医薬品等の安全性評価を目的とした新規発がん物質予測法の開発

文献情報

文献番号
200911020A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品等の安全性評価を目的とした新規発がん物質予測法の開発
課題番号
H21-生物資源・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 匡史(独立行政法人国立国際医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 石坂 幸人(独立行政法人国立国際医療研究センター)
  • 松田潤一郎(独立行政法人医薬基盤研究所)
  • 津田 洋幸(名古屋市立大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ヒトがんの発生原因の約80%は環境中に存在する化学物質であるといわれており、医薬品、農薬さらには食品に含まれる化学物質がどの程度ヒトのがん発生に関わっているかを明らかにすることは、医学的にもまた社会的にも極めて重大な課題である。本研究では、ヒトゲノム中に散在するレトロトランスポゾンであるLINE1に注目し、ゲノムの不安定化を誘発するLINE1の動きを生体レベルでモニターできるトランスジェニック(Tg)マウスを樹立し、新規発がん物質予測法を開発する。
研究方法
 LINE1の内在性プロモーターである5’UTRの下流にORF1及びORF2、その下流にリポーター遺伝子であるEGFP cDNA の発現ユニットが逆向に挿入されている導入遺伝子を構築し、定法に従いTgマウスを作成した。L1-RTP TgマウスにDMBA/TPAを塗布し、皮膚の腫瘍を誘発した。腫瘍におけるL1-RTPの関与を明らかにするモデルとして、Cre/loxPシステムを用いて活性型HrasまたはKrasが誘導されるTgラットを樹立し、ヒト膵管がんモデルとしての有用性を評価した。
結果と考察
 内在性プロモーター型L1-RTP Tgマウスを16系統樹立し、新規発がん物質評価系モデルマウスとして、実験動物研究資源バンクのホームページ上に公開した。L1-RTP TgマウスにDMBA/TPA誘発皮膚がんを作成し、解析し得た9個の腫瘍の内、5例でL1-RTPが検出された。Cre/loxPシステムを用いた活性型HrasまたはKrasが誘導されるTgラットは、膵管に由来するヒトに類似した膵管がんが発生することから、ヒト膵がんモデルとして有用であることを明らかにした。本年度、L1-RTP Tgマウスを用い、DMBA/TPA誘発皮膚がんにおいてL1-RTPが検出され、発がんにおけるL1-RTP関与の可能性が強く示唆された。次年度以降、樹立したTgマウスを用いて、L1-RTPの発癌における役割を明らかにすると共に、各種がん原物質を投与し、発がん物質予測法としての有用性を評価していく予定である。
結論
 L1-RTP Tgマウスは、レトロトランスポジションが誘発するエピジェネテイックな変化から恒常的なゲノム構造異常誘発過程の評価系でもあるため、発がん物質の評価だけでなく、これら化合物の発がん機序の解明に有用なツールと考えられる。さらに、DMBA/TPAによる二段階発がん過程で、腫瘍中にL1-RTPが誘導されることを認めたため、発がんプロモーターの作用を明らかにするツールとしても期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-12-01
更新日
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