新興・再興感染症に対するヒトM細胞標的型粘膜ワクチン開発

文献情報

文献番号
200910001A
報告書区分
総括
研究課題名
新興・再興感染症に対するヒトM細胞標的型粘膜ワクチン開発
課題番号
H20-ワクチン・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
清野 宏(東京大学医科学研究所 炎症免疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 保富 康宏((独)医薬基盤研究所)
  • 奥野 良信((財)阪大微生物病研究会観音寺研究所 医薬基盤研究所)
  • 紅露 拓((独)医薬基盤研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(次世代ワクチン開発研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
33,254,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗体をデリバリー分子としたM細胞標的型粘膜ワクチンを開発すること
研究方法
慢性扁桃炎や扁桃肥大の患者より扁桃組織、またカニクイザルの腸管を用いて、抗体を樹立した個体以外のから組織を作製し、抗体の特異性を検討した。また複数のサルの腸管から酵素処理後、パーコールでリンパ系細胞を除き、マウスに免疫することで、上皮細胞・FAE特異的な各個体間で共通な抗原を認識する抗体を得た。サル腸管組織は抗体と2時間培養後、FAEを含む組織をFITC-2次抗体で検出した。
結果と考察
我々は2つの戦略で経口ワクチンの研究開発を進めてきた。一つはコメにワクチンを発現し経口投与する方法(PNAS 104: 10986,2007)とマウスM細胞に特異的発現する分子に対する抗体を用い、M細胞に標的するための方法である(J. Exp. Med. 204; 2335, 2007)。前者は最近、サルに米型ワクチン(MuocRice-CTB)を経口投与することで、抗原(例;コレラ毒素)特異的免疫応答の誘導およびその中和効果の有効性を証明した。(J.Immunol. 183; 6538,2009)。後者に関してはマウスM細胞に特異的に発現する分子のDNA-chip解析を行い、GP2という分子がM細胞表層に発現していることを証明し(J. Immunol. 180; 7840, 2008)、理研との共同研究でこのGP2分子を標的にサルモネラ菌がM細胞から特異的に侵入することを解明した(Nature 462; 226, 2009)。GP2はサル・ヒトにも発現しているためこの抗体がM細胞への標的分子として使える可能性がある。一方で、我々が昨年来レーザーマイクロダイセッションを駆使して目的とする細胞を切り取り、これを抗原として樹立してきたサルの上皮細胞に対するモノクローナル抗体はサルの個体特異的であることが判明し、本年度に再度、今度はM細胞を含む上皮細胞を分離してこれを抗原として、カニクイザル一般の上皮細胞に対するモノクローナル抗体の樹立に成功した。さらにこの抗体が実際カニクイザルの腸管のM細胞を含む上皮細胞に反応する抗体であることが確認できた。現在、サルのパイエル板に特異的な抗体の樹立を進めており、平成22年度には、本研究で開発された抗体を用い、実際にカニクイザルを用いた経口免疫を実施できる準備が整いつつある。
結論
M細胞を含むサルの上皮細胞に共通で且つ特異的反応し、さらにFAE上皮細胞にワクチンを標的可能なモノクローナル抗体(3F11-7-1)の樹立に成功した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-