天然植物資源を元にした新規医薬リード化合物の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200911008A
報告書区分
総括
研究課題名
天然植物資源を元にした新規医薬リード化合物の開発に関する研究
課題番号
H19-生物資源・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
渕野 裕之(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター 筑波研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 関田 節子(徳島文理大学香川薬学部)
  • 細川 敬三(兵庫大学健康科学部)
  • 中根 孝久(昭和薬科大学薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
8,402,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
合成物主体の近年の創薬手法には限界があり,奇異な骨格を有する植物成分がまた見直される機運にある.基盤研が有する多くの植物資源を材料とし使用情報を元に対象を絞り込み生物活性試験を行うことにより,効率的に創薬資源候補植物を見いだすことが可能になる.本研究は医薬品開発に十分利用されてきていない薬用植物を,創薬資源として活用する道を拓こうとするものであり,薬用植物資源の価値を再認識させる契機となることが期待される.
研究方法
PPARγリガンド活性を植物由来化合物106種類を用いて化合物レベルでの検討を行った.一部植物について脂肪細胞での網羅的遺伝子発現解析を行った.ACE阻害活性やα-グルコシダーゼ阻害活性成分を単離同定した.ブラジル産生薬 100 種類のα―グルコシダーゼ阻害活性試験を行った.熱帯感染症リーシュマニア症に対し有効な植物探索としてペルー産,ネパール産植物などの活性成分の探索を行った他,漢方外用剤の適用として皮膚型患者に対し臨床試験を行った.
結果と考察
外国生薬から中程度のACE阻害活性を示すフラボノイド配糖体を得た.強い抗酸化活性を示すLigaria cuneifoliaからは新たにキナ酸エステルが得られた.一部の植物が脂肪細胞でアディポネクチン量を増強させ,リポ蛋白リパーゼなどを活性化し,中性脂肪代謝を促進し,PPARγを活性化することにより抗肥満作用を示す可能性があることが考えられた.天然化合物のPPARγリガンド活性で,トリテルペン誘導体に活性を見出した.α-グルコシダーゼ阻害活性ではスズメノナスビ果実から活性成分を単離したが,その果実は食用であり,デンプン分解酵素の作用を抑制することにより,食後の急激な血糖値の上昇を抑制する可能性が考えられた.ペルーとネパール生薬から,多くの抗リーシュマニア活性化合物を単離し,皮膚型に対する紫雲膏のペルーでの臨床試験では有効性が明確に認められた.
結論
Diospyros属はカキの仲間であり多くのタンニンを含みそれらが本来の活性本体と推測された.アディポネクチンを増加させPPARγ,LPLを活性化した一部植物は生活習慣病改善作用が期待された.天然化合物のPPARγ agonist活性を検討して得られた結果は今後のインスリン抵抗性改善薬の開発において有益な情報となると考えられる.ペルーでの紫雲膏を用いた皮膚型リーシュマニア症患者への臨床試験では良好な治癒効果が認められ,通院治療が受けられない患者や現在の治療薬が適用できない妊婦にとっては朗報である.

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200911008B
報告書区分
総合
研究課題名
天然植物資源を元にした新規医薬リード化合物の開発に関する研究
課題番号
H19-生物資源・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
渕野 裕之(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター 筑波研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 関田 節子(徳島文理大学香川薬学部)
  • 細川 敬三(兵庫大学健康科学部)
  • 中根 孝久(昭和薬科大学薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
合成物主体の近年の創薬手法には限界があり,奇異な骨格を有する植物成分がまた見直される機運にある.基盤研が有する多くの植物資源を材料とし使用情報を元に対象を絞り込み生物活性試験を行うことにより,効率的に創薬資源候補植物を見いだすことが可能になる.本研究は医薬品開発に十分利用されてきていない薬用植物を,創薬資源として活用する道を拓こうとするものであり,薬用植物資源の価値を再認識させる契機となることが期待される.
研究方法
国内産植物エキス1288点の生理活性in vitroスクリーニングを実施した.外国産生薬についても南米や東南アジアなど89種類を同様に脂肪細胞を用いた分化抑制,インスリン抵抗性抑制活性の他,アンジオテンシン転換酵素阻害,コレステロール吸収抑制,α―グリコシダーゼ阻害,抗酸化活性について検討しこれらを元に活性成分探索を行った.PPARγリガンド活性を植物由来化合物106種を用いて化合物レベルでの検討も行った.一部植物の脂肪細胞での網羅的遺伝子発現解析を行い,ACE阻害活性やα-グルコシダーゼ阻害活性成分を単離同定した.熱帯感染症リーシュマニア症に対し有効な植物探索として205種類の外国産エキスにスクリーニングを行い,ペルー,ネパール産植物などの活性成分探索を行った他,漢方外用剤の適用として皮膚型患者に対し臨床試験を行った.
結果と考察
コデマリ花よりマルターゼ阻害活性,スズメノナスビ果実からα-グルコシダーゼ阻害活性化合物を得た.外国産生薬からは強いACE阻害活性を示したミャンマー産生薬,強力な抗酸化活性を示したボリビア生薬からはフラボノイド配糖体エステルを得た.脂肪細胞を用いたインスリン抵抗性抑制活性ではミャンマー産植物に明確な活性を見出し中性脂肪の代謝を促進しPPARγを活性化することにより抗肥満作用を示す可能性があることが考えられた.また,熱帯感染症であるリーシュマニア症についてはペルー,ミャンマー,パキスタン,ネパール産植物など全9種について活性成分探索を行い多くの新規化合物を含む成分を解明した.ペルー研究者の協力で紫雲膏の皮膚型リーシュマニア症に対する臨床試験が行われ,多くの患者に治癒効果を認めた.
結論
国内外の多くの植物の広い範囲の生理活性を検討し,多くの新規化合物を含む生理活性成分を見出した.これらは創薬ツールとしても利用できると考えられる.また受容体へのリガンド活性を化合物レベルで検討し今後の創薬に重要な情報となりうる.

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200911008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
国内産植物に関しては科学的検証があまり行われていないアイヌ民間薬、外国産についてはミャンマー、パキスタン、ペルーなどの希少生薬を中心に多方面における生物活性を検討した。メタボリックシンドロームや抗感染症に関連した活性の強い植物に関し成分検索を行い多くの生物活性化合物の化学構造を解明した。生薬紫根の成分シコニンの強力な活性から派生した漢方薬紫雲膏の皮膚リーシュマニア症に対する有効性を現地での臨床試験で確認するに至った。
臨床的観点からの成果
国内での臨床研究は行っていない。抗感染症を有する薬用植物の探索研究として、協力研究者であるペルー国立サンマルコス大学医学部熱帯医学研究所の医師によりペルー国での臨床試験は行われた。我が国の漢方製剤の現地感染症への適応を行い、極めて良好な結果を得ている。
ガイドライン等の開発
特に該当はない。
その他行政的観点からの成果
特に該当はない。
その他のインパクト
毎日新聞茨城版(2009年9月8日付)にて、主任研究者(渕野裕之)の研究成果としてペルー国との共同研究である抗リーシュマニア活性を有する薬用植物の探索研究が紹介された。また平成21年日本薬学会において発表した「紫雲膏の皮膚型リーシュマニア症に対する臨床試験について」は薬学会ハイライトに選出された。平成20年度循環器病セミナー「循環器病の研究を支える生物資源」において、研究成果を中心に報告を行った

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
平成20年度創薬基盤推進研究事業普及啓発事業循環器病セミナー「循環器病の研究を支える生物資源」における研究成果発表

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hiroyuki FUCHINO, Marii KAWANO, Kanami MORI-YASUMOTO et al
In Vitro leishmanicidal activity of benzophenanthridine alkaloids from Bocconia pearcei and related compounds
Chemical & Pharmaceutical Bulletin , 58 (8)  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-