弁膜症、狭心症等の循環器病診療の標準化・適正化に資する研究

文献情報

文献番号
202209030A
報告書区分
総括
研究課題名
弁膜症、狭心症等の循環器病診療の標準化・適正化に資する研究
課題番号
21FA1015
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
林田 健太郎(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊苅 裕二(東海大学 医学部 内科学系循環器内科学)
  • 天野 哲也(愛知医科大学 循環器内科)
  • 香坂 俊(慶應義塾大学 医学部 循環器内科)
  • 隈丸 拓(特定非営利活動法人 日本医療政策機構)
  • 渡邊 雄介(帝京大学 医学部 内科学講座循環器内科)
  • 大塚 俊昭(日本医科大学 医学部 衛生学公衆衛生学)
  • 猪原 拓(慶應義塾大学 医学部 循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦における循環器領域のカテーテル治療は実施施設の拡大に伴い飛躍的に施行件数が増加し、冠動脈疾患に対するPCIは年間 約25 万件、重症大動脈弁狭窄症に対するTAVIは年間約7000症例が施行されている。このようにカテーテル治療は「量」的には国内に十分に広く行き渡っているが、適応判断や術後成績に関しては施設間格差が認められており、「標準化」および「適切化」が課題である。本研究は、本邦における全国規模の冠動脈インターベンション登録システム(J-PCI)および多施設前向きTAVIレジストリ(OCEAN-TAVI)を基盤として、PCIおよびTAVI領域において適応適切性、手技内容、手技成績に関する現状把握および施設間格差の検証を目的とする。
研究方法
J-PCIおよびOCEAN-TAVIそれぞれのデータベースに関して、本研究の実施に対応できるように登録内容の整備を行なった。J-PCIおよびOCEAN-TAVIを用いて、本邦におけるPCIおよびTAVIに関する手技内容および手技成績をまとめた。PCIに関しては、CVITが中心となって策定した診療の質(Quality Measures: QM)の評価基準であるStandardized PCIを用いることにより、適応適切性を含めた診療の質の実態と地域格差を検証した。TAVIに関しては、適応適切性を評価する基準が存在しないため、循環器内科8名および心臓血管外科3名の計11名から構成されるワーキンググループを立ち上げ、TAVIに関する適応適切性基準の策定を行なった。
結果と考察
<結果>PCIに関しては、QMに定められている項目のうち、術前の抗血小板薬使用に関する達成率は高かったものの、橈骨動脈アプローチの実施率およびST上昇心筋梗塞におけるdoor to balloon time <90分以内の達成率に関してはまだ改善の余地があるものと評価された。待機症例における術前非侵襲的負荷検査の実施に関しては、施行率はまだ低く地域間格差も大きいことがわかった。
TAVIの適応適切性基準の策定に関しては、一般的に、外科手術リスクが高く、TAVIの手技リスクは低い場合には、併存疾患(冠動脈疾患の合併、併存弁膜症の存在を含む)の有無に関わらず、“Appropriate” と判断される傾向が強かった。一方で、“Rarely Appropriate” と判断されたクリニカルシナリオとしては、以下の特徴が挙げられた。
①大動脈弁狭窄症以外に期待余命1年未満の予後規定要因を有する症例
②フレイルが非常に強い(clinical frail scale が7以上)症例
③外科手術リスクが低い一方で、TAVI手技リスクが高い若年(75歳未満)症例
④TAVIに不適な解剖を有する大動脈二尖弁症例

<考察>PCIに関して、現段階での結論として、J-PCI レジストリが策定したQM項目の達成率は、術前の抗血小板薬使用以外は、地域間格差も大きく、改善の余地があることが示された。
TAVIの適応適切性に関しては、TAVI施行によっても予後の改善あるいはQOL改善に結び付かないと考えられる症例、あるいはTAVI施行よりも明らかに外科手術(SAVR: surgical aortic valve replacement)の方が望ましいと判断される症例においては、TAVIの適応適切性が低く評価されることが明らかとなった。
結論
本研究の取り組みにより、PCIおよびTAVIの本邦における課題が明確化し、診療の質向上に向けて役立たれることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-07-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202209030B
報告書区分
総合
研究課題名
弁膜症、狭心症等の循環器病診療の標準化・適正化に資する研究
課題番号
21FA1015
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
林田 健太郎(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊苅 裕二(東海大学 内科学系循環器内科学)
  • 天野 哲也(愛知医科大学 循環器内科)
  • 香坂 俊(慶應義塾大学 医学部 循環器内科)
  • 隈丸 拓(東京大学 医療品質評価学)
  • 渡邊 雄介(帝京大学 医学部内科学講座循環器内科)
  • 大塚 俊昭(日本医科大学 医学部 衛生学公衆衛生学)
  • 猪原 拓(慶應義塾大学 医学部 循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦における循環器領域のカテーテル治療は実施施設の拡大に伴い飛躍的に施行件数が増加し、冠動脈疾患に対するPCIは年間 約25 万件、重症大動脈弁狭窄症に対するTAVIは年間約7000症例が施行されている。このようにカテーテル治療は「量」的には国内に十分に広く行き渡っているが、適応判断や術後成績に関しては施設間格差が認められており、「標準化」および「適切化」が課題である。本研究は、本邦における全国規模の冠動脈インターベンション登録システム(J-PCI)および多施設前向きTAVIレジストリ(OCEAN-TAVI)を基盤として、PCIおよびTAVI領域において適応適切性、手技内容、手技成績に関する現状把握および施設間格差の検証を目的とする。
研究方法
J-PCIおよびOCEAN-TAVIそれぞれのデータベースに関して、本研究の実施に対応できるように登録内容の整備を行なった。J-PCIおよびOCEAN-TAVIを用いて、本邦におけるPCIおよびTAVIに関する手技内容および手技成績をまとめた。PCIに関しては、CVITが中心となって策定した診療の質(Quality Measures: QM)の評価基準であるStandardized PCIを用いることにより、適応適切性を含めた診療の質の実態と地域格差を検証した。TAVIに関しては、適応適切性を評価する基準が存在しないため、循環器内科8名および心臓血管外科3名の計11名から構成されるワーキンググループを立ち上げ、TAVIに関する適応適切性基準の策定を行なった。
結果と考察
<結果>PCIに関しては、QMに定められている項目のうち、術前の抗血小板薬使用に関する達成率は高かったものの、橈骨動脈アプローチの実施率およびST上昇心筋梗塞におけるdoor to balloon time <90分以内の達成率に関してはまだ改善の余地があるものと評価された。待機症例における術前非侵襲的負荷検査の実施に関しては、施行率はまだ低く地域間格差も大きいことがわかった。
TAVIの適応適切性基準の策定に関しては、一般的に、外科手術リスクが高く、TAVIの手技リスクは低い場合には、併存疾患(冠動脈疾患の合併、併存弁膜症の存在を含む)の有無に関わらず、“Appropriate” と判断される傾向が強かった。一方で、“Rarely Appropriate” と判断されたクリニカルシナリオとしては、以下の特徴が挙げられた。
①大動脈弁狭窄症以外に期待余命1年未満の予後規定要因を有する症例
②フレイルが非常に強い(clinical frail scale が7以上)症例
③外科手術リスクが低い一方で、TAVI手技リスクが高い若年(75歳未満)症例
④TAVIに不適な解剖を有する大動脈二尖弁症例

<考察>PCIに関して、現段階での結論として、J-PCI レジストリが策定したQM項目の達成率は、術前の抗血小板薬使用以外は、地域間格差も大きく、改善の余地があることが示された。
TAVIの適応適切性に関しては、TAVI施行によっても予後の改善あるいはQOL改善に結び付かないと考えられる症例、あるいはTAVI施行よりも明らかに外科手術(SAVR: surgical aortic valve replacement)の方が望ましいと判断される症例においては、TAVIの適応適切性が低く評価されることが明らかとなった。
結論
本研究の取り組みにより、PCIおよびTAVIの本邦における課題が明確化し、診療の質向上に向けて役立たれることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-07-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202209030C

成果

専門的・学術的観点からの成果
PCIに関しては、QMに定められている項目のうち、術前の抗血小板薬使用に関する達成率は高かったものの、橈骨動脈アプローチの実施率およびST上昇心筋梗塞におけるdoor to balloon time <90分以内の達成率に関しては改善の余地があった。
TAVIの適応適切性基準の策定に関しては外科手術リスクが高くTAVIの手技リスクは低い場合には併存疾患の有無に関わらず、“Appropriate” と判断される傾向が強かった。
臨床的観点からの成果
PCIに関してJ-PCI レジストリが策定したQM項目の達成率は術前の抗血小板薬使用以外は地域間格差も大きく改善の余地があることが示された。
TAVIの適応適切性に関してはTAVI施行によっても予後の改善あるいはQOL改善に結び付かないと考えられる症例あるいはTAVI施行よりも明らかに外科手術の方が望ましいと判断される症例においてはTAVIの適応適切性が低く評価された。これらにより、より適切な適応判断が可能となった。
ガイドライン等の開発
無し
その他行政的観点からの成果
無し
その他のインパクト
今後これらの内容について、学会などを通して啓蒙活動をしていく予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shoji S, Yamaji K, Sandhu A et al.
Regional variations in the process of care for patients undergoing percutaneous coronary intervention in Japan
The Lancet Regional Health - Western Pacific , 22 , 100425-  (2022)
10.1016/j.lanwpc.2022.100425
原著論文2
Inohara T, Tabata M, Isotani A et al.
Appropriate Use Criteria for the Management of Aortic Stenosis Insight From the Japanese Expert Panel
JACC Asia , 3 (2) , 255-267  (2023)
10.1016/j.jacasi.2023.01.006

公開日・更新日

公開日
2023-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
202209030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,000,000円
(2)補助金確定額
6,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 400,940円
人件費・謝金 782,295円
旅費 0円
その他 3,432,765円
間接経費 1,384,000円
合計 6,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-09-14
更新日
-