栄養・食事関連メディア情報の科学的評価及び国民への影響の分析のための研究

文献情報

文献番号
202209051A
報告書区分
総括
研究課題名
栄養・食事関連メディア情報の科学的評価及び国民への影響の分析のための研究
課題番号
22FA1022
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
村上 健太郎(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 麻衣(医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
  • 奥原 剛(東京大学 医学部附属病院)
  • 片桐 諒子(医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
  • 大田 えりか(伊東 えりか)(聖路加国際大学大学院 看護系研究科 国際看護学)
  • 千葉 剛(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所)
  • 西田 優紀(東京医科歯科大学 M&Dデータ科学センター生物統計学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,920,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度は以下の三つを目的として研究を進めた。
【研究1】GoogleトレンドとGoogle検索を用いた系統的な抽出方法に基づいて特定された、日本語で書かれた食事と栄養に関するオンライン情報を記述する。
【研究2】一般の日本人および管理栄養士など栄養・食事関連の専門職を対象として、栄養・食事関連メディア情報への接し方および接し方に関連する要因を検討することを目的として、オンライン調査を実施する。
【研究3】高血圧、栄養素、食品に関連して、人々がTwitterで曝露している情報のテーマ、発信元のユーザー属性を分析する。
研究方法
【研究1】Googleトレンドを用いて、日本語で書かれた食事や栄養に関するオンライン情報(ブログなど)を抽出するため、それらに関連するキーワードを特定した。このプロセスには、1)638のシードターム(もととなる用語)の特定、2)約1500組の「検索キーワード」と「関連キーワード」(注:どちらもGoogleトレンド上の呼び名)の特定、3)そのうち上位約10%にあたる160組の「検索キーワード」と「関連キーワード」の特定、4)107の「検索に用いるキーワード」の特定が含まれる。その後、Google検索を用いて、関連するオンライン情報を抽出した。
【研究2】20~79歳の一般の日本人および管理栄養士など栄養・食事関連の専門職を対象として、オンライン質問票調査を実施した。
【研究3】2022年1月1日から2022年12月31日までの間に、合計147,898件の日本語で書かれたツイートを抽出した。少なくとも1つのリツイートを有する2347件のツイートを、食品群、栄養素、ユーザー属性、テーマのカテゴリーに手動で分類した。各カテゴリーにおけるツイート数、リツイート数、テーマの割合を計算した。
結果と考察
【研究1】今回検討した情報(コンテンツ、n=1703)は、107個のキーワードに基づく検索をもとに抽出されたものである。コンテンツのなかで最も多かったテーマは「食品・飲料」(22.9%)で、「体重管理」(21.5%)、「健康効果」(15.3%)、「健康的な食事」(13.8%)と続いた。主な発信者は、「IT企業・マスメディア」(27.8%)、「食品メーカー」(14.5%)、「その他」(13.9%)、「医療機関」(12.6%)の順であった。編者または著者の存在を明示しているコンテンツは半数以下(46.4%)であった。一方、半数以上のコンテンツにおいて1種類以上の広告が掲載されていた(57.7%)。また、引用文献があるコンテンツは4割であった。コンテンツのテーマや発信者は、編者または著者の存在を明示していることや広告が付随していること、参考文献の引用と統計学的に有意に関連していた。特に、体重管理をテーマとしたコンテンツは、編者や著者の存在の明示(57.9%)、広告の付随(74.6%)が多い一方で、参考文献の引用(35.0%)は少なかった。また、医療機関からのコンテンツは、引用文献が少なかった(29.0%)。本研究は、日本語で書かれたオンラインの食事・栄養関連情報におけるオーサーシップ、利益相反(広告)、科学的信頼性に関して懸念を抱かせるものである。
【研究2】予定どおり6600人から回答を得られた。今後は、一般集団およびそれぞれの栄養・食事関連の専門職における、栄養・食事関連メディア情報の主要な情報源およびそれへの信頼度を記述したうえで、その差異を検討する予定である。
【研究3】89.8%(2107ツイート)が食品について言及しており、17種類の食品群に分類された。最も多く言及されたのは、塩を含む「調味料・香辛料」で64.4% (n=1356)であり、次いで「野菜」、「果物」の順に多い。栄養素は19種類挙げられ、中でもカリウムが24.5% (n=132)と最も多い割合となった。最終サンプルのうち、21.2% (n=549)が血圧を下げるために塩分摂取を推奨しており、誤情報が観察された。医師のツイートでは75.0% (n=21)が高血圧対策に減塩が有効であると言及していたが、「健康・ダイエット・美容関連ユーザー」のツイートでは32.2% (n=73)、「その他のユーザー」のツイートでは25.9% (n=429)、「栄養士・管理栄養士」のツイートでは23.5% (n=4)が高血圧に対する減塩の有効性を否定していた。高血圧の減塩に関する誤情報は、減塩に関するエビデンスに基づいたツイートよりもリツイート数が多く、自称健康専門家を中心に投稿され、広く拡散されていた。
結論
研究1と3で構築した方法論をもとに、次年度は幅広いメディアの食事・栄養関連情報の分析を行う。また、研究2で得られたデータをもとに、栄養・食事関連メディア情報への接し方とそれに関連する要因を明らかにする。

公開日・更新日

公開日
2023-07-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202209051Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,996,000円
(2)補助金確定額
8,996,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,428,908円
人件費・謝金 924,886円
旅費 150,546円
その他 4,415,660円
間接経費 2,076,000円
合計 8,996,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-08-29
更新日
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