脳卒中・循環器病のEvidence-based policy makingの推進に関する研究

文献情報

文献番号
202209044A
報告書区分
総括
研究課題名
脳卒中・循環器病のEvidence-based policy makingの推進に関する研究
課題番号
22FA1015
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
飯原 弘二(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 邦宏(独立行政法人国立循環器病研究センター・研究開発基盤センター 予防医学・疫学情報部 EBM・リスク情報室)
  • 尾形 宗士郎(独立行政法人国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部)
  • 清重 映里(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 予防医学疫学情報部)
  • 堀江 信貴(広島大学 脳神経外科)
  • 松丸 祐司(虎の門病院 脳神経血管内治療科)
  • 野口 輝夫(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 病院)
  • 田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
  • 猪原 匡史(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 病院 脳神経内科)
  • 平松 治彦(国立循環器病研究センター 情報統括部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
4,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
循環器病による死亡は日本の死因の24.8%を占め、今後高齢化の影響でさらに増加すると言われている。循環器病対策推進基本計画は2040年までに健康寿命の延伸と年齢調整死亡率の減少を目指しており、それに応じて各都道府県は循環器病対策の計画策定、実行、定期的な評価・見直しを求められた。健康寿命延伸・医療費抑制の医療政策立案のためには、循環器病死亡の将来動向を精緻に予測することが必要である。加え、現在の循環器病対策の計画状況が循環器病アウトカム改善のエビデンスに基づいていることが望ましい。本研究では、都道府県毎の最適なCVD死亡数減少のマイルストーン設計に役立てるため、都道府県毎に将来の循環器病(CVD)死亡数を高精度に予測することを目的として、CVD death projections models(予測ツール)を開発する。さらにエビデンスに基づく循環器病対策推進のため、現在の各都道府県の循環器病対策推進基本計画に論文・ガイドライン等で確立されたエビデンス項目が含まれているか、エビデンステーブルを作成し現状の計画と比較して、把握・整理することを目的とした。
研究方法
循環器病将来死亡予測モデルの作成には、日本居住の30歳以上の男女を対象とし、性別・47都道府県別・5歳刻みの年齢別の人口データ(観察値:人口動態統計または国勢調査の1995-2019年、予測値:国立社会保障・人口問題研究所の2020-2040年)と冠動脈疾患死亡数データ・脳卒中死亡数データ(人口動態調査1995-2019年の死因観察値[I20-24、I25、I60-69])を用いた。死亡数トレンドにおける年齢・時代・世代の効果及びそれらの時間変化を考慮可能なBAPCモデルを使用し、2040年までの脳卒中死亡数の予測モデルを都道府県毎に構築した。加え、日本の基準人口モデル2015年版を用い年齢調整死亡率を男女及び都道府県別に算出した。全国値はこれら算出された47都道府県の集計値を用いて算出した。
 またエビデンステーブルの作成のため、まず循環器病対策推進基本計画のエビデンスとなる項目の抽出を検討した。循環器病、冠動脈疾患及び脳卒中について、死亡との頑健な関連のある要因(人口構造、循環器病死亡率、医療プロセス指標[覚知―病院到着時間等]、急性期医療の病院構造指標[専門医数、QIスコア、ガイドライン推奨治療の実施等])を、患者の疾患進行段階(予防、早期発見、急性期治療、退院時の急性期治療、慢性期、構造指標、QOL)に応じ、循環器病、冠動脈疾患及び脳卒中の死亡をそれぞれアウトカムとした既報論文から抽出した。次に、都道府県の循環器病対策基本計画を各都道府県のホームページから収集し、既報論文より抽出したエビデンス項目に該当するもの毎にエビデンステーブルにまとめ、47都道府県の遵守率の代表値(中央値[四分位数範囲(IQR)])を求めて、エビデンスに基づいた計画が立案されているか検討した。
結果と考察
2040年までの循環器病将来死亡予測は全国とほとんどの都道府県で減少すると予測され、将来循環器病予測死亡数は地域差があることも明らかとなった。循環器病将来死亡数の減少が推定された理由に、リスクファクターの改善(血圧値[SBP]、喫煙率、食塩摂取量の減少)やエビデンスに基づく医療実施の普及、手術技術向上が貢献したと考えられる。また結果で見られた地域差も、リスクファクターの地域差に起因していると考えられた。
また、各都道府県の循環器病対策基本計画のエビデンス遵守率をエビデンステーブルを作成し調査した結果、47都道府県の中央値[IQR]は、循環器病疾患、CHD、脳卒中それぞれで、34.5% [29.3%, 37.9%]、7.9% [6.6%, 7.9%]、8.1% [6.5%, 8.1%]であり、各都道府県の循環器病対策基本計画はエビデンスに基づいた計画が不十分であることが明らかとなった。各都道府県の目標とする第一次循環器病対策推進計画の年齢調整死亡率の減少率は予測モデルで得られた減少率よりも目標が高いため、目標達成のためにエビデンスに基づいた循環器病対策基本計画を立案し、実施することが重要と考える。
結論
本研究で得られた循環器病将来死亡予測モデルでの結果は、医療政策立案者がより良い医療政策を提案することに役立ち、加え地域差の是正に有用であると考える。また、作成した各都道府県の循環器病対策基本計画のエビデンステーブルは、各都道府県の循環器病対策基本計画の妥当性検証が可能と考えられる。循環器病対策の計画策定、実行、定期的な評価・見直しを、よりエビデンスレベル高く実現可能なものとして行うことが可能となり、都道府県の目標とする第一次循環器病対策推進計画の年齢調整死亡率の減少率の達成が期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-07-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-07-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202209044Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,000,000円
(2)補助金確定額
6,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 226,127円
人件費・謝金 0円
旅費 404,775円
その他 3,985,098円
間接経費 1,384,000円
合計 6,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-09-12
更新日
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