文献情報
文献番号
200910002A
報告書区分
総括
研究課題名
分子シャペロン複合型ヒトがんワクチン開発
課題番号
H20-ワクチン・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 昇志(札幌医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 鳥越 俊彦(札幌医科大学 医学部)
- 田村 保明(札幌医科大学 医学部)
- 佐原 弘益(麻布大学 獣医学部)
- 和田 卓郎(札幌医科大学 医学部)
- 廣橋 良彦(札幌医科大学 医学部)
- 平田 公一(札幌医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(次世代ワクチン開発研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
23,531,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
癌抗原ペプチドを用いたワクチン療法には、安全でかつ抗原提示細胞に効率よくワクチンを送達可能な免疫賦活剤との組み合わせが必須である。本研究ではこの目的で細胞質に存在する熱ショック蛋白質HSP90および小胞体に存在する新規HSPであるOxygen regulated protein 150 (ORP150) と抗原ペプチドとの複合体によるcross-presentationを介するCTLの誘導機構と治療への応用について検討した。
研究方法
下記の項目につき研究を行った。
1)HSP/抗原複合体のAPC内抗原交叉提示機構解析
2)APC上のHSP受容体遺伝子クローニング
3)HSP/抗原複合体の臨床応用
4)臨床試験の準備
1)HSP/抗原複合体のAPC内抗原交叉提示機構解析
2)APC上のHSP受容体遺伝子クローニング
3)HSP/抗原複合体の臨床応用
4)臨床試験の準備
結果と考察
HSP90あるいはORP150-抗原ペプチド複合体は効率よくcross-presentation経路に入り、in vitroで抗原特異的な細胞障害性T細胞(CTL)を誘導できることが明らかとなった。またHSP90-CpG複合体をマウスに投与すると、CpG単独と比較して、多量のIFN-αを産生誘導した。樹状細胞に取り込まれたHSP90あるいはORP150-抗原ペプチド複合体の局在を共焦点レーザー顕微鏡で観察すると、Rab5+, EEA-1+のearly endosome、すなわちstatic endosomeとRab11+のrecycling endosomeにのみ存在することを確認した。このようにCTLを誘導可能な効率の良いクロスプレゼンテーションは、HSP-抗原ペプチド複合体がstatic endosomeに誘導されることが重要であることが明らかとなった。
結論
ヒトがんワクチンの臨床応用に向けたひとつの大きな課題は、これらがん抗原の免疫原性強化、エンハンシングである、がん抗原そのものの免疫原性は決して強いものではなく固形癌の化学療法効果のメルクマールの一つRECIST評価では、著明な効果を持つものは少なく、ワクチン免疫原性の飛躍的な増強が課題となっている。我々はヒトがん抗原の同定には実績がある。研究体制も国内トップクラスと自負する。一方、HSPががん抗原の抗原性のエンハンサーとして働くことがわかりつつある。我々はHSPの免疫学的研究にも実績がある。これらを融合しワクチン免疫原性の増強をはかろうとする本研究は臨床的に真に有効な免疫治療、予防の基盤をなす可能性があり、日常のがん治療はもとより、将来的にはがん予防にも応用可能であり、ひいては厚生労働行政にも貢献すると考える。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
-