文献情報
文献番号
200911015A
報告書区分
総括
研究課題名
複数のガン防御機構を標的とした遅発型ガン発症マウスライブラリーの作製とガン予防戦略確立への応用
課題番号
H20-生物資源・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中西 真(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
10,289,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究ではガン防御機構を制御する新たなシステムを明らかにするとともに、これら防御機構の二重、三重変異マウスを作製し、臨床で見られる遅発型ガン発症マウスライブラリーを確立することを目的とする。
研究方法
平成20年度の当該研究において、Chk1+/-Chk2-/-、Chk1+/-Chk2+/-二重変異マウスを作製し、これらマウスがヒト型遅発性ガン発症モデル動物として有益であることを明らかとした。また21年度にはTip60依存的なRNRのDNA損傷部位への集積が新たなガン防御機構として作用することを明らかにした。これらの知見をもとにTip60+/-Chk1+/-,Tip60+/-mdm2C462A, Chk1+/-mdm2C462A,p27-/-Chk2-/-マウスを作成し発ガン解析を開始している。さらにこれら新たな二重変異マウスの発ガン解析と、それら細胞におけるガン防御機構の異常について明らかにする
結果と考察
チェックポイント不全およびアポトーシス亢進と、DNA損傷部位へのdNTPs供給に不全を示すTip60+/-Chk1+/-,Tip60+/-mdm2C462A,アポトーシス亢進とチェックポイントに不全を示すmdm2C462AChk1+/-マウス、さらにはG1チェックポイントとアポトーシス不全に関与するp27-/-Chk1+/-マウスを作製し発がん解析を行っている。特筆すべきことに、新たな発ガン防御機構として、DNA修復過程における適切なdNTPsを供給する機構を同定した。細胞内dNTPs濃度の制御は染色体DNAの安定維持に重要であると考えられていたが、dNTPs供給の律速酵素であるリボヌクレオチド還元酵素(RNR)がTip60依存的にDNA損傷部位に集積することを明らかにした。さらに、損傷部位へのRNRの集積が効率的なDNA損傷修復に必須であることを明らかにした。これらの知見をもとに、Tip60欠損マウスとChk1欠損マウスの二重変異マウスを作製して発ガン解析を行っており、新たな知見が得られるものと期待される。
結論
本年度の当該研究で作製したChk1+/-Chk2-/-二重変異マウスは、早期細胞老化以外のDNA損傷反応を介した細胞応答における異常の結果、遅発型ガン発症を示した。実際、これら二重変異マウスから得られた胎児繊維芽細胞では高率に染色体異常を認めた。また、DNA損傷部位への効率的なdNTPs供給機構を明らかにし、DNA損傷修復における役割を明らかにした。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
-