強皮症・皮膚線維化疾患の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン・疾患レジストリに関する研究

文献情報

文献番号
202211005A
報告書区分
総括
研究課題名
強皮症・皮膚線維化疾患の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン・疾患レジストリに関する研究
課題番号
20FC1013
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
藤本 学(大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 浅野 善英(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 植田 郁子(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 沖山 奈緒子(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 川口 鎮司(東京女子医科大学 医学部)
  • 熊ノ郷 淳(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 桑名 正隆(日本医科大学 大学院医学研究科)
  • 後藤 大輔(筑波大学 医学医療系)
  • 神人 正寿(和歌山県立医科大学 医学部)
  • 高橋 裕樹(札幌医科大学 医学部)
  • 長谷川 稔(福井大学 学術研究院医学系部門)
  • 波多野 将(東京大学 医学部附属病院)
  • 濱口 儒人(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 牧野 雄成(熊本大学 大学院生命科学研究部)
  • 茂木 精一郎(群馬大学 大学院医学系研究科)
  • 山本 俊幸(福島県立医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,577,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全身性強皮症や皮膚線維化疾患は、自己免疫機序を中心とした病態によって、皮膚の硬化や関節の拘縮などにより日常生活に支障を来たし、QOLやADLも低下する疾患群である。これらの疾患の疫学的情報は、海外に比べて本邦ではやや不足している。また、全身性強皮症は近年エビデンスの集積が著しく、現ガイドラインの改訂が望まれている。そこで、全身性強皮症および限局性強皮症の疫学調査およびガイドラインの改訂により、これらの疾患患者の実態を明らかにし、その診療を均てん化することを目的とする。
研究方法
1.個票を用いた全身性強皮症の後ろ向き大規模疫学調査
2.アンケート方式による小児期発症全身性強皮症の全国疫学調査
3.アンケート方式による小児期発症限局性強皮症の全国疫学調査
4.重症型全身性強皮症早期例レジストリ研究
5.全身性強皮症の診療ガイドライン改訂
6.限局性強皮症・好酸球性筋膜炎・硬化性萎縮性苔癬の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインに関するアンケート調査
結果と考察
1.2003年度から2008年度までに特定疾患治療研究事業に登録された強皮症症例データを用いて、強皮症の臨床疫学を明らかにすると共に、厚労省ICT・AI研究事業で構築した機械学習モデルを用いて予後因子の抽出を行った。27,556例が登録され、このうち22,524例を対象に解析を行った。1999年度に登録された10,956例の強皮症患者を対象に解析が行われた調査と比較した。男女比は、女性に多い傾向は、1999年度の調査と一致し、抗トポイソメラーゼⅠ抗体(23%)、抗セントロメア抗体(39%)とも前回調査と同程度の陽性率を示した。肺線維症は抗トポイソメラーゼⅠ抗体との相関が強い傾向は一致した。肺高血圧症の予後因子として、多変量解析では両側肺線維症、強皮症腎クリーゼ、抗トポイソメラーゼⅠ抗体、プロスタグランディン製剤の使用があげられた。今後は、臨床経過を機械学習させることで、初診時の所見から症例をクラスタリングすることで、新たな予後因子の特定を進める。
2.および3. 本邦において18歳未満で全身性強皮症、限局性強皮症を発症した患者を調査対象とし、一次調査(患者数の把握)とそれに続く二次調査(臨床像の把握)の二部から構成される調査を行った。1次調査を全国3005箇所の医療機関(異なる診療科の重複あり)に発送し、1842機関から回答があった。有患者施設数は129施設、患者数は371例であった。2次調査を発送し、351例について回答があった。小児期発症全身性強皮症として132例を解析対象とした。びまん皮膚硬化型の割合が多く、諸外国の小児や成人と比較して抗トポイソメラーゼⅠ抗体陽性例が多かった。主な臓器合併症の頻度は諸外国の小児と概ね類似していた。治療はステロイドの使用率や免疫抑制薬の使用率が高かった。小児期発症限局性強皮症についても臨床像や治療内容について解析をすすめている。
4.レジストリの登録システムおよび登録項目を作成し、福井大学で症例登録レジストリの倫理審査の承認を受け、症例登録を開始した。次年度以降も継続して登録症例を集積し、新規発症の全身性強皮症患者の治療による改善状況、病気の進行状況の把握、合併症、QOLの評価を行うことを検討する。新たな症例登録レジストリにおいて令和4年12月までに87例の新規患者が登録されている。
5.平成28年に出版された全身性強皮症診療ガイドラインの改訂を行った。Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020に準拠し、クリニカルクエスチョン(Clinical Question: CQ)を設定し、日本医学図書館協会に依頼し網羅的な文献検索を行い、CQに対する推奨文・推奨度・解説を作成した。推奨文・推奨度の決定は修正デルファイ法に基づいて行った。今後所要の手続きを経て全身性強皮症診療ガイドライン(2023年版〔予定〕)として刊行を予定している。
6.本研究班班員の所属施設および関連病院に対してアンケート調査を行った。問題点の指摘を受け、次年度以降に全国規模のアンケート調査とその改訂について検討する。
結論
全身性強皮症の後ろ向き大規模疫学調査により、本邦の疫学データを示すことができる。また、小児期発症の全身性強皮症と限局性強皮症のアンケート方式の後ろ向き疫学調査を行うことで、両疾患の小児期発症例の特徴や問題点を明らかにでき、移行期医療に活用できると期待される。前向き研究としての重症型早期例疾患レジストリの構築により、今後患者データの活用の道を拓くことができると考えられる。ガイドラインの改訂については、必要な手続きを経て全身性強皮症診療ガイドライン(2023年版〔予定〕)として刊行を予定している。本邦の患者像の実態解明とともに、患者の予後の改善に貢献できると期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
2024-04-11

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202211005B
報告書区分
総合
研究課題名
強皮症・皮膚線維化疾患の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン・疾患レジストリに関する研究
課題番号
20FC1013
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
藤本 学(大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 浅野 善英(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 植田 郁子(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 沖山 奈緒子(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 川口 鎮司(東京女子医科大学 医学部)
  • 熊ノ郷 淳(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 桑名 正隆(日本医科大学 大学院医学研究科)
  • 後藤 大輔(筑波大学 医学医療系)
  • 神人 正寿(和歌山県立医科大学 医学部)
  • 高橋 裕樹(札幌医科大学 医学部)
  • 長谷川 稔(福井大学 学術研究院医学系部門)
  • 波多野 将(東京大学 医学部附属病院)
  • 濱口 儒人(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 牧野 貴充(熊本大学 病院)
  • 牧野 雄成(熊本大学 大学院生命科学研究部)
  • 茂木 精一郎(群馬大学 大学院医学系研究科)
  • 山本 俊幸(福島県立医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全身性強皮症や皮膚線維化疾患は、自己免疫機序を中心とした病態によって、皮膚の硬化や関節の拘縮などにより日常生活に支障を来たし、QOLやADLも低下する疾患群である。これらの疾患の疫学的情報は、海外に比べて本邦ではやや不足している。また、全身性強皮症は近年エビデンスの集積が著しく、現ガイドラインの改訂が望まれている。そこで、全身性強皮症および限局性強皮症の疫学調査およびガイドラインの改訂により、これらの疾患患者の実態を明らかにし、その診療を均てん化することを目的とする。
研究方法
1.個票を用いた全身性強皮症の後ろ向き大規模疫学調査
2.アンケート方式による小児期発症全身性強皮症の全国疫学調査
3.アンケート方式による小児期発症限局性強皮症の全国疫学調査
4.重症型全身性強皮症早期例レジストリ研究
5.全身性強皮症の診療ガイドライン改訂
6.限局性強皮症・好酸球性筋膜炎・硬化性萎縮性苔癬の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインに関するアンケート調査
結果と考察
1.2003年度から2008年度までに特定疾患治療研究事業に登録された強皮症症例データを用いて、最新の強皮症の臨床疫学を明らかにするとともに、厚労省ICT・AI研究事業で構築した機械学習モデルを用いて予後因子の抽出を行った。2003年度から2008年度までに27,556例が登録され、このうち22,524例を対象に解析を行った。1999年度に登録された10,956例の強皮症患者を対象に解析が行われた調査と比較した。今後は、臨床経過を機械学習させることで、初診時の所見から症例をクラスタリングすることで、新たな予後因子の特定を進める。患者の予後を改善に資する成果が期待される。
2.本邦における小児期発症の全身性強皮症の有病率や臨床像、治療内容、予後を明らかにすることを目的にアンケート方式で全国規模の疫学調査を行った。疫学調査は患者数の把握を目的とした一次調査と臨床像の把握を目的とした二次調査の調査票を作成した。1次調査を全国3005箇所の医療機関に発送し、1842機関から回答があった。1次調査のうち有患者の200機関に2次調査を発送した。132例(女性78.0%)を解析対象とした。小児期発症例の成人への移行期医療の問題点などの検証、重症度分類・診療ガイドラインの改訂に重要な参考資料となりうる。
3.小児期発症の全身性強皮症の調査と同時にアンケート方式で小児期発症の限局性強皮症の全国規模の疫学調査を行った。有患者施設数は129施設、患者数は371例であった。2次調査の発送し、そのうち351例について回答があった。臨床像や治療内容について解析をすすめ、臨床像を明らかにする。
4.レジストリの登録システムおよび登録項目を作成し、福井大学で症例登録レジストリの倫理審査の承認を受け、症例登録を開始した。令和3年度より登録を開始し、可能であれば次年度以降も継続して登録症例を集積し、新規発症の全身性強皮症患者の治療による改善状況、病気の進行状況の把握、合併症、QOLの評価を行うことを検討する。令和4年12月までに87例の新規患者が登録されている。
5.平成28年に出版された全身性強皮症診療ガイドラインの改訂を行った。Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020に準拠し、クリニカルクエスチョン(CQ)を設定し、日本医学図書館協会に依頼し網羅的な文献検索を行い、CQに対する推奨文・推奨度・解説を作成した。推奨文・推奨度の決定は修正デルファイ法に基づいて行った。今後所要の手続きを経て全身性強皮症診療ガイドライン(2023年版〔予定〕)として刊行を予定している。新しいエビデンスに基づいた全身性強皮症診療ガイドラインの改訂により、診療レベルの向上が期待される。
6.本研究班班員の所属施設および関連病院に対して、限局性強皮症・好酸球性筋膜炎・硬化性萎縮性苔癬の診療ガイドラインに関するアンケート調査を行った。問題点の指摘を受け、次年度以降に全国規模のアンケート調査とその改訂について検討する。
結論
全身性強皮症の後ろ向き大規模疫学調査により、本邦の疫学データを示すことができる。また、小児期発症の全身性強皮症と限局性強皮症のアンケート方式の後ろ向き疫学調査を行うことで、両疾患の小児期発症例の特徴や問題点を明らかにでき、移行期医療に活用できると期待される。前向き研究としての重症型早期例疾患レジストリの構築により,今後患者データの活用の道を拓くことができると考えられる。ガイドラインの改訂については、全身性強皮症診療ガイドライン(2023年版〔予定〕)として刊行を予定しており、診療レベルの向上につながることが予想される。本研究班による研究全体を通して、本邦の患者像の実態解明とともに、患者の予後の改善に貢献できると期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
2024-04-11

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202211005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全身性強皮症のレジストリ構築を進めるとともに、過去に登録された症例の臨床的経過の解析を行い、成果がModern Rheumatology誌に掲載された (Utsunomiya et al. 2021)。
臨床的観点からの成果
全身性強皮症に対する新規治療薬が国内外にて次々に承認されており、診療ガイドラインやその他の普及活動を通じて、適正な診療が臨床現場で行われるようになり、疾患の予後改善に繋がることが期待される。
ガイドライン等の開発
全身性強皮症の診療ガイドラインの全面的な改訂を行なった。
その他行政的観点からの成果
全身性強皮症および限局性強皮症の小児発症例についての全国的な疫学調査を行い、その実態を本邦において初めて明らかにした。また、2003年から2008年までの全身性強皮症の臨床個人票を全国22,224例について解析し、本邦における全身性強皮症患者の実態を明らかにした。現在、論文投稿準備中である。
その他のインパクト
自己免疫疾患研究班と合同で、全身性強皮症の一般向けWEB講演会を2回開催した。令和3年度 1,724名、令和4年度 1,795名、合わせて3,519名の方にご視聴いただいた。

発表件数

原著論文(和文)
27件
原著論文(英文等)
168件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
ガイドライン作成 1件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
Web講演会 2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Watanabe A, Shima Y, Takahashi H, et al
Arm heating to relieve Raynaud's phenomenon in systemic sclerosis: A single-arm multicentre prospective clinical trial.
Modern Rheumatology , roac 116 , 1-7  (2022)
doi: 10.1093/mr/roac116
原著論文2
Utsunomiya A, Chino T, Hasegawa M, et al
The compound LG283 inhibits bleomycin-induced skin fibrosis via antagonizing TGF-β signaling.
Arthritis Research & Therapy , 24 (1) , 94-94  (2022)
doi: 10.1186/s13075-022-02773-2
原著論文3
Utsunomiya A, Hasegawa M, Oyama N, et al
Clinical course of Japanese patients with early systemic sclerosis: A multicenter, prospective, observational study.
Modern Rheumatology , 31 (1) , 162-170  (2021)
doi: 10.1080/14397595.2020.1751408
原著論文4
Shirai Y, Fukue R, Kuwana M, et al
Clinical relevance of the serial measurement of Krebs von den Lungen-6 levels in patients with systemic sclerosis-associated interstitial lung disease.
Diagnostics (Basel) , 11 (11) , 2007-2007  (2021)
doi: 10.3390/diagnostics11112007
原著論文5
Shirai Y, Kawami N, Kuwana M, et al
Use of vonoprazan, a novel potassium-competitive acid blocker, for the treatment of proton pump inhibitor-refractory reflux esophagitis in patients with systemic sclerosis.
Journal of Scleroderma and Related Disorders , 7 (1) , 57-61  (2022)
doi: 10.1177/23971983211021747
原著論文6
Yomono K, Kuwana M
Outcomes in patients with systemic sclerosis undergoing early versus delayed intervention with potential disease-modifying therapies.
Rheumatology (Oxford) , 61 (9) , 3677-3685  (2022)
doi: 10.1093/rheumatology/keab931
原著論文7
Isomura Y, Shirai Y, Kuwana M
Clinical worsening following discontinuation of tocilizumab in diffuse cutaneous systemic sclerosis: a single-centre experience in Japan.
Rheumatology (Oxford) , 61 (11) , 4491-4496  (2022)
doi: 10.1093/rheumatology/keac136
原著論文8
Kuwana M, Hasegawa M, Fukue R, et al
Initial predictors of skin thickness progression in patients with diffuse cutaneous systemic sclerosis: results from a multicentre prospective cohort in Japan.
Modern Rheumatology , 31 (2) , 386-393  (2021)
doi: 10.1080/14397595.2020.1784548
原著論文9
Utsunomiya A, Oyama N, Hasegawa M
Potential Biomarkers in Systemic Sclerosis: A Literature Review and Update.
Journal of Clinical Medicine , 9 (11) , 3388-3388  (2020)
doi: 10.3390/jcm9113388

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
202211005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,549,000円
(2)補助金確定額
8,549,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,584,667円
人件費・謝金 3,272,650円
旅費 201,020円
その他 521,739円
間接経費 1,972,000円
合計 8,552,076円

備考

備考
自己資金 3,076円

公開日・更新日

公開日
2024-01-17
更新日
-