管理栄養士養成施設における管理栄養士の卒前・卒後教育の充実に向けた研究

文献情報

文献番号
202209023A
報告書区分
総括
研究課題名
管理栄養士養成施設における管理栄養士の卒前・卒後教育の充実に向けた研究
課題番号
21FA1007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
中村 丁次(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 志保子(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 斎藤 トシ子(新潟大学大学院医歯学総合研究科 環境予防医学分野)
  • 遠又 靖丈(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 加藤 昌彦(椙山女学園大学 生活科学部 )
  • 村山 伸子(新潟県立大学 人間生活学部)
  • 上西 一弘(女子栄養大学 栄養生理学研究室)
  • 塚原 丘美(名古屋学芸大学 管理栄養学部管理栄養学科)
  • 神田 知子(同志社女子大学 生活科学部 )
  • 桑原 晶子(大阪公立大学 生活科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
栄養士法の一部を改正する法律(平成12年法律第38号)の施行に伴い、管理栄養士の業務として「管理栄養士の名称を用いて、傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導、個人の身体の状況、栄養状態等に応じた高度の専門的知識及び技術を要する健康の保持増進のための栄養の指導並びに特定多数人に対して継続的に食事を供給する施設における利用者の身体の状況、栄養状態、利用の状況等に応じた特別の配慮を必要とする給食管理及びこれらの施設に対する栄養改善上必要な指導等を行うことを業とする者」に改められて以降、医療・介護領域をはじめとして、管理栄養士の職務のあり方は大きく変化している。
本研究は、管理栄養士教育の実態や課題を明らかにした上で、管理栄養士養成施設における管理栄養士の卒前・卒後教育の更なる充実化を図るための方策案を作成することを目的とした。
方策案を作成するにあたり、2カ年計画のうち2年目の本研究では、管理栄養士養成施設の教員、卒業生、現任の管理栄養士を対象に、卒前・卒後の教育実態、教育ニーズ、進路の実態等について把握する。さらに、諸外国の栄養士の養成制度・教育制度の現状をまとめ、国際標準化のための日本の管理栄養士教育のあり方等を検討する基礎資料とする。
研究方法
本年度は分担研究のうち、管理栄養士養成校の教育内容の実態に関するインタビュー調査、管理栄養士養成大学卒業生における教育及び臨地実習に関する調査、管理栄養士の卒前・卒後教育の充実に向けた実務者インタビュー調査、栄養士教育の国際比較に関する文献的研究を実施した。
結果と考察
管理栄養士養成校の教育内容の実態や教育ニーズの検証をインタビューにより実施したところ、臨地実習については、臨床栄養学において医療職として管理栄養士が活躍するためには長期間が必要であると考える一方、現状のカリキュラムでは難しいとの意見が多かった。教育ニーズ・教育内容については、導入教育を含めた体系的な教育や卒後の見通しを学生自身がイメージできるような教育の必要性について言及されていた。
管理栄養士養成大学を卒業した新卒1年目を対象に、管理栄養士養成大学入学のきっかけ、臨地実習の状況等を把握するために、WEB調査を実施した。養成校を志望した理由(複数回答)は、「食事や栄養に関心があるから」78.7%、「国家資格が取得したかったから」61.7%が半数を超えていた。養成校のカリキュラムに対する意見で指摘事項として最も多かったものは「時間割の過密さ」34.8%であった。対象者が考える、管理栄養士資格または管理栄養士に対して魅力を感じるための授業や機会は、「現場の管理栄養士とのふれあい」69.8%であった。
さらに、診療報酬や介護報酬等に係る管理栄養士の勤務先に勤務、または勤務経験のある管理栄養士を対象に、現場で求められる管理栄養士・栄養士養成施設での教育、卒後教育、臨地実習、および専門管理栄養士制度に対する考えをインタビューしたところ、養成校では「管理栄養士の社会的な役割などを明確に把握するためにも、管理栄養士における職業倫理を教えてほしいと考えること」、教員には「現場を経験しており、管理栄養士の活躍を学生に伝えられること、学生と一定の距離を保ちながら学生と丁寧に向かうことを求める」こと、臨地実習では「臨地実習に臨む学生には、礼節や接遇を身につけるべきであると感じること」や、「臨地実習にはプリセプター制度を導入することで、臨地実習の質を向上させるのみならず、臨地実習の受け入れ施設の管理栄養士の知識のブラッシュアップにもつながることが期待される」こと、臨地実習では限られた職域しか経験することができないため、「正課外においてインターンシップ制度を導入することが望ましいと考える」こと、管理栄養士は「養成校を卒業後も継続して学ぶことが必要である」こと等が言及された。
最後に、国際栄養士連盟(ICDA)が国際基準の主要項目としている「学士(大学卒業相当)の学位」と「監督下で実施する専門的な実習の時間数(500時間以上)」の2点について、既存資料に基づいて日本と低中所得国も含む諸外国との栄養専門職養成の国際比較を行った。その結果、必須学位については、「学士以上」に該当したのが30地域(73.2%)で、「学士未満も可」は日本を含む8地域(19.5%)であった。臨地実習・インターンシップの時間数については、32地域の情報を把握することができ、このうち基準時間数が最も低値であったのが日本で、日本だけがICDAの国際基準(500時間相当)を下回っていることが明らかになった。
結論
今後、昨年度及び本年度の研究成果を、管理栄養士養成のあり方等を検討するための基礎資料とし、管理栄養士養成施設における管理栄養士の卒前・卒後教育の更なる充実化を図るための方策案を作成する。

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202209023B
報告書区分
総合
研究課題名
管理栄養士養成施設における管理栄養士の卒前・卒後教育の充実に向けた研究
課題番号
21FA1007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
中村 丁次(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 志保子(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 斎藤 トシ子(新潟大学大学院医歯学総合研究科 環境予防医学分野)
  • 遠又 靖丈(神奈川県立保健福祉大学)
  • 加藤 昌彦(椙山女学園大学 生活科学部 )
  • 村山 伸子(新潟県立大学 人間生活学部)
  • 上西 一弘(女子栄養大学 栄養生理学研究室)
  • 塚原 丘美(名古屋学芸大学 管理栄養学部管理栄養学科)
  • 神田 知子(同志社女子大学 生活科学部 )
  • 桑原 晶子(大阪公立大学 生活科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成12年の栄養士法の改正により管理栄養士の業務として傷病者に対する栄養指導等が明示されて以降、医療・介護領域をはじめとして、管理栄養士の職務のあり方は大きく変化している。
本研究では、管理栄養士教育の実態や課題を明らかにした上で、管理栄養士養成施設における管理栄養士の卒前・卒後教育の更なる充実化を図るための方策案を作成することを目標とした。
研究方法
本研究では、分担研究として、研究1:管理栄養士養成校の教育内容の実態に関するインタビュー調査、研究2:管理栄養士養成大学卒業生の就業実態に関する調査、研究3:管理栄養士養成大学卒業生における教育及び臨地実習に関する調査、研究4:管理栄養士の学歴及び職域と年収に関する疫学調査、研究5:実務者インタビュー調査、研究6:栄養士教育の国際比較に関する文献的研究を実施した。
結果と考察
研究1:臨地実習については、臨床栄養学において医療職として管理栄養士が活躍するためには長期間が必要であると考える一方、現状のカリキュラムでは難しいとの意見が多かった。教育ニーズ・教育内容については、導入教育を含めた体系的な教育や卒後の見通しを学生自身がイメージできる教育の必要性について言及されていた。
研究2:卒業生における進路の年次推移と、法律・制度を中心とした社会的背景との関連を検討した結果、卒業生の進路は、1995年度から2020年度にかけて、管理栄養士・栄養士業務が50%から70%程度、免許不使用の業務が30%程度、進学・未就職が20%から10%程度で推移した。職域別にみると、病院・診療所は法律や制度に伴い増加したと考えられるが、介護保険施設・老人福祉施設等は、必ずしも法律や制度の影響を受けるとは言えなかった。さらに、教育課程等と進路の関連を検討した結果、管理栄養士業務の就職率が高い大学は、国家試験受験資格取得が卒業要件であり、最低臨地実習単位数が5単位以上の大学であった。
研究3:卒業生(新卒1年目)の管理栄養士養成校を志望した理由は、「食事や栄養に関心があるから」78.7%、「国家資格が取得したかったから」61.7%であった。カリキュラムに対する意見で指摘事項として最も多かったのは「時間割の過密さ」34.8%であった。管理栄養士に対して魅力を感じるための授業や機会は「現場の管理栄養士とのふれあい」69.8%であった。養成校において、積極的に現場で活躍している管理栄養士と触れ合う機会を設定することが、管理栄養士に魅力を感じることに繋がると考えられた。
研究4:管理栄養士有資格者の年収分布の中央値は、350万円であった。最終学歴別の年収分布は、大学院博士、大学院修士及び短期大学の順に高かった。性・年齢を調整して解析した結果、最終学歴のうち専門学校を基準とした場合、大学の一部と大学院修士、大学院博士でオッズ比が有意に高かった。職域では、医療を基準とした場合、食育・教育及び行政でオッズ比が有意に高かった。以上より、年収には学歴及び職域が影響していることが示唆された。
研究5:診療報酬や介護報酬等に係る管理栄養士の勤務先に勤務、または勤務経験のある管理栄養士は、養成校では「管理栄養士の社会的な役割などを明確に把握するためにも、職業倫理を教えてほしいと考えること」、養成校教員には「現場を経験しており、管理栄養士の活躍を学生に伝えられること、学生と一定の距離を保ちながら学生と丁寧に向かうことを求める」こと、臨地実習では「学生は礼節や接遇を身につけるべきであると感じること」や、「プリセプター制度を導入することで、臨地実習の質を向上させるのみならず、受け入れ施設の管理栄養士の知識のブラッシュアップにもつながることが期待される」こと等について言及していた。以上より、管理栄養士・栄養士の職業倫理を策定し、養成校で学生に教育すること、また、臨地実習は、プリセプター制度を導入することが、質の高い実習を実施するために必要であることが示唆された。
研究6:国際栄養士連盟(ICDA)が国際基準の主要項目としている「学士(大学卒業相当)の学位」と「監督下で実施する専門的な実習の時間数(500時間以上)」の2点について、既存資料に基づいて日本と諸外国との栄養専門職養成の国際比較を行った結果、必須学位については、「学士以上」に該当したのが30地域(73.2%)で、「学士未満も可」は日本を含む8地域(19.5%)であった。臨地実習・インターンシップの時間数については、32地域の情報を把握することができ、このうち基準時間数が最も低値であったのが日本で、日本だけがICDAの国際基準(500時間相当)を下回っていることが明らかになった。
結論
今後、これらの研究成果をもとに、国際標準化のための日本の管理栄養士教育のあり方を提案していく。

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202209023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
管理栄養士養成に関する制度改正への活用の可能性:本研究成果は管理栄養士養成のあり方を検討するための基礎資料となり、これらをもとに管理栄養士のさらなる教育の充実化を図るための具体的な案を提示していく。具体的な検討事項として、卒前教育は臨地実習のあり方、教育効果を高めるための授業方法等、卒後教育は、実務者の再教育、国際標準化のための卒後研修・卒後教育のあり方等である。
臨床的観点からの成果
卒前・卒後を通した充実した管理栄養士教育により、質の高い管理栄養士が医療・福祉・行政分野をはじめ、さまざまな職域で活躍することから、社会、国民に大きく貢献することが考えられる。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
本研究で得られた成果は、広く管理栄養士や管理栄養士養成校に対して還元され、管理栄養士養成のあり方について一層議論を深めることにつながり、管理栄養士教育の充実に資することが期待できる。
その他のインパクト
現在、研究成果から今後の管理栄養士の卒前・卒後教育の方向性について検討中である。具体的な提案事項を検討し、今後、より充実した管理栄養士教育が推進できるように努めていく予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
2件
ACD 2022(The 8th Asian Congress of Dietetics)
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
202209023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,000,000円
(2)補助金確定額
6,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,306,780円
人件費・謝金 1,255,260円
旅費 135,120円
その他 918,840円
間接経費 1,384,000円
合計 6,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-09-13
更新日
-