新世界ザルを用いたデングウイルス感染・発症動物モデル開発に関する研究

文献情報

文献番号
200911003A
報告書区分
総括
研究課題名
新世界ザルを用いたデングウイルス感染・発症動物モデル開発に関する研究
課題番号
H19-生物資源・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
倉根 一郎(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 高崎 智彦(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 明里 宏文(独立行政法人医薬基盤研究所)
  • 中村 紳一朗(滋賀医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
9,598,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
デングウイルスの感染環は、通常ヒト-蚊-ヒトで形成されているが、ヒト以外で自然界において感受性のある動物はサルのみである。評価系としての疾患モデル動物は確立されていない。新世界ザルであるマーモセットを用いて、デングウイルス感染・発症モデルを確立することによりデングウイルスワクチン等の評価システムと病態解明のためのモデルを構築することを目的とした。
研究方法
新世界ザルであるマーモセットに種々の条件下でデングウイルスを感染させた。経時的にウイルス学的、病理学的、免疫学的解析を行った。
結果と考察
マーモセット6頭を3群に分けDHF0663株を接種した。接種個体6頭全ての血清において接種後2、4、7日目の血中よりウイルスRNAが検出された。ウイルスRNA量のピークは全ての個体で接種後4日目に認められた。さらに異なるデング2型ウイルス株の接種を行った。マーモセット#1にはJam/77/07 を、#3, #4にはMal/77/08を、#5, #6にはDHF0663 を接種した。全ての個体で接種後4日目をピークとして2日目から7日目まで、血中からウイルスRNAが検出された。各群の臨床症状を暗期の体温変動を指標として比較した。DHF0663接種群では2個体共に体温上昇が認められ、Jam/77/07接種群、Mal/77/08接種群では共に1個体(#2, #3)の体温上昇が観察された。特に#2、#5においては約1週間もの間、体温上昇が確認された。マーモセットモデルを用いて感染初期過程における細胞性免疫担当細胞のダイナミクスについて検討した。感染後CD8陽性T細胞においてKi-67陽性率は感染14日で増加し、これらのCD8 T細胞サブポピュレーションがDENV感染により強く活性化されたことを意味する。病理学的検索においては複数の抗DENV抗体を用いた免疫染色を行ったところ、DENV2が複数回接種されたマーモセットから得られた血清が明瞭な陽性像を示した。脾臓、リンパ節のリンパ系細胞またはマクロファージ、肝臓のクッパー細胞が感染後5日で明らかな陽性像を示し、8日目に最も多数の陽性細胞が認められた。
結論
コモンマーモセットはデングウイルスに対して非常に感受性が高く、感染後高いレベルのウイルス血症を示す。また、抗体反応のみでなく、CD8陽性T細胞の活性化が起こっている。また、使用したデングウイルス2型の3株はいずれも同程度のウイルス血症を示すことから、マーモセットは特定のデングウイルス株のみに高い感受性を有するのではないことが示された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200911003B
報告書区分
総合
研究課題名
新世界ザルを用いたデングウイルス感染・発症動物モデル開発に関する研究
課題番号
H19-生物資源・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
倉根 一郎(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 高崎 智彦(国立感染症研究所 ウイルス第一部 )
  • 明里 宏文(独立行政法人医薬基盤研究所)
  • 中村伸一朗(滋賀医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
デング熱・デング出血熱は熱帯・亜熱帯において毎年数千万人の患者が発生している。ワクチンや抗ウイルス剤の開発には動物モデル開発が必須であるが、これまで高いレベルのウイルス血症を示す動物モデルは開発されていない。新世界ザルであるマーモセットを用いて、デングウイルス感染・発症モデルを確立することによりデングウイルスワクチン等の評価システムと病態解明のためのモデルを構築することを目的とした。
研究方法
新世界ザルであるマーモセットに種々の条件下でデングウイルス1-4型を感染させた。経時的にウイルス学的、病理学的、免疫学的解析を行った。
結果と考察
コモンマーモセットにデングウイルス1-4型を接種したところ、いずれの型のデングウイルスを接種した個体においても血症にウイルス遺伝子が確認された。特にデングウイルス2型を接種した個体においては血中に高いレベルのデングウイルスが検出され、尿中にも持続的にウイルス遺伝子が検出された。同一ウイルスの再感染に対しては完全に防御が成立し、本モデルがワクチン評価系として有用であることが確認された。2型デングウイルス野外分離株3株に対するマーモセットの感受性について検討を行ったが、全ての株で高いウイルス血症が誘導された。一方で、臨床症状の指標の一つである体温変動に関しては接種株間で異なる傾向が認められた。デングウイルス感染により生じる高いウイルス血症後に、特異抗体のみならず CD8陽性T細胞の顕著な活性化が同時に誘導され、これらがデングウイルス増殖制御に寄与している可能性が示唆された。病理学的解析においては、腎臓に間質性腎炎を中心とした泌尿器系の病理組織学的変化が認められた。間質に出現する細胞はTおよびBリンパ球、マクロファージなどと多彩であった。脾臓、リンパ節のリンパ系細胞またはマクロファージ、肝臓のクッパー細胞においてデング抗原が認められた。さらに間質性腎炎に出現するリンパ球の一部も抗原陽性であった。
結論
コモンマーモセットはデングウイルスに対して非常に感受性が高く、感染後高いレベルのウイルス血症を示す。また、デング熱患者でみられる症状の一部も発症する。同一血清型のデングウイルスの再感染に対しては完全に防御が成立する。従って、マーモセットのデングウイルス感染モデルはワクチンや抗デングウイルス剤評価系として有用である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200911003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
コモンマーモセットにデングウイルス1-4型を接種したところ、いずれの型のデングウイルスを接種した個体においても血症にウイルス遺伝子が確認された。特にデングウイルス2型を接種した個体においては血中に高いレベルのデングウイルスが検出され、尿中にも持続的にウイルス遺伝子が検出された。脾臓、リンパ節のリンパ系細胞またはマクロファージ、肝臓のクッパー細胞においてデング抗原が認められた。コモンマーモセットはデングウイルスに対して非常に感受性が高く、感染後高いレベルのウイルス血症を示すことが示された。
臨床的観点からの成果
同一ウイルスの再感染に対しては完全に防御が成立し、本モデルがワクチン評価系として有用であることが確認された。一方で、臨床症状の指標の一つである体温変動に関しては接種株間で異なる傾向が認められた。本モデルにおいてはウイルス血症のみでなくデング熱患者でみられる症状の一部も発症する。同一血清型のデングウイルスの再感染に対しては完全に防御が成立する。従って、マーモセットのデングウイルス感染モデルはワクチンや抗デングウイルス剤評価系として有用である。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
デング熱・デング出血熱は熱帯・亜熱帯において毎年数千万人の患者が発生している。我が国でも年間約100人の輸入患者が報告されている。ワクチンや抗ウイルス剤の開発には動物モデル開発が必要であるが、これまで動物モデルは開発されていない。新世界ザルであるマーモセットを用いて、デングウイルス感染・発症モデルを確立することによりデングウイルスワクチン等の評価システムと病態解明のためのモデルを構築するための基盤が確立された。本成果はデング熱、デング出血熱に対する感染症行政にとって意義深い。

その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
2015-06-18