプチド受容体(GLP-1受容体、GIP受容体)を選び、PET用プローブの設計・合成を試み、これまでに、2)ならびに5)についてPET撮像まで行った。
 なかでもGLP-1受容体を標的としたペプチドであるExendin (9-39)を標識した化合物は、良好な膵臓特異性、膵β細胞特異性を認め、プローブとして期待できることを報告した(Mukai, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 2009)。 これらについて3年間で計8件の特許を申請した。MRIによる非侵襲的イメージングは非プローブ存在下で検討したが困難であることが判明し、プローブ存在下での検討を開始した。
 定量評価系として膵島定量モデルを選択し、膵β細胞特異的にルシフェラーゼを発現するマウスの膵島を用いた定量法などを構築した。これらの定量法とPETシグナルとの相関関係について今後明らかにする必要がある。
結論
 以上の研究により、非侵襲的に膵島量を検知するイメージング用プローブとして期待できる成果を得ることができた。今後、定量性評価、糖尿病モデル動物での評価を行うと同時に、実用化に向けた最適化検討を行う必要がある。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200912017B
報告書区分
総合
研究課題名
非侵襲的生体膵島イメージングによる糖尿病の超早期診断法の開発
課題番号
H19-ナノ・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
稲垣 暢也(京都大学医学研究科 糖尿病・栄養内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 豊田 健太郎(京都大学医学研究科)
  • 平尾 佳(アークレイ株式会社)
  • 天滿 敬(京都大学薬学研究科)
  • 上田 真史(京都大学医学研究科)
  • 興津 輝(京都大学医学研究科)
  • 佐治 英郎(京都大学薬学研究科)
  • 河嶋 秀和(京都大学医学研究科)
  • 松田 哲也(京都大学情報学研究科)
  • 富樫 かおり(京都大学医学研究科)
  • 斉藤 美佳子(東京農工大学共生科学技術研究院生命機能科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 膵島量は、糖尿病の発症過程のごく早期から減少しており、糖尿病発症後も経時的に減少し続けることが報告されている。このような糖尿病の発症・進展の病態を解明するためには、生体内の膵島量を非侵襲的に検知する必要があるが、そのような技術はこれまで存在しなかった。本研究では糖尿病の超早期診断を目的とした、生体内の膵島量を測定する非侵襲的画像診断技術の開発を目標として、新しい標識プローブの開発を行う。
研究方法
 直径50~500μmの大きさしかない膵島が膵臓内に散在しているため、それらを非侵襲的に検知して定量化するためには、膵島特異的に集積し、撮影機器が有する空間分解能と時間分解能で識別可能な、周囲組織とのコントラストを発生させるプローブが必要となる。そこで、 (1)膵β細胞特異的な標的分子の探索、(2)標的を認識するプローブ化合物の設計・合成、(3)プローブの標識化と基礎評価ならびに(4)定量評価系の構築を試みた。
結果と考察
 膵β細胞特異的な標的分子として、1)グルコース輸送担体(GLUT2)、2)KATPチャネル、3)小胞モノアミントランスポーター(VMAT2)、4)GPR40 (Gタンパク共役受容体40)、5)ペプチド受容体(GLP-1受容体、GIP受容体)を選び、PET用プローブの設計・合成を試み、これまでに、2)ならびに5)についてPET撮像まで行った。
 なかでもGLP-1受容体を標的としたペプチドであるExendin (9-39)を標識した化合物は、良好な膵臓特異性、膵β細胞特異性を認め、プローブとして期待できることを報告した(Mukai, et al. Biohem Biophys Res Commun. 2009)。 これらについて3年間で計8件の特許を申請した。MRIによる非侵襲的イメージングは非プローブ存在下で検討したが困難であることが判明し、プローブ存在下での検討を開始した。
 定量評価系として膵島定量モデルを選択し、膵β細胞特異的にルシフェラーゼを発現するマウスの膵島を用いた定量法などを構築した。これらの定量法とPETシグナルとの相関関係について今後明らかにする必要がある。
結論
 以上の研究により、非侵襲的に膵島量を検知するイメージング用プローブとして期待できる成果を得ることができた。今後、定量性評価、糖尿病モデル動物での評価を行うと同時に、実用化に向けた最適化検討を行う必要がある。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200912017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
非侵襲的な生体内膵島の画像診断技術により、糖尿病の病態や病期に関する新しい情報が得られ、糖尿病を形態学的観点から解析することにより、新しい診断基準や治療戦略をたてることが可能となる。また、膵島の可塑性がある時期に、細胞保護因子や膵島増殖因子による介入が可能となれば、膵島消失率を軽減し膵島再生を促進させて健常レベルまで回復させること、すなわち、治癒を達成できる可能性も生まれる。
臨床的観点からの成果
非侵襲的な生体内膵島の画像診断技術により糖尿病の超早期診断が可能になれば、膵島の障害が進行する前に介入することが可能となるため、糖尿病の発症予防が可能となる。それだけでなく、さらに、現段階では評価が困難な膵島移植における拒絶反応の判定、移植片の長期予後の経時的観察など、移植医療の発展のために重要である。以上の糖尿病学、移植医療への貢献によって、個人のQOLの改善と糖尿病に起因する医療経済的負担の軽減が期待できるため、社会に大いに貢献する成果になると考えられる。
ガイドライン等の開発
 本研究成果は、現時点では臨床応用段階まで至っていないため、ガイドライン等の開発へは寄与していない。しかしながら、DPP4阻害薬など膵島量を維持もしくは増加させる可能性のある2型糖尿病治療薬が開発され、本邦でも既に臨床使用が開始されている。今後、本技術成果の臨床使用が可能になれば、膵島量の糖尿病の病態に及ぼす影響と治療効果に関する新たな知見が得られるため、新たな糖尿病の診断と治療に関するガイドライン策定に寄与する可能性がある。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
70回糖尿病学の進歩、54回日本糖尿病学会年次学術集会、日本薬学会第130年会、第49回日本核医学会学術総会など
学会発表(国際学会等)
6件
55th SNM 2008, 56th SNM 2009, World Molecular Imaging Congress 2009, 68th ADA 2008, 44th EASD 2008
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計8件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kentaro Toyoda, Teru Okitsu, Shunsuke Yamane, et al.
GLP-1 receptor signaling protects pancreatic beta cells in intraportal islet transplant by inhibiting apoptosis
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 367 , 793-798  (2008)
原著論文2
Eri Mukai, Kentaro Toyoda, Hiroyuki Kimura, et al.
GLP-1 receptor antagonist as a potential probe for pancreatic b-cell imaging
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 389 , 523-526  (2009)
原著論文3
Taeko Uonaga, Kentaro Toyoda, Teru Okitsu, et al.
FGF-21 enhances islet engraftment in mouse syngeneic islet transplantation model
Islet (in press)  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-