文献情報
文献番号
202209003A
報告書区分
総括
研究課題名
喫煙、飲酒等生活習慣の実態把握及び生活習慣の改善に向けた研究
課題番号
20FA1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
尾崎 米厚(鳥取大学 医学部 社会医学講座 環境予防医学分野)
研究分担者(所属機関)
- 兼板 佳孝(日本大学 医学部 社会医学系公衆衛生学分野)
- 神田 秀幸(岡山大学 学術研究院医歯薬学域)
- 樋口 進(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター 臨床研究部)
- 井谷 修(日本大学医学部 社会医学系公衆衛生学分野)
- 地家 真紀(池田 真紀)(昭和女子大学生活科学部食安全マネジメント学科)
- 大塚 雄一郎(日本大学医学部社会医学系公衆衛生学)
- 吉本 尚(筑波大学 医学医療系)
- 金城 文(田原 文)(鳥取大学 医学部 社会医学講座 環境予防医学分野)
- 真栄里 仁(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター教育情報部)
- 美濃部 るり子(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター)
- 桑原 祐樹(鳥取大学医学部環境予防医学分野)
- 春日 秀朗(福島県立医科大学 衛生学・予防医学講座)
- 伊藤 央奈(高橋 央奈)(郡山女子大学 家政学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
若年を中心に女性の多量飲酒問題が相対的に重要性を増しているが、アルコール依存症者の多くは男性であることから、多量飲酒者、依存症者に関する調査は男性を対象としたものが多く、女性の飲酒行動の特徴は十分調査されていない。女性の飲酒行動の特徴次第では、今まで男性の多量飲酒者、依存症者に対して行われてきた減酒支援や断酒支援が当てはまらないかもしれない。本研究に先立ち、当研究班は、2021年度にわが国の女性の飲酒行動に関するインタビュー調査を実施した。その結果、男性と異なる女性の飲酒目的や状況が明らかになった。女性の飲酒行動の特性を明らかにするための調査票を開発し、ウエブ調査を用いた大規模調査を実施した。これにより、女性の飲酒の特徴や、不適切な飲酒と関連する要因を分析し、女性の不適切な飲酒を防止する方策について提言する。
研究方法
2021年9月29日から10月5日にウエブ調査を実施した。インターネット調査会社(楽天インサイト株式会社)に登録しているアンケートモニターで本調査に回答した者15000人を研究参加者とした。女性の20歳代から50歳代では、各10歳階級の回答者数は2,500人、女性の60歳代と70歳代は、各1,000人、男性は、20歳代から70歳代まで、各500人であった。調査終了後、インターネット調査会社が入力されたデータを回収し、個人情報を含まないデータが研究者へ供与された。
調査項目は、次の通りであった。飲酒経験、飲酒頻度、ビンジ飲酒経験、飲むお酒の種類、寝酒頻度、飲酒欲求が駆り立てられる場面、過去1年間の医療機関受診・飲酒アドバイス、アルコール使用障害同定テスト(Alcohol Use Disorders Identification Test:AUDIT)、飲酒場面、新型コロナの飲酒への影響、飲酒の理由、飲酒で起こったこと、減酒支援を受けた経験、飲酒する仕事経験、既往歴、親の飲酒、飲酒者からの嫌な経験、飲酒の害に関する知識、妊娠・出産後の飲酒状況、睡眠、喫煙、K6、新型コロナウイルス感染症の影響、社会経済要因、生理・妊娠・出産経験(女性のみ)であった。調査の開始する際にウエブ回答画面の初めに調査の説明を表示し、調査へ同意すると回答した者に対して調査を実施した。研究計画は、鳥取大学医学部倫理審査委員会で承認された[承認番号:22A007]。
調査項目は、次の通りであった。飲酒経験、飲酒頻度、ビンジ飲酒経験、飲むお酒の種類、寝酒頻度、飲酒欲求が駆り立てられる場面、過去1年間の医療機関受診・飲酒アドバイス、アルコール使用障害同定テスト(Alcohol Use Disorders Identification Test:AUDIT)、飲酒場面、新型コロナの飲酒への影響、飲酒の理由、飲酒で起こったこと、減酒支援を受けた経験、飲酒する仕事経験、既往歴、親の飲酒、飲酒者からの嫌な経験、飲酒の害に関する知識、妊娠・出産後の飲酒状況、睡眠、喫煙、K6、新型コロナウイルス感染症の影響、社会経済要因、生理・妊娠・出産経験(女性のみ)であった。調査の開始する際にウエブ回答画面の初めに調査の説明を表示し、調査へ同意すると回答した者に対して調査を実施した。研究計画は、鳥取大学医学部倫理審査委員会で承認された[承認番号:22A007]。
結果と考察
女性の飲酒パターンは、ふだん飲むお酒の種類(酎ハイ類・カクテル類やワイン)、飲酒欲求を駆り立てられる場面やお酒を飲む場面(特別な食事のとき、配偶者/パートナーといるとき)、お酒を一緒に飲む相手(配偶者/パートナーなど)について、男性と異なる特徴が見られた。飲みやすい味、特別な気分や雰囲気を作るなどのお酒のもつイメージ、一緒にお酒を飲む配偶者/パートナーの存在は、わが国の女性の飲酒につながりやすいことが推察された。女性で週に1回以上飲酒する者において、不適切な飲酒者の飲酒パターンを、不適切な飲酒でない者と比較した。その結果、女性においても、不適切な飲酒者では、ふだん飲むお酒の種類(焼酎、ウイスキー)、飲酒欲求を駆り立てられる場面やお酒を飲む場面(自宅に帰ったとき、1日の仕事が終わったとき)、お酒を一緒に飲む相手(ひとりで)が、男性の飲酒パターンに近い結果であった。
最近は、女性タレントが出演するアルコール飲料の広告も多いことから、女性が試しやすいスタイルと飲料が若年女性に広まってきた可能性がある。AUDITが8~14点、15点以上と高い群ほど、新型コロナ感染拡大前と比べ、飲酒頻度や飲酒量が増えた者の割合が高くなっており、制限や不自由が生じた高ストレス下で、不適切な飲酒者はより不適切な飲酒行動を取ったことが示唆された。
調査結果から、女性の多量飲酒対策として、①.飲酒に対するポジティブなイメージの転換、②.健康診断等の機会を通して問題飲酒のスクリーニングテストを実施し、不適切な飲酒者に対する保健指導の実施、③.母子手帳交付、妊婦健診、産婦健診、赤ちゃん訪問等の場面で、問題飲酒を発見するスクリーニングテスト実施と情報提供が考えられた。特定保健指導における減酒支援の徹底と様々な場面でスクリーニングテストの実施と母子保健場面での飲酒の健康影響に関する情報提供を推進するための対策が求められる。
最近は、女性タレントが出演するアルコール飲料の広告も多いことから、女性が試しやすいスタイルと飲料が若年女性に広まってきた可能性がある。AUDITが8~14点、15点以上と高い群ほど、新型コロナ感染拡大前と比べ、飲酒頻度や飲酒量が増えた者の割合が高くなっており、制限や不自由が生じた高ストレス下で、不適切な飲酒者はより不適切な飲酒行動を取ったことが示唆された。
調査結果から、女性の多量飲酒対策として、①.飲酒に対するポジティブなイメージの転換、②.健康診断等の機会を通して問題飲酒のスクリーニングテストを実施し、不適切な飲酒者に対する保健指導の実施、③.母子手帳交付、妊婦健診、産婦健診、赤ちゃん訪問等の場面で、問題飲酒を発見するスクリーニングテスト実施と情報提供が考えられた。特定保健指導における減酒支援の徹底と様々な場面でスクリーニングテストの実施と母子保健場面での飲酒の健康影響に関する情報提供を推進するための対策が求められる。
結論
本研究で、飲みやすいテイスト、特別な気分や雰囲気を作るなどのお酒のもつイメージ、一緒にお酒を飲む相手の存在は、わが国の女性の飲酒につながりやすいことが推察された。一方、女性の不適切な飲酒者では男性の飲酒パターンに近い結果であった。女性の不適切な飲酒を防止するための対策として、飲酒に対するポジティブなイメージの転換、健康診断や妊娠~授乳期の飲酒スクリーニングと保健指導が考えられた。
公開日・更新日
公開日
2023-08-04
更新日
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