新規磁性薬剤化合物の画像診断への応用

文献情報

文献番号
200912005A
報告書区分
総括
研究課題名
新規磁性薬剤化合物の画像診断への応用
課題番号
H19-ナノ・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
石川 義弘(横浜市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 江口 晴樹(横浜市立大学 大学院医学研究科 )
  • 南本 亮吾(横浜市立大学 大学院医学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
34,107,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
磁性物質は無機化合物というのが旧来の常識であった。ところが、エレクトロニクスの先端分野では「磁性を持った有機化合物」が多数研究・報告されている。これらはまだ医療に応用されていない。我々は(株)IHIの基盤研究所との共同研究から、超伝導などの金属材料の研究に用いられる物理理論(第一原理解析方法)の応用により、「一般化合物に磁性を見つける方法」を開発した。そこで本手法を利用することにより、一般化合物の中から磁性化合物を選定し、MRにおける造影剤として開発することが本申請の目的である。
研究方法
我々の特許技術である第一原理解析法による磁性予測技術を用いて、一般化合物の磁性を予測し、磁性の存在が予測された化合物について、多種類の培養癌細胞において細胞増殖抑制効果があるかを検討した。またその磁性を設計できるかを様々な方法で検討した。さらに癌動物モデルにおいて、抗癌剤として機能するかどうかを検討するとともに、永久磁石を用いて抗癌作用が誘導でき、かつ、MRIにおける造影剤として機能する可能かを検討した。
結果と考察
本化合物は、マグネタイドに匹敵する磁性強度を有し、同時に癌細胞増殖抑制効果を有した。つまり磁性抗癌剤であった。培養癌細胞においては、市販のボタン磁石や棒磁石、さらに電磁石によって抗癌作用を誘導することが可能であった。さらにマウス尾部にメラノーマや肉腫を移植し、癌モデル動物として使用した。尾部や臀部における腫瘍に磁石をあてることにより、抗癌剤を癌局所に誘導して退縮させることが可能であり、さらに誘導した抗癌剤をMRIによって尾部や臀部において集積確認をすることが出来た。また化合物における磁性設計も可能であった。
結論
我々の研究成果から、第一原理測定法を用いて有機磁性体を同定することが可能であること、またそのような有機磁性体は有機物質としての薬理学的作用を示すことができるのみならず、磁場による誘導が可能であり、さらにMR撮影においては造影剤として機能する可能性が示された。とりわけ抗癌剤においてその効果が確認されたことから、今後の抗癌剤治療において、誘導を造影剤としてMRIで定量出来る可能性が示され、新規磁性化合物合成も含めて幅広い応用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200912005B
報告書区分
総合
研究課題名
新規磁性薬剤化合物の画像診断への応用
課題番号
H19-ナノ・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
石川 義弘(横浜市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 江口 晴樹(横浜市立大学 大学院医学研究科 )
  • 南本 亮吾(横浜市立大学 大学院医学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
磁性物質は無機化合物というのが旧来の常識であった。ところが、エレクトロニクスの先端分野では「磁性を持った有機化合物」が多数研究・報告されている。これらはまだ医療に応用されていない。我々は(株)IHIの基盤研究所との共同研究から、超伝導などの金属材料の研究に用いられる物理理論(第一原理解析方法)の応用により、「一般化合物に磁性を見つける方法」を開発した。そこで本手法を利用することにより、一般化合物の中から磁性化合物を選定し、MRにおける造影剤として開発することが本申請の目的である。
研究方法
我々の特許技術である第一原理解析法による磁性予測技術を用いて、一般化合物の磁性を予測し、磁性の存在が予測された様々な化合物について物理的な磁性測定をおこなった。これにより同定された化合物について、多種類の培養癌細胞において抗がん効果を検討した。またその薬理学的効果が磁場によって誘導できるかを検討した。さらに癌動物モデルにおいて、磁場による抗癌剤の誘導とMRIにおける造影機能を多種類部位で検討した。また温熱機能についても検討した。
結果と考察
磁性抗がん剤は、マグネタイドに匹敵する磁性強度を有し、同時に癌細胞増殖抑制効果を有し、かつ造影機能と発熱機能を示した。培養癌細胞においては、抗がん作用が磁場で誘導され、MRIで画像として確認され、さらに交流磁場付加によって発熱した。とくに動物組織を用いたファントム実験では容量依存性にシグナルの増強がみられた。
結論
我々の研究成果から、第一原理測定法を用いて有機磁性体を同定することが可能であること、またそのような有機磁性体は有機物質としての薬理学的作用を示すことができるのみならず、磁場による誘導が可能であり、さらにMR撮影において造影剤として機能すること、さらに交流磁場印加で発熱作用を示す可能性が示された。今後の抗癌剤治療において、治療効果の磁場による誘導のみならず、誘導を造影剤としてMRIで定量出来る可能性が示され、幅広い応用が期待される。より安全で安心のがん治療を開発できる可能性が強く示された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200912005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
有機磁性体はエレクトロニクス分野での開発研究が進んでいるが、医学応用は極めて遅れている。本研究では、エレクトロニクスや金属材料分野における産業技術を医療用化合物に利用して、有機磁性体抗がん化合物の開発をおこない、MRIの造影機能を持つ抗がん剤化合物として開発した。本開発研究は医学と物理工学との学際的な共同開発研究であり、今後の医学研究から画期的な技術の開発のモデルとなりうると考えられる。
臨床的観点からの成果
抗がん剤の副作用は、がん局所に抗がん剤が十分に届かないか、あるいはどれだけ届いたかを判断する方法が無いために起こるものが大半である。現在では身長と体重に基づいて投与量が決定されるが、個人間でのばらつきが大きく、これが抗がん剤治療の問題点となっている。本事業で研究開発された磁性抗がん剤は、抗がん作用を示すだけでなくMRIで定量される性質を持つ。このような磁性抗がん剤はがん局所への移行がMRIで確認でき、今後のがん治療に大きなインパクトを与える可能性がある。
ガイドライン等の開発
これまでの身長と体重から投与量を決定する抗がん剤治療から、MRIを用いて抗がん剤の投与量を決定する方法に、ガイドライン等が変わる可能性を示すことができた。がん局所や肝臓や腎臓への移行がわかることから、オーダーメード的に抗がん剤の投与量を、各人の特性に合わせて調節できる抗がん剤治療方法が開発されるかもしれない。
その他行政的観点からの成果
高齢者の増加とともにがん患者の数も増大している。がん治療において安全で安心できる新規薬剤を開発することは、高齢化社会を迎えているわが国のみでなく、世界の様々な国において必要なことと考えられる。抗がん剤の副作用の軽減により、国民の福祉の観点からも重要な進歩になりうると考えられるとともに、現在副作用が原因となる様々な症状や病態を予防できるようになるため、医療費の軽減にもつながると考えられる。
その他のインパクト
今後多数の医療分野において応用が考えられる磁性医薬品に関して、わが国独自技術によるため様々な知的基盤の整備や標準化作業が、わが国においてリードできる可能性を持つ。このため単なるMRIの造影剤の開発にとどまらず、わが国の多岐にわたる産業界において世界をリードする世界標準となりうる可能性を持つ。日経産業新聞、TVK等で取上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
10件
主論文は特許出願終了待ち。関連論文を含む。
その他論文(和文)
4件
紀要など
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
2件
病態生理学会など
学会発表(国際学会等)
3件
国際磁性磁場学会など
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計17件
その他成果(特許の取得)
0件
MRIシステム(国内特許出願)など。出願準備中複数あり
その他成果(施策への反映)
1件
横浜市立大学先端医学研究センタープロジェクト
その他成果(普及・啓発活動)
3件
学際的共同研究および医学工学連携の実例。新聞やTVでの報道あり。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Eguchi H, Iwatsubo K, and Ishikawa Y
Isoform-selective regulation of adenylyl cyclase by forskolin derivatives: Prediction of selectivity by computer-based analysis.
Letters in Drug Design & Discovery , 4 , 434-441  (2007)
原著論文2
Jiao Q, Bai Y, Akaike T, Takeshima H, et al.
Sarcalumenin is essential for maintaing cardiac function during endurance exercise training. 
Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol. , 297 , 576-582  (2008)
原著論文3
Shimura M, Minamisawa S, Takeshima H, Jiao Q et al.
Sarcalumenin alleviates stress-induced cardiac dysfunction by improving Ca2+ handling of the sarcoplasmic reticulum.
Cardiovasc Res. , 77 , 362-370  (2008)
原著論文4
Okumura S, Tsunematsu T, Bai Y, Jiao Q,et al.
Type 5 adenylyl cyclase plays a major role in stabilizing heart rate in response to microgravity induced by parabolic flight.
J Appl Physiol. , 105 , 173-179  (2008)
原著論文5
Yokoyama U, Minamisawa S, Hong Q, Akaike T. et al.
Epac1 is upregulated during neointima formation and promotes vascular smooth muscle cell migration.
Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol. , 295 , 1547-1555  (2008)
原著論文6
Yokoyama U, Minamisawa S, Quan H, Akaike T, et al.
PGE2-activated Epac promotes neointimal cushin formation of the rat ductus arteriosus by a process distinct from that of PKA.
J. Biol. Chem. , 283 , 28702-28709  (2008)
原著論文7
Sato M, Honda T, Jiao Q, Kurotani R, et al.
An involvement of activator of G protein signaling 8 on hypoxia-induced apoptosis of cardiomuyocytes and its interaction with connexin 43.
J. Biol. Chem. , 284 , 31431-31440  (2009)
原著論文8
Akaike T, Jin MH, Yokoyama U, Izumi-Nakaseko H. et al.
T-type Ca2+ channels promote oxygenation-induced closure of the rat ductus arteriosus not only by vasoconstriction but also by neointima formation.
J. Biol. Chem. , 284 , 24025-24034  (2009)
原著論文9
Baljinnyam E, Iwatsubo K, Kurotani R, Wang X, et al.
Epac Increases Melanoma cell migration by Heparan Sulfate-Related Mechanism.
Am. J. Physiol. Cell Physiol. , 297 , 802-813  (2009)
原著論文10
Shimada C, Kurotani R, Fukumura H, Ono S, et al.
Drug delivery system using magnetic materials.
Jap J Pathophysiology  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-