文献情報
文献番号
202211009A
報告書区分
総括
研究課題名
呼吸器系先天異常疾患の診療体制構築とデータベースおよび診療ガイドラインに基づいた医療水準向上に関する研究
課題番号
20FC1017
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
臼井 規朗(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター 小児外科)
研究分担者(所属機関)
- 永田 公二(九州大学 大学病院)
- 早川 昌弘(名古屋大学 医学部附属病院)
- 奥山 宏臣(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 小児成育外科学)
- 板倉 敦夫(埼玉医科大学 医学部)
- 照井 慶太(千葉大学大学院医学研究院 小児外科学)
- 甘利 昭一郎(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 新生児科)
- 黒田 達夫(慶應義塾大学 医学部)
- 広部 誠一(東京都立小児総合医療センター)
- 渕本 康史(国立成育医療研究センター(臓器・運動器病態外科部外科))
- 松岡 健太郎(東京都立小児総合医療センター 病理診断科)
- 野澤 久美子(神奈川県立こども医療センター 放射線科)
- 守本 倫子(国立研究開発法人成育医療研究センター 耳鼻咽喉科)
- 前田 貢作(自治医科大学医学部)
- 肥沼 悟郎(慶應義塾大学 医学部 小児科学教室)
- 二藤 隆春(東京大学 医学部附属病院)
- 藤野 明浩(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児外科系専門診療部 外科)
- 小関 道夫(岐阜大学 医学部附属病院)
- 平林 健(弘前大学 医学部附属病院)
- 渡邉 航太(慶應義塾大学医学部 先進脊椎脊髄病治療学)
- 中島 宏彰(名古屋大学 整形外科学)
- 小谷 俊明(聖隷佐倉市民病院 整形外科)
- 鈴木 哲平(国立病院機構 神戸医療センター 整形外科)
- 山口 徹(地方独立行政法人福岡市立病院機構福岡市立こども病院 整形・脊椎外科)
- 佐藤 泰憲(慶應義塾大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
研究の目的は、呼吸器系の先天異常疾患である先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、気道狭窄、頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症、肋骨異常を伴う先天性側弯症について、学会や研究会と連携しながら診療ガイドラインを整備し、長期的なフォローアップ体制を構築して小児から成人への移行期医療を支援するとともに、AMED研究班や難病拠点病院、患者会などと連携して研究を推進し、患者のQOL向上に資する適切な診療体制を構築することである。
研究方法
呼吸器系の先天異常疾患である5疾患は、研究の進捗程度がそれぞれ異なるため、疾患毎の責任者を中心に、疾患グループに分かれて研究活動を行った。先天性横隔膜ヘルニアについては、①心機能分科会、②長期予後分科会、③DPC-linkage分科会でそれぞれ活動を行った。また、症例登録制度を継続し国際共同研究へとつなげた。先天性嚢胞性肺疾患については、学術集会において公表した結果の議論を盛り込んだ修正や加筆を行った上で、一般公開用のガイドラインを作成した。気道狭窄については、喉頭狭窄CQ6個、気管狭窄CQ10個の推奨文と解説文を執筆した。頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症については、患部の蜂窩織炎に関する検討と診断時期による治療と予後に関する検討を行い、診療ガイドライン改訂2版の4つのCQに対する推奨文を作成した。肋骨異常を伴う先天性側弯症については、データベースへの症例データの追加、診療ガイドラインの文献の検討、推奨文の作成を行って診療ガイドラインを作成した。
結果と考察
先天性横隔膜ヘルニアでは、心機能分科会として8施設による多機関共同研究を開始し、長期予後分科会として6施設が参加して研究計画を立案した。DPC-linkage分科会は成育医療研究センターを中心とした4施設で多機関共同研究を実施した。また、国際共同研究では世界的な登録データを用いて大阪大学と九州大学で2つのテーマの論文執筆を行った。バイオバンク設立については、九州大学病院で先天性横隔膜ヘルニア患者6名の母親の臍帯から間葉系幹細胞の抽出を行った。先天性嚢胞性肺疾患については、日本小児呼吸器外科研究会で開催した特別セッションにおける議論に基づいて、CPAMの疾患概念の見直しの必要性が明らかとなり、将来的なガイドライン改訂に向けて継続的な検討を行う必要性を再認識した。気道狭窄については、喉頭狭窄は6つのCQ、気管狭窄は10のCQに対する推奨文と解説文が掲載された『先天性気道狭窄診療マニュアル』を完成させた。頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症については、「リンパ管奇形病変部の蜂窩織炎発症に関する検討」と「リンパ奇形の診断時期による治療と予後に関する検討」の論文を再投稿した。また、本研究班で担当した4つのCQを含む「血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン」改訂3版が発刊された。社会への情報還元として、第5回小児リンパ管疾患シンポジウムを開催した。肋骨異常を伴う先天性側弯症については、データベースへの症例登録を追加し、1編の英文論文を執筆した。また、診療ガイドラインについては、収集した文献の検討と推奨文の作成を行い、診療ガイドラインを完成させた。
本研究が対象とする5つの疾患はいずれも患者数が非常に少なく、政策研究事業を遂行する上で困難を伴うことが多い。そこで、気道狭窄や先天性側弯症に対する診療ガイドラインでは、EBMの考え方を可能な限り遵守をしつつも、現実的な診療ガイドラインとなるように留意してCQの作成を行い、それに対する文献検索についても、CQが解決できることを目標として現実的に対応した。先天性横隔膜ヘルニアの診療ガイドライン改訂では、患者・家族会にも参加していただき、ガイドラインにおける意思決定過程に患者・家族の希望を取り入れた。また、先天性嚢胞性肺疾患の診療ガイドライン作成にあたっては、関連学会でガイドラインに対する活発な議論が行われた。患者数が少ない希少疾患では、少数の患者が様々な施設に分散する傾向があり、長期フォローアップ体制の確立や小児から成人への移行期医療の支援にも支障を来す可能性が考えられる。患者のQOL向上に資する適切な診療体制を構築するためには、今後患者の集約化を始め、様々な工夫が必要と考えられた。
本研究が対象とする5つの疾患はいずれも患者数が非常に少なく、政策研究事業を遂行する上で困難を伴うことが多い。そこで、気道狭窄や先天性側弯症に対する診療ガイドラインでは、EBMの考え方を可能な限り遵守をしつつも、現実的な診療ガイドラインとなるように留意してCQの作成を行い、それに対する文献検索についても、CQが解決できることを目標として現実的に対応した。先天性横隔膜ヘルニアの診療ガイドライン改訂では、患者・家族会にも参加していただき、ガイドラインにおける意思決定過程に患者・家族の希望を取り入れた。また、先天性嚢胞性肺疾患の診療ガイドライン作成にあたっては、関連学会でガイドラインに対する活発な議論が行われた。患者数が少ない希少疾患では、少数の患者が様々な施設に分散する傾向があり、長期フォローアップ体制の確立や小児から成人への移行期医療の支援にも支障を来す可能性が考えられる。患者のQOL向上に資する適切な診療体制を構築するためには、今後患者の集約化を始め、様々な工夫が必要と考えられた。
結論
本研究事業が対象とする呼吸器系の先天異常疾患、すなわち先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、気道狭窄、頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症、肋骨異常を伴う先天性側弯症に対しては、今後さらなる症例の蓄積と科学的根拠を高めるための臨床研究の遂行によって、エビデンスレベルを高めるとともに、社会保障制度を充実させながら、患者・家族会との連携を図り、市民への啓蒙活動を継続しながら患者支援のための診療体制を確立することが重要と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2024-04-02
更新日
-