高磁場MRIとオールインワンナノデバイスによる癌微少病変の非侵襲的診断・治療システムの開発

文献情報

文献番号
200912014A
報告書区分
総括
研究課題名
高磁場MRIとオールインワンナノデバイスによる癌微少病変の非侵襲的診断・治療システムの開発
課題番号
H19-ナノ・一般-014
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
石坂 幸人(国立国際医療センター 難治性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 青木伊知男(放射線医学研究所、分子イメージング研究センター)
  • 河野 健司(大阪府立大学工学部 ・生体関連高分子化学 )
  • 山下 克美(金沢大学大学院自然科学研究科)
  • 村瀬 勝俊(名糖産業名古屋研究所)
  • 濱田 洋文(札幌医科大学)
  • 中釜 斉(国立がんセンター 研究所 )
  • 津田 洋幸(名古屋市立大学・大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
33,254,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本課題では、膵臓癌等の予後不良な難治性腫瘍に対して診断と治療を同時行う事が可能なナノデバイス、以下オールインワンナノデバイス(AIO)の創成を目的としている。特に平成21年度は、
1. 高磁場MRIと単クローン抗体・磁性体ナノ粒子を用いた癌微少病変の高解像度画像データの集積 と
2. MRI検出可能な感温性リポソームによるMRIによる組織集積と外部加温誘導によるリポソームからの薬剤放出のリアルタイム観察を行うことを目的とした。

研究方法
a. 磁性体ナノ粒子への抗体結合方法の改良とMRIによる画像解析:昨年度までにMRI検出可能な磁性体ナノ粒子と標的化可能な抗体の結合方法を確立した。今年度はこれを用いて、10個の独立した担癌マウスについてMRIによる画像解析を集中的に行った。また集積した磁性体を検出する物区的で、誘導結合プラズマ質量分析法 (ICP-MS)を用いて鉄含有量を調べた。
b. 高磁場MRIを用いた高分解能MRI画像化と加温誘導システムの開発:ガドリニウム(Gd)付加型温度応答性リポソームを作成し、これを担癌マウスに投与後、腫瘍組織への集積を検出するとともに、外部からの加温誘導後のリポソームからの薬剤放出をMRI観察下に検出した。
結果と考察
a. 抗体結合磁性体ナノ粒子によるMRI検出:10検体のMRI検出の結果から、P < 0.02の危険率で磁性体が陽性腫瘍に集積する可能性が示唆された。
b.新たな温度応答性リポソームの作成:Gdが付加されたMRI検出可能な温度応答性リポソームが創成され、これが腫瘍組織に集積することをMRIで検出するとともに、外部からの加温誘導よって、リポソームから目的組織中に薬剤が放出される様子をリアルタイムで検出することが可能になった。
以上の知見は標的化が可能な抗体を結合させることで、ナノ粒子を目的の組織に集積させる事が可能であり、温度応答性リポソームと組み合わせる事で、オールインワンナノデバイスの創成が可能になることが明らかとなった。
結論
オールインワンナノデバイスの創成に必要な優れた単クローン、温度応答性リポソーム及びこれらの結合様式に関する手法が確立された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200912014B
報告書区分
総合
研究課題名
高磁場MRIとオールインワンナノデバイスによる癌微少病変の非侵襲的診断・治療システムの開発
課題番号
H19-ナノ・一般-014
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
石坂 幸人(国立国際医療センター 難治性疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 青木伊知男(放射線医学研究所、分子イメージング研究センター)
  • 河野 健司(大阪府立大学工学部 ・生体関連高分子化学 )
  • 村瀬 勝俊(名糖産業名古屋研究所)
  • 山下 克美(金沢大学大学院自然科学研究科)
  • 濱田 洋文(札幌医科大学)
  • 中釜 斉(国立がんセンター 研究所 )
  • つだひろゆき(名古屋市立大学・大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本課題では、膵臓癌等の予後不良な難治性腫瘍に対して診断と治療を同時行う事が可能なナノデバイス、以下オールインワンナノデバイス(AIO)の創成を目的としている。即ち、
1. 高磁場MRIと単クローン抗体・磁性体ナノ粒子を用いた癌微少病変の高解像度画像システムの稼働
2. MRI検出可能な感温性リポソームによる局所DDSを確立し、MRIプローブとしての機能と同時に外部からの加温誘導によってDDSを行う事が可能なプローブを創成する。
研究方法
各分担研究者が以下の項目について研究を進め、ナノ粒子を能動的に目的組織に運搬し、局所で薬剤放出できるナノ粒子の創成に必要な要件を整備した。
a. 磁性体ナノ粒子への抗体結合方法の改良:MRI検出可能な磁性体ナノ粒子と標的化可能な抗体の結合方法を確立した。
b. in vivoイメージング:aで作成された新規MRIプローブを用いて標的組織のin vivo MRI検出のための諸条件を整備した。
c. 新たな温度応答性リポソームの作成:温度に反応して疎水性となるリポソームを作成し、厳格に温度反応性を示すリポソームの作成を試みた。
d. 高磁場MRIを用いた高分解能MRI画像化と加温誘導システムの開発:7テスラMRIを用いて目的組織に集積する抗体結合型磁性体ナノ粒子及びガドリニウム(gd)付加型リポソームを検出するための条件を整備した。
e. 新たな単クローン抗体の作成:独自のスクリーニングシステムを用いて標的化可能な単クローン抗体を種々の腫瘍細胞を抗原として作成した。
結果と考察
a. 磁性体ナノ粒子への抗体結合方法の改良:抗体結合型磁性体ナノ粒子を用いて標的腫瘍のMRI検出が可能となった。
b.新たな温度応答性リポソームの作成:Gdが付加されたMRI検出可能な温度応答性リポソームが創成された。
d. 高磁場MRIを用いた高分解能MRI画像化と加温誘導システムの開発:外部からの加温誘導よって、リポソームから目的組織中に薬剤が放出される様子をリアルタイムで検出することが可能になった。。
e. 新たな単クローン抗体の作成:標的化が可能な単クローン抗体が数多く産生でき、in vivoでの標的化を可能にする基盤が整備された。
単クローン抗体とナノ粒子を用いて標的化が可能になるとともに、局所への薬剤輸送と局所放出システムが整備された。これを組み合わせることによって新規治療法の開発が可能になるものと期待される。
結論
標的化が可能な単クローン抗体と薬剤の局所放出を可能にし、MRI検出可能なリポソームによりオールインワンナノデバイスの創成が可能になる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200912014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
MRIによる診断と同時に外部からの物理的な刺激によってDDSを可能にするナノプローブ(オールインワンナノデバイス)の創成を目的として、異なる研究分野の研究者が結集して基盤技術を開発した。その結果、標的化が可能な種々の単クローン抗体の作成、ナノ粒子への標的分子の架橋法の確立、MRI検出可能な温度応答性リポソームが創成された。これらの技術を融合させることによって、オールインワンナノデバイスの作成が可能になる。
臨床的観点からの成果
現在の医療現場ではMRI観察下に外部から高周波焦点照射を行うことで、腫瘍組織を除去することが可能になっている。本研究課題の成果として、MRI検出が可能でかつ温度に応答して抗がん剤などの内包物を放出できるリポソームの作成が可能になった。このようなナノプローブを現行の観血的外科手術システムに応用することで、癌微少病変の非侵襲的診断・治療が可能となり、患者QOLの改善に貢献できるものと思われる。
ガイドライン等の開発
該当無し
その他行政的観点からの成果
該当無し
その他のインパクト
該当無し

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
35件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
21件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kono K. et al.
Highly temperature-sensitive liposomes based on a thermosensitive block copolymer for tumor-specific chemotherapy.
Biomaterials in press.  (2010)
原著論文2
Yuba E. et al.
pH-Sensitive fusogenic polymer-modified liposomes as a carrier of antigenic proteins for activation of cellular immunity
Biomaterials , 31 , 943-951  (2010)
原著論文3
Kojima C. et al.
Synthesis and characterization of hyperbranched poly(glycidol) modified withpH- and temperature-sensitive groups
Bioconjugate Chem , 20 , 1054-1057  (2009)
原著論文4
Yuba E. et al.
Carboxylated hyperbranched poly(glycidol)s for preparation of pH-sensitive liposomes
J. Control. Release, in press  (2010)
原著論文5
Fukuda H. et al.
Translesional DNA synthesis through a C8-guanyl adduct of PhIP in vitro.
J Biol Chem , 184 , 25585-25592  (2009)
原著論文6
Okamoto K. et al.
Mdmx enhances p53 ubiquitination by altering the substrate preference of the Mdm2 ubiquitin ligase.
FEBS Lett. , 583 , 2710-2714  (2009)
原著論文7
Fukuda K et al.
E1A, E1B double-restricted replicative adenovirus at low dose greatly augments tumor-specific suicide gene therapy for gallbladder cancer.
Cancer Gene Ther , 16 (2) , 126-136  (2009)
原著論文8
Toyama K et al.
Therapeutic benefits of angiogenetic gene-modified human mesenchymal stem cells after cerebral ischemia.
Exp. Neurol , 216 (1) , 47-55  (2009)
原著論文9
Ono I et al.
De novo follicular regeneration of the skin by wingless int 3 and bone morphogenetic protein 2 genes introduced into dermal fibroblasts and fibroblast growth factor-2 protein.
Wound Rep. Reg , 17 , 436-446  (2009)
原著論文10
Yamaguchi M et al.
Biocompatibility study of hemoglobin vesicles, cellular-type artificial oxygen carriers, with human umbilical cord hematopoietic stem/progenitor cells using an in vitro expansion system
ASAIO J , 55 (3) , 200-205  (2009)
原著論文11
Song CH et al.
Effect of transplantation of bone marrow-derived mesenchymal stem cells on mice infected with prions.
J Virol., , 83 (11) , 5918-5927  (2009)
原著論文12
Huang J et al.
Sendai viral vector mediated angiopoietin-1 gene transfer for experimental ischemic limb disease.
Angiogenesis , 12 (3) , 243-249  (2009)
原著論文13
Katsu M et al.
Ex vivo gene delivery of ephrin-B2 induces development of functional collateral vessels in a rabbit model of hind limb ischemia.
J. Vasc. Surg , 49 (1) , 192-198  (2009)
原著論文14
Kojima Y et al.
Oncolytic gene therapy combined with double suicide genes for human bile duct cancer in nude mouse models.
J. Surg. Res , 157 (1) , 63-67  (2009)
原著論文15
Sasaki K et al.
An artificial virus-like nano carrier system: enhanced endosomal escape of nanoparticles via synergistic action of pH-sensitive fusogenic peptide derivatives.
Anal Bioanal Chem , 391 (8) , 2717-2727  (2009)
原著論文16
Tanaka H et al.
Mature acinar cells are refractory to carcinoma development by targeted activation of Ras oncogene in adult rats
Cancer Sci., , 101 , 341-346  (2010)
原著論文17
Fukamachi K et al.
An animal model of preclinical diagnosis of pancreatic ductal adenocarcinomas.
Biochem. Biophys. Res. Commun. , 390 , 636-641  (2009)
原著論文18
Uchida S et al.
Stress-activated mitogen-activated protein kinases c-Jun NH2-terminal kinase and p38 target Cdc25B for degradation.
Cancer Res. , 69 (16) , 6438-6444  (2009)
原著論文19
Aung W et al.
CVisualization of in vivo electroporation-mediated transgene expression in experimental tumors by optical and magnetic resonance imaging.
Gene Therapy , 16 (7) , 830-839  (2009)
原著論文20
Zhelev Z et al.
Radicals for Labeling of Conventional Therapeutics and Non-Invasive Magnetic Resonance Imaging of Their Permeability for Blood-Brain Barrier: Relationship between Structure, Blood Clearance, and MRI Signal Dynamic in the Brain.
Molecular Pharmaceutics , 6 (2) , 504-512  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-