脳卒中後遺症治療を標的にする遺伝子改変病態モデルの開発

文献情報

文献番号
200911014A
報告書区分
総括
研究課題名
脳卒中後遺症治療を標的にする遺伝子改変病態モデルの開発
課題番号
H20-生物資源・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
植田 弘師(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 内田 仁司(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 松本 みさき(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
9,002,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳卒中は高次脳機能障害、錐体外路障害、慢性痛などの後遺症を高頻度に誘発するが、その責任脳領域と分子基盤は十分に解明されていない。これまでに我々は、虚血性神経細胞死に対する内在性保護因子としてプロサイモシン・アルファ(ProTα)を発見している。本研究目的は、Cre-loxPシステムを利用した脳領域特異的なProTα欠損マウスを作製し、脳卒中後遺症の責任脳領域の同定とその機能回復を通じて、本モデルの正当性を確立する。
研究方法
本研究では、Cre-loxPシステムを利用して、大脳皮質・海馬、線条体、視床特異的なProTα欠損マウスを作製した。これらの変異マウスにおけるProTα発現は、mRNAと蛋白質レベルで評価した。虚血モデルは、塞栓子を用いた一過性中大脳動脈閉塞(tMCAO)モデルと血栓形成による中大脳動脈閉塞(PIT)モデルを用いた。行動機能学的解析では、記憶学習、筋協調性、知覚受容などを評価した。
結果と考察
当該年度では、無症候性虚血条件を確立した。また、部位特異的ProTα欠損マウスの解析では、領域特異的なProTαの発現消失を確認するとともに、一般行動の評価を終え、無症候性虚血のデータ解析が進んでいる。さらに、Cre遺伝子発現ウイルスベクターによる線条体あるいは視床特異的ProTα欠損マウスを新たに作製した。無症候性虚血下において、前者では生存率の低下と運動障害の悪化、後者では神経因性疼痛様の疼痛閾値変調が観察された。一つの困難性は、線条体特異的ProTα欠損マウスでは運動障害が避けられないことから、記憶学習を正確に評価できないことである。その解決策として、最終年度では運動障害を伴わない、総頸動脈閉塞性虚血モデルにて評価する。
結論
当該年度までに、大脳皮質・海馬、線条体、視床特異的なProTα欠損マウスを作製した。無症候性虚血の条件を確立し、線条体領域特異的ProTα欠損マウスにおける障害性の悪化、視床特異的ProTα欠損マウスにおける異常痛を見出した。また、その他のProTα欠損マウスについても、無症候性虚血下における行動機能学的変調の解析が進んでおり、現在データの集計等を行っている。本研究成果は、知財化と論文報告を行うことを計画している。総じて、本研究は計画予定通りに進んでいる。最終年度では、部位特異的遺伝子欠損マウスの機能回復を通じて、本モデルの正当性を検証する。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-