文献情報
文献番号
202209013A
報告書区分
総括
研究課題名
心臓大血管救急におけるICTを用いた革新的医療情報連携方法の普及と広域救急医療体制確立に資する研究
課題番号
20FA1018
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
東 信良(旭川医科大学 外科学講座(血管・呼吸・腫瘍病態外科学分野))
研究分担者(所属機関)
- 横山 斉(福島県立医科大学 医学部)
- 上田 裕一(地方独立行政法人 奈良県立病院機構 奈良県総合医療センター)
- 磯部 光章(公益財団法人 榊󠄀原記念財団 附属 榊󠄀原記念病院)
- 坂田 泰史(国立大学法人 大阪大学 医学部附属病院 循環器内科)
- 古森 公浩(福岡県済生会八幡総合病院)
- 久志本 成樹(東北大学 大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学分野)
- 長谷川 高志(特定非営利活動法人日本遠隔医療協会)
- 森村 尚登(帝京大学医学部救急医学講座)
- 本村 昇(東邦大学医療センター佐倉病院 心臓血管外科)
- 善甫 宣哉(関西医科大学附属病院 血管外科)
- 荻野 均(東京医科大学 外科学第二講座)
- 高山 守正(財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院 内科医局)
- 森野 禎浩(岩手医科大学 内科学講座 循環器内科分野)
- 辻田 賢一(熊本大学大学院 生命科学研究部 循環器内科学)
- 彦惣 俊吾(大阪大学大学院医学系研究科)
- 岡田 佳築(国立大学法人 大阪大学 医学部附属病院)
- 齋木 佳克(東北大学大学院医学系研究科)
- 宮本 伸二(大分大学 医学部医学科心臓血管外科学講座)
- 紙谷 寛之(旭川医科大学外科学講座心臓大血管外科学分野)
- 佐瀬 一洋(順天堂大学大学院医学研究科臨床薬理学教室)
- 大津 洋(順天堂大学大学院医学研究科臨床薬理学教室)
- 森景 則保(山口大学医学部附属病院 第一外科)
- 宮田 裕章(慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室)
- 高橋 新(慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,615,000円
研究者交替、所属機関変更
研究者辞退: 慶応義塾大学医学部・准教授 高橋 新
辞退日:R4.10.31
研究所属部署変更 :旧 大阪大学変革的医療情報システム開発学 岡田 佳築 → 新 大阪大学医療情報学
変更日:R4.6.1
研究報告書(概要版)
研究目的
心臓大血管救急において、①大動脈緊急症(急性大動脈解離や破裂性腹部大動脈瘤)の治療成績、救急医療体制の実態の把握し、②救急現場でのICT活用実態調査を行なったうえで、③information and Communication Technology (ICT)を用いた病院間医療情報連携の有効性を証明する全国多施設共同研究を進め、循環器病対策推進基本計画が目標として掲げる医療体制の整備・改革に資するデータを提供して、地域実状に配慮した心臓大血管救急医療改革モデルを提案することを目的とする。
研究方法
前年度に引き続き、既存データベースであるJapan Cardiovascular Surgery Database (JCVSD), National Clinical Database(NCD)などのデータベースを解析した。加えて、ICTを用いた病院間画像連携ツールの有用性を検証するために、12大学病院が参加して多施設臨床研究を実施し、door to intervention timeを解析し、ICTを用いた病院間画像連携ツールの有用性を検討した。また、大動脈緊急症用に開発したトリアージアプリを全国3か所の救急隊において試用し、その改良点を模索した。
冠動脈救急に関しては、JROAD-DPCデータ解析を実施し、重症度の高い急性冠症候群において専門医など医療資源が豊富な施設への集約化の効果について検討した。さらに、救命率が予測値よりも優れていた地域でフィールド調査を実施し、いかにして救命率向上が達成されているのか、医療資源配置や交通網、およびICT活用について調査を実施した。
心臓血管外科救急領域のICT活用実態を推し量るため、全国救命救急センターおよび大学病院等にアンケート調査を実施し、救命率向上のための会議体の存在などについても併せて調査した。
研究成果は順次、本研究班のHPにアップし、国民の認知度が低い大動脈緊急症の啓発の一助とした。
冠動脈救急に関しては、JROAD-DPCデータ解析を実施し、重症度の高い急性冠症候群において専門医など医療資源が豊富な施設への集約化の効果について検討した。さらに、救命率が予測値よりも優れていた地域でフィールド調査を実施し、いかにして救命率向上が達成されているのか、医療資源配置や交通網、およびICT活用について調査を実施した。
心臓血管外科救急領域のICT活用実態を推し量るため、全国救命救急センターおよび大学病院等にアンケート調査を実施し、救命率向上のための会議体の存在などについても併せて調査した。
研究成果は順次、本研究班のHPにアップし、国民の認知度が低い大動脈緊急症の啓発の一助とした。
結果と考察
大動脈緊急症のうち、急性大動脈解離は年間約7,900例、腹部大動脈瘤破裂は年間約1,800例が緊急手術(血管内治療を含む)の対象となっており、手術室に到達しても死亡率は前者が約10%, 後者が約18%と未だ高い。大動脈緊急症は、その診断のみでなく手術方針決定のためにも画像診断が必須であり、事前に得た画像情報を有効に活用する病院間画像連携は、迅速な治療方針決定や手術開始までの時間短縮に貢献できるが、救命救急センター等に於いてもICTを用いた病院間画像連携は25%に満たない普及率である。高度に訓練された専門チームを要する大動脈緊急症あるいは冠動脈救急の重症例において、たとえ搬送時間が長くなってもhigh volume centerへの集約が救命率向上に有利であることから、距離が長くなったとしても情報への迅速なアクセスを可能にするICT活用が医療の均てん化の鍵となる。実際、最終年度の研究において、A型急性大動脈解離の場合、ICTによる病院間画像情報連携活用によって、arrival to intervention timeで29minの短縮効果があることが証明された。さらに、ICT活用によって起こる病院内医療者連携効果や病院間での医療者連携効果、さらには救急隊―病院間情報連携効果が示され、加えて、病院間画像連携ツールを利用している4拠点で、31.3%の相談症例で救急搬送を回避できたことから、ICTで繋がる事自体が広域ネットワークの確立や円滑な運用、地域病院の役割分担の明確化をもたらすことを示唆する結果が得られた。
冠動脈救急においても、循環補助を要する重症例はhigh volume centerでの加療が望ましいことが示され、また、フィールド調査で得られたセンター病院への物理的および情報アクセスの迅速化による救命率改善事例からも、ICT活用の有用性が示唆された。
冠動脈救急においても、循環補助を要する重症例はhigh volume centerでの加療が望ましいことが示され、また、フィールド調査で得られたセンター病院への物理的および情報アクセスの迅速化による救命率改善事例からも、ICT活用の有用性が示唆された。
結論
心臓大血管救急の拠点病院への集約化を進めるにあたって、特に搬送距離の長い医療圏においてICT活用による情報共有の迅速化とネットワークの確立が心臓大血管救急における救命率向上に有効な手段であると考えられ、循環器病対策推進計画のもと、心臓大血管救急領域におけるICTの普及を強く推奨することを結論とする。
公開日・更新日
公開日
2023-07-24
更新日
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