オンライン特定保健指導・オンライン診療におけるPHR活用による行動変容に関する研究

文献情報

文献番号
202209006A
報告書区分
総括
研究課題名
オンライン特定保健指導・オンライン診療におけるPHR活用による行動変容に関する研究
課題番号
20FA1007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
米田 隆(国立大学法人金沢大学 融合研究域融合科学系)
研究分担者(所属機関)
  • 稲津 明広(金沢大学 保健学系)
  • 村山 敏典(金沢大学附属病院 臨床開発部)
  • 野村 章洋(金沢大学 附属病院 先端医療開発センター)
  • 古川 健治(北陸先端科学技術大学院大学 保健管理センター)
  • 米田 貢(金沢大学 医薬保健研究域保健学系)
  • 高村 禅(北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科)
  • 出村 昌史(金沢大学 医学系)
  • 唐島 成宙(金沢大学 国際基幹教育院(GS系))
  • 米谷 充弘(国立大学法人 金沢大学 附属病院)
  • 南保 英孝(金沢大学 理工学域)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
11,538,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、健康・医療政策をデジタルトランスフォーメーション推進という観点から、マイナポータルと民間PHRをAPI連携し、オンライン特定保健指導、オンライン診療の場でPHR活用の長期有用性評価を行い、デジタルヘルス改革を行う。民間PHRアプリを用いて、マイナポータルから得られる健診・検診データをいかに効果的に表示・提供するか、その利活用による個人の行動変容に関するエビデンスの確立を目的とする。
研究方法
民間PHRアプリを用いて、ライフログと保健医療情報を効果的に明示するPHRアプリを用いた臨床研究を実施する。
① 特定保健指導実施者ならびに健康上問題のある方々に対するPHRの長期の有用性の検討:
研究概要:保健指導対象者の行動変容を検証する2018~2019年度AMED IoT等活用行動変容研究事業「生活習慣病に対するオンライン保健指導サービスと行動変容への検証研究」のデータ・研究フィールドを活用・発展させ、マイナポータル健診データと民間アプリの組み合わせ活用による長期有効性を検証する。加えて、通常健診での単純肥満、運動不足、フレイル・サルコペニア等の方々も対象とする。アプリ介入ではAIキャラクターが、自動メールで、「マイナポータル健診データを閲覧」を促すように設定、健診データを基に行動目標等を決め、行動変容機能で、被検者の行動を評価する。
② オンライン診療を用いた生活習慣病診療におけるPHRの有用性の検討
研究概要:オンライン糖尿病診療で、マイナポータル健診データと民間アプリの組み合わせ活用の有用性を、従来診療群とランダム化比較試験(RCT)で評価する。現在、通常診療でのPHRアプリを導入RCT研究が、2018年に開始、50例の症例登録済み、これを継続、発展、終了し、「オンライン診療におけるPHRアプリの有用性の検討」との比較データとする。オンライン診療研究(図5)では、新規に血糖管理+マイナポータル閲覧奨励追加アプリを用い、3か月毎の対面診療、その間の1か月毎のオンライン診療を組み込む。介入群では、民間アプリのAIキャラクターが、定期的に「マイナポータル健診データの閲覧」を促し、診察時は、医師(ヒト)が、マイナポータル健診経年データを活用し指導する。(オンライン診療時は、血圧、体重、運動、食事、睡眠等データのみだが、対面診療時は、血糖、HbA1C、脂質値等生化学データも用いる。)
結果と考察
① 令和5年3月時点で‘症例130名(アプリ群 90名、従来指導群 40名))解析可能で『アプリ群』と『従来指導群』の2群では、non-HDLの介入前後の変化量 (-2.9 ± 26.2 vs 16.1 ± 46.8, p = 0.03)および総コレステロール値の変化量(0.1 ± 29.0 vs. 20.5 ± 51.4, p = 0.03)に有意差が見られた。体重の変化量は、アプリ群が従来群に比較して大きい結果であった(-1.7 ± 3.6 kg vs -0.3 ± 4.1)。行動変容に関して、行動変容ステージモデルの「維持期」状態への増加割合は、運動では、アプリ群で +24.2%増(25.8%→50.0%)、従来指導群 +9.8%増(21.6%→31.4%)と共に有意に増加し、アプリ群でその増加割合は有意であった(P=0.03)。食事では、アプリ群 +25.3%増(19.7%→45.0%)、従来指導群 +17.4%増(27.0%→44.4%)、体重測定に関しても、アプリ群 +33.9%増(24.2%→58.1%)、従来指導群 +33.9%増(18.9%→52.8%)と両群ともに増加も、両群の増加率に有意差は認めなかった。また、継続率の点でも、保健指導と研究参加に関して、アプリ群では、フォローアップ率89%で従来保健指導率は78%で有意差をもって、高フォローアップ率であった(P<0.001)。保健指導実施期間のアプリの使用継続率を評価では、「アプリの使用継続」という定義を、特定の2週間に1回以上記録(アプリ使用歴)があることとした場合は、体重、食事、血圧記録の継続率は、それぞれ50%、30%,40%であり、体重記録は過去の類似の文献報告(JMIR Mhealth Uhealth2018;6(4):e41)の39%よりは高い結果であった。
② オンライン診療での検討も、目標症例をすべて登録完了、ただ令和4年度内に、全結果をえることができないため、以後も、研究を実施す。途中結果であるが、①の結果と合わせると、PHRでの行動変容の継続率(健診データを見なおす行動に関して)は、保健指導では30%に対して、オンライン診療で用いると80%という結果であった。
結論
令和4年度末までの解析では、PHRの活用は行動変容、一部の臨床データ(脂質等)改善にも有効である。

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202209006B
報告書区分
総合
研究課題名
オンライン特定保健指導・オンライン診療におけるPHR活用による行動変容に関する研究
課題番号
20FA1007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
米田 隆(国立大学法人金沢大学 融合研究域融合科学系)
研究分担者(所属機関)
  • 稲津 明広(金沢大学 保健学系)
  • 村山 敏典(金沢大学附属病院 臨床開発部)
  • 野村 章洋(金沢大学 附属病院 先端医療開発センター)
  • 古川 健治(北陸先端科学技術大学院大学 保健管理センター)
  • 米田 貢(金沢大学 医薬保健研究域保健学系)
  • 高村 禅(北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科)
  • 出村 昌史(金沢大学 医学系)
  • 唐島 成宙(金沢大学 国際基幹教育院(GS系))
  • 米谷 充弘(国立大学法人 金沢大学 附属病院)
  • 南保 英孝(金沢大学 理工学域)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、健康・医療政策をデジタルトランスフォーメーション推進という観点から、マイナポータルと民間PHRをAPI連携し、オンライン特定保健指導、オンライン診療の場でPHR活用の長期有用性評価を行い、デジタルヘルス改革を行う。民間PHRアプリを用いて、マイナポータルから得られる健診・検診データをいかに効果的に表示・提供するか、その利活用による個人の行動変容に関するエビデンスの確立を目的とする。
研究方法
民間PHRアプリを用いて、ライフログと保健医療情報を効果的に明示するPHRアプリを用いた臨床研究を実施する。
① 特定保健指導実施者ならびに健康上問題のある方々に対するPHRの長期の有用性の検討:
研究概要:保健指導対象者の行動変容を検証する2018~2019年度AMED IoT等活用行動変容研究事業「生活習慣病に対するオンライン保健指導サービスと行動変容への検証研究」のデータ・研究フィールドを活用・発展させ、マイナポータル健診データと民間アプリの組み合わせ活用による長期有効性を検証する。加えて、通常健診での単純肥満、運動不足、フレイル・サルコペニア等の方々も対象とする。アプリ介入ではAIキャラクターが、自動メールで、「マイナポータル健診データを閲覧」を促すように設定、健診データを基に行動目標等を決め、行動変容機能で、被検者の行動を評価する。
②  オンライン診療を用いた生活習慣病診療におけるPHRの有用性の検討
研究概要:オンライン糖尿病診療で、マイナポータル健診データと民間アプリの組み合わせ活用の有用性を、従来診療群とランダム化比較試験(RCT)で評価する。現在、通常診療でのPHRアプリを導入RCT研究が、2018年に開始、50例の症例登録済み、これを継続、発展、終了し、「オンライン診療におけるPHRアプリの有用性の検討」との比較データとする。オンライン診療研究では、新規に血糖管理+マイナポータル閲覧奨励追加アプリを用い、3か月毎の対面診療、その間の1か月毎のオンライン診療を組み込む。介入群では、民間アプリのAIキャラクターが、定期的に「マイナポータル健診データの閲覧」を促し、診察時は、医師(ヒト)が、マイナポータル健診経年データを活用し指導する。(オンライン診療時は、血圧、体重、運動、食事、睡眠等データのみだが、対面診療時は、血糖、HbA1C、脂質値等生化学データも用いる。)
結果と考察
① 令和5年3月時点で‘症例130名(アプリ群 90名、従来指導群 40名))解析可能で『アプリ群』と『従来指導群』の2群では、non-HDLの介入前後の変化量 (-2.9vs 16.1 p = 0.03)および総コレステロール値の変化量(0.1 vs. 20.5, p = 0.03)に有意差が見られた。体重の変化量は、アプリ群が従来群より大きい結果であった(-1.7 kg vs -0.3)。行動変容ステージモデルの「維持期」への増加割合は、運動では、アプリ群で +24.2%増(25.8%→50.0%)、従来指導群 +9.8%増(21.6%→31.4%)と共に有意に増加し、アプリ群でその増加割合は有意であった(P=0.03)。食事では、アプリ群 +25.3%増(19.7%→45.0%)、従来指導群 +17.4%増(27.0%→44.4%)、体重測定も、アプリ群 +33.9%増(24.2%→58.1%)、従来指導群 +33.9%増(18.9%→52.8%)と両群ともに増加していた。また、継続率の点でも、保健指導と研究参加に関し、アプリ群では、フォローアップ率89%で従来保健指導率は78%で有意差をもって、高フォローアップ率であった(P<0.001)。保健指導実施期間のアプリの使用継続率を評価では、「アプリの使用継続」という定義を、特定の2週間に1回以上記録(アプリ使用歴)があることとした場合は、体重、食事、血圧記録の継続率は、それぞれ50%、30%,40%であり、体重記録は過去の類似の文献報告(JMIR Mhealth Uhealth2018;6(4):e41)の39%よりは高い結果であった。
② オンライン診療での検討も、令和4年度末の時点では、全結果を得られていないが以後も研究を継続する。途中結果であるが、①の結果と合わせると、PHRでの行動変容の継続率(健診データを見なおす行動に関して)は、保健指導ではPHR使用しな場合は 保健指導ではは8%に対しPHR使用で30%と有用で、オンライン診療で用いるとPHR使用では80%という結果であった。オンライン診療でPHR使用の高い有効性が期待できる。
結論
令和4年度末までの解析でも、PHRの活用は行動変容、一部の臨床データ(脂質等)改善にも有効である。症例数を増やし、他の臨床データ改善のエビデンス構築も期待できる。

公開日・更新日

公開日
2023-08-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202209006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
PHR介入による行動変容は、従来の保健指導より、有用であった。また、さらにオンライン診療での活用は、保健指導に比べても、さらなる高い有用性が認められた。実際の臨床現場でも、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、応用され広まりつつある。高齢者での活用も実際は比較的可能であることが判明、高齢化社会でのDxの普及にもこのPHRサービスは有用であると考えられた。
臨床的観点からの成果
脂質プロフィールに関して、PHR介入は、有意差をもって効果があることが判明した。体重、血圧なども、改善傾向を示しており、症例数を増やし研究継続で、他の臨床データ指標のエビデンス構築ができると判明した。行動変容にも有用で、実際のオンライン診療での活用は高い成果を得られ、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、PHR介入が広がりつつある。
ガイドライン等の開発
すべての解析が終了していないが、まず、中間成績だけでも有用であることが判明しており、生活習慣病に関するガイドライン開発に貢献するため、論文化に取り組んでいるところである。
その他行政的観点からの成果
本研究の最終的な成果は未定だが、中間的な成果だけでも、厚生労働省行政に貢献すると思われ、論文化を急いでいる。また、継続的な研究を行い、さらなる厚生労働行政に貢献する予定である。
その他のインパクト
本研究の取り組みは、他の研究と合わせて、地方紙や地方テレビ局で取り上げられた。医療におけるPHR、マイナポータルの啓蒙に貢献した。また、医師会などの講演会で、取り組みを紹介し、医療におけるDxの必要性を認識する医療従事者が増加した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
202209006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,999,000円
(2)補助金確定額
14,798,000円
差引額 [(1)-(2)]
201,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,484,094円
人件費・謝金 5,010,838円
旅費 63,340円
その他 1,779,057円
間接経費 3,461,000円
合計 14,798,329円

備考

備考
予定より物品費が増額し、旅費が減額したため、「(2)補助金確定額」と支出の「合計」に差異がでた。物品費が増額となった理由としては、新型コロナウイルス感染症で遅れが出ていた臨床研究が進んだこと、中間解析より、よりエビデンスの高い結果を得るため登録症例数を増やす必要性が判明し、その対応として登録症例数が増加したため、各症例に対して、血圧計や体重計の購入が必要となったため。また旅費の減額は、新型コロナウイルス感染症のため、対面会議をオンライン会議に変更せざる状況があり、必要としていた出張旅費が少なくなった。

公開日・更新日

公開日
2023-08-30
更新日
-