文献情報
文献番号
200911017A
報告書区分
総括
研究課題名
創薬基盤型バイオイメージングに向けたヒトがん細胞株のSCIDマウス体内動態と細胞傷害感受性のカタログ化
課題番号
H20-生物資源・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
村上 孝(自治医科大学 分子病態治療研究センター バイオイメージング研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
6,826,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
発生起源によって異なる特性を有するヒトがん細胞において、小動物モデル個体においてもそれら固有のがん進展状態が模倣されるとともに薬効等の評価試験に耐えうるモデルが創薬研究には求められている。さらに、新規化合物等のin vitroでの簡便な評価が可能であり、そこから一貫したモデル動物体内での薬効試験を可能にする細胞資源の利用が理想とされる。本研究では、簡便かつ高感度なルミネッセンス発光によるバイオイメージングによる創薬基盤を充実させることを目的に、1)ルシフェラーゼを発現するヒトがん細胞株のライブラリーを作製しながら免疫不全マウス体内における血行性転移の動態情報を充実させる。併せて、2)既存の化合物等への感受性をプロファイル化し、ヒトがん細胞に対する先端的医薬品開発の促進と支援に貢献することを目的としている。
研究方法
乳癌など、汎用性の高いヒトがん細胞株を細胞バンク等から入手し、pMSCV-luc発現ベクターをトランスフェクションし、ルシフェラーゼ(Photinus pyralis)を安定発現するヒトがん細胞株を作製した。超音波解析装置のガイド下にNOD/SCIDマウスの左心室腔内へ樹立したルシフェラーゼ発現がん細胞株を移植し、全身散布による主要臓器(肝臓、肺、脳など)への血行性転移について発光イメージング解析を行った。作製された細胞について、文科省がん特定領域研究(化学療法基盤情報支援班)より分与された「標準阻害薬キット」(約300種類)を用いて阻害試験を実施した。
結果と考察
平成21年度では試験管内での評価が可能なルシフェラーゼ発現ヒトがん細胞株を25種類作製することができた。前年度までの実績を加えると約50種類に登る。作製されたがん細胞株において、転移能をもつ細胞では、がんの種類に依存した「臓器選択的な転移」が観察され、マウス体内においてもヒト固形がんの血行性遠隔転移の動態を模倣することが示唆された。また、試験管内におけるルシフェラーゼ発光を基盤としたアッセイ系の簡便性から、当該細胞資源は鋭敏なHigh Throughput Screening系として利用可能であり、がん種に依存した分子標的阻害の特徴付けができた。
結論
本研究による細胞資源とそのカタログは、「in vitro」から「in vivo」に統一されたがん細胞資源であり、創薬促進の観点から極めて「有効かつ高度化された情報」を提供するものと考えられた。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
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