先端技術(医・工・薬・ナノ)融合のインテリジェントナノDDS制御技術開発に基づく低侵襲血管内医療システム(分子標的医薬溶出・生体吸収性ステントetc)の創製と臨床応用

文献情報

文献番号
200912008A
報告書区分
総括
研究課題名
先端技術(医・工・薬・ナノ)融合のインテリジェントナノDDS制御技術開発に基づく低侵襲血管内医療システム(分子標的医薬溶出・生体吸収性ステントetc)の創製と臨床応用
課題番号
H19-ナノ・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
江頭 健輔(九州大学大学院 医学研究院 循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 市来 俊弘(九州大学大学院 医学研究院 寄付講座)
  • 戸高 浩司(九州大学病院 循環器内科)
  • 中野 覚(九州大学大学院 医学研究院 循環器内科学)
  • 的場 哲哉(九州大学病院 循環器内科)
  • 向井 靖(九州大学病院 循環器内科)
  • 片山 佳樹(九州大学 工学研究院 応用化学部門)
  • 高原 淳(九州大学先導物質化学研究所)
  • 川島 嘉明(愛知学院大学 薬学部)
  • 辻本 広行(ホソカワミクロン株式会社 美容科学研究所)
  • 山田 英(㈱アンジェスMG)
  • 上田 恭義(㈱カネカ 研究開発本部 フロンティアバイオ・メディカル)
  • 坂本 満(産業技術総合研究所 サステナブルマテリアル研究部門)
  • 佐藤 富雄(産業技術総合研究所 サステナブルマテリアル研究部門)
  • 板井 昭子(㈱医薬分子設計研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
46,434,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現行の薬剤溶出ステント(DES)には重要な安全性に関する懸念が存在することが明らかになった。本研究の目的は、これらの問題点を全て解決できる次世代製品として、ナノDDS制御機能を兼ね備えた低侵襲血管内医療システムを創製し臨床応用することである。
研究方法
先端的技術の融合によるイノベーションによって国際競争力を有する革新的低侵襲血管内医療システムを開発する。
1.生体完全吸収性ステントプラットホーム
2.生体吸収性ナノ粒子コーティング技術に基づくナノ粒子溶出ステント
3.間欠式パルス・インフュージョン・ナノ粒子DDSカテーテルの開発
結果と考察
1)Mg-Ca合金による生体完全吸収性ステントプラットホーム開発:
継続してMg-Ca合金を用いてを用いてパイプ標本の作製、レーザーカット、バルーンマウントなどを進めた。Mg-Ca合金ステントの製品化に向けてプロトタイプを作製することが出来た。実用化に向けての事前相談を実施し安全性試験の内容を検討している。
2)生体吸収性高分子ナノ粒子のコーティング技術の開発:
生体吸収性PLGAナノ粒子を電気工学的にコーティングする新技術を開発した。
スタチン封入ナノ粒子溶出DDSステントの有効性試験をブタ冠動脈モデルを用いて実施し、現行の薬剤溶出ステントの問題点(内皮再生不全、炎症、血栓)を克服できることが明らかにした。さらに、霊長類腸骨動脈モデルにおいても同様の成果が得られた。これらの成果を実用化するために、ライセンス業務ならびにステント製造会社との交渉が進んでいる。
3)間欠式パルス・インフュージョン・ナノ粒子DDSカテーテルの開発:物理的刺激(パルス)とナノDDS技術を組み合わせて、傷害血管壁にナノ粒子を送達することに成功した。ウサギ腸骨動脈モデルにおいて実行可能性試験を行い、(1)投与直後には血管壁全体にナノ粒子が送達されていること、(2)14日後にも血管壁(特に中膜平滑筋細胞)に停留すること、(3)血栓や傷害の亢進など安全性に関する懸念は認めなかったこと、などが明らかになった。今後、有効性試験を進める。
結論
日本発の独創的な生体吸収性Mg-Ca合金ステントプラットホームならびにナノ粒子溶出ステントの創製の基盤が出来た。ナノ医工薬学の先端技術融合によるイノベーションによって国際競争力を有する革新的低侵襲血管内医療システムを開発し、実用化を目指す。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200912008B
報告書区分
総合
研究課題名
先端技術(医・工・薬・ナノ)融合のインテリジェントナノDDS制御技術開発に基づく低侵襲血管内医療システム(分子標的医薬溶出・生体吸収性ステントetc)の創製と臨床応用
課題番号
H19-ナノ・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
江頭 健輔(九州大学大学院 医学研究院 循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 市来 俊弘(九州大学大学院 医学研究院 寄付講座)
  • 戸高 浩司(九州大学病院 循環器内科)
  • 中野 覚(九州大学大学院 医学研究院 循環器内科学)
  • 的場 哲哉(九州大学病院 循環器内科)
  • 向井 靖(九州大学病院 循環器内科)
  • 片山 佳樹(九州大学 工学研究院 応用化学部門)
  • 高原 淳(九州大学先導物質化学研究所)
  • 川島 嘉明(愛知学院大学 薬学部)
  • 辻本 広行(ホソカワミクロン株式会社 美容科学研究所)
  • 山田 英(㈱アンジェスMG)
  • 上田 恭義(㈱カネカ 研究開発本部 フロンティアバイオ・メディカル)
  • 坂本 満(産業技術総合研究所 サステナブルマテリアル研究部門)
  • 佐藤 富雄(産業技術総合研究所 サステナブルマテリアル研究部門)
  • 板井 昭子(㈱医薬分子設計研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現行の薬剤溶出ステント(DES)には重要な安全性に関する懸念が存在することが明らかになった。本研究の目的は、これらの問題点を全て解決できる次世代製品として、ナノDDS制御機能を兼ね備えた低侵襲血管内医療システムを創製し臨床応用することである。ナノ医工薬学の先端技術融合によるイノベーションによって国際競争力を有する革新的低侵襲血管内医療システムを開発し、実用化を目指す。
研究方法
先端的技術の融合によるイノベーションによって国際競争力を有する革新的低侵襲血管内医療システムを開発する。
1.生体完全吸収性ステントプラットホーム
2.生体吸収性ナノ粒子コーティング技術に基づくナノ粒子溶出ステント
3.間欠式パルス・インフュージョン・ナノ粒子DDSカテーテルの開発
結果と考察
1)Mg-Ca合金による生体完全吸収性ステントプラットホーム開発:
製造特許を有するMg-Ca合金を用いて生体吸収性ステントを開発した。動物に植え込み、生体吸収されることを確認した。Mg-Ca合金を用いてパイプ標本の作製、レーザーカット、バルーンマウントなどを進めた。Mg-Ca合金ステントの製品化に向けてプロトタイプを作製することが出来た。先端医療開発特区(スーパー特区)の制度を活用し、承認申請に必要な安全性試験の内容を相談した。
2)生体吸収性高分子ナノ粒子のコーティング技術の開発:
ナノ粒子を電気工学的にコーティングする新技術を開発した。スタチン封入ナノ粒子溶出DDSステントの有効性試験を実施し、現行のDESの問題点(内皮再生不全、炎症、血栓)を克服できることが明らかにした。これらの成果を実用化するために、ライセンス業務ならびにステント製造会社との交渉が進んでいる。
3)間欠式パルス・インフュージョン・ナノ粒子DDSカテーテルの開発:
本システムは、ナノ粒子製剤のナノDDS機能とパルスによる機械的DDSの融合によるダブルDDSとして機能する点が特徴である。本システムを用いることによって、血管傷害後の血管壁にナノ粒子を効果的かつ安定して送達することが出来る。ウサギ腸骨動脈モデルにおいて実行可能性試験を実施した。今後、有効性試験を進める。
結論
日本発の独創的な医療機器(Mg-Ca合金による生体吸収性ステントプラットホーム、生体吸収性ナノ粒子溶出ステント、間欠式パルスインフュージョン・ナノ粒子DDSカテーテル)の創製の基盤が出来た。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200912008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本事業によって、Mg-Ca合金による生体吸収性ステントプラットホームや生体吸収性ナノ粒子溶出ステント、間欠式パルスインフュージョンナノ粒子DDSカテーテルが「より優れた」「安全性の高い」再狭窄抑制効果を発揮する次世代医療機器となる可能性が示された。先端医療開発特区(スーパー特区)の制度を活用し、承認申請に必要な安全性試験に関する相談やデバイス企業との交渉が進んでいる。日本発の独創的な医療機器として実用化できるよう研究開発事業を継続して推進したい。
臨床的観点からの成果
本研究事業によって、日本発の独創的な医療機器(Mg-Ca合金による生体吸収性ステントプラットホーム、生体吸収性ナノ粒子溶出ステント、間欠式パルスインフュージョン・ナノ粒子DDSカテーテル)の創製の基盤が出来た。特に、ヒトの病態に近似する霊長類モデルを用いて得られた成果の臨床的意義は大きい。本成果が実用化されれば、動脈硬化性疾患(再狭窄、心筋梗塞、脳卒中)に対する安全安心の革新的低侵襲ナノ治療が確立できる。
ガイドライン等の開発
該当無し
その他行政的観点からの成果
本研究事業は九州大学の先端医療開発特区(スーパー特区)の分担課題として採択された。その制度を活用し、安全性試験の内容の事前相談ができた。
超高齢化社会への道を進む我が国において動脈硬化性疾患は死因と寝たきりの原因の主たる比率を占めている。本事業の成果が実用化されれば、患者のQOL・生命予後改善、早期社会復帰を実現する高効果・低副作用の低侵襲医療が達成され、医療費の削減と適正化をもたらされる。また、新しい医療産業がもたらされ日本の産業の競争力強化ならびに新たな雇用の創出への貢献も大きい。
その他のインパクト
新聞報道:9件
第15回日本血管生物医学会学術大会(平成19年11月29-30日)を大会長として九州大学百年講堂において開催:その際、本研究事業の成果を公開した。
特許出願・公開・登録:9件(うち国内2件、国外7件)
平成18年度 文部科学大臣表彰科学技術賞受賞

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
24件
その他論文(和文)
23件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計11件
その他成果(特許の取得)
0件
うち国内のみ3件、国外8件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
10件
新聞報道9件、学会開催1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takewaki H, Egashira K, Kimura S, et al.
Blockade of Monocyte Chemoattractant Protein-1 by Adenoviral Gene Transfer Inhibits Experimental Vein Graft Neointimal Formation.
J Vasc Surg. , 45 (6) , 1236-1243  (2007)
原著論文2
Nakano K, Egashira K, Ohtani K, et al.
Catheter-based adenovirus-mediated anti-monocyte chemoattractant gene therapy attenuates in-stent neointima formation in cynomolgus monkeys.
Atherosclerosis. , 194 (2) , 309-316  (2007)
原著論文3
Egashira K, Nakano K, Ohtani K, et al.
Local Delivery of anti-monocyte chemoattractant protein-1 by gene-eluting stents attenuates in-stent stenosis in rabbits and monkeys.
Artemoscler Thromb Vasc Biol. , 27 (12) , 2563-2568  (2007)
原著論文4
Nakano K, Egashira K, Ohtani K, et al.
Azelnidipine Has Anti-atherosclerotic Effects Independent of its Blood Pressure- Lowering Actions in Monkeys and Mice.
Atherosclerosis. , 196 , 172-179  (2008)
原著論文5
Egashira K, Suzuki JI, Ito H, et al.
Long-term follow up of initial clinical cases with NF-kappaB decoy oligodeoxynucleotide transfection at the site of coronary stenting.
J Gene Med. , 10 (7) , 805-809  (2008)
原著論文6
Kimura S, Egashira K, Nakano K, et al.
Local Delivery of Imatinib Mesylate (STI571) Incorporated Nanoparticle Ex Vivo Suppresses Vein Graft Neointima Formation.
Circulation. , 118 , 65-70  (2008)
原著論文7
Koga J, Egashira K, Matoba T, et al.
Essential Role of Angiotensin II Type 1a Receptors in the Host Vascular Wall, but Not the Bone Marrow, in the Pathogenesis of Angiotensin II–Induced Atherosclerosis.
Hypertens Res. , 31 (9) , 1791-1800  (2008)
原著論文8
Nakano K, Egashira K, Masuda S, et al.
Formulation of nanoparticle-eluting stents by a cationic electrodeposit coating technology: Efficient and safe nano-drug delivery via bioabsorbable polymeric nanoparticle-eluting stents in porcine coronary arteries.
J Am Coll Cardiol: Cardiovascular Intervention. , 2 (4) , 277-283  (2009)
原著論文9
Koga JI, Matoba T, Egashira K, et al.
Soluble Flt-1 Gene Transfer Ameliorates Neointima Formation After Wire Injury in flt-1 Tyrosine Kinase-Deficient Mice.
Arterioscler Thromb Vasc Biol. , 29 (4) , 458-464  (2009)
原著論文10
Kubo M, Egashira K, Inoue T, et al.
Therapeutic Neovascularization by Nanotechnology-Mediated Cell-Selective Delivery of Pitavastatin into the Vascular Endothelium.
Atheroscler Thromb Vasc Biol. , 29 , 796-801  (2009)
原著論文11
Kimura S, Egashira K, Chen L, et al.
Nanoparticle-Mediated Delivery of Nuclear Factor-κB Decoy Into Lungs Ameliorates Monocrotaline-Induced Pulmonary Arterial.
Hypertension. , 53 (5) , 877-883  (2009)
原著論文12
Nakano K, Egashira K, Masuda S, et al.
Development of a novel bioabsorbable polymeric nanoparticle drug or gene eluting stent by electro-deposit nanoparticle-coating technology.
Jpn J Intervent Cardiol. , 22 (3) , 201-210  (2007)
原著論文13
Oda S, Nagahama R, Nakano K, et al.
Nanoparticle-Mediated Endothelial Cell-Selective Delivery of Pitavastatin Induces Functional Collateral Arteries (Therapeutic Arteriogenesis) in a Rabbit Model of Chronic Hindlimb Ischemia.
J Vasc Surg , 52 (2) , 412-420  (2010)
原著論文14
Chen L, Nakano K, Kimura S, et al.
Nanoparticle-Mediated Delivery of Pitavastatin Into Lungs Ameliorates the Development and Induces Regression of Monocrotaline-Induced Pulmonary Artery Hypertension.
Hypertension. , 57 (2) , 343-350  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-