文献情報
文献番号
202209001A
報告書区分
総括
研究課題名
健康増進に向けた住宅環境整備のための研究
課題番号
20FA1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
林 基哉(北海道大学 大学院工学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 佐伯 圭吾(奈良県立医科大学 医学部 疫学・予防医学講座)
- 杉山 大典(慶應義塾大学看護医療学部)
- 池田 敦子(荒木 敦子)(北海道大学 大学院保健科学研究院)
- 長谷川 兼一(秋田県立大学 システム科学技術学部)
- 森 太郎(北海道大学 大学院工学研究院)
- 桑沢 保夫(建築研究所 環境研究グループ)
- 東 賢一(近畿大学 医学部)
- 阪東 美智子(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 開原 典子(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 金 勲(キム フン)(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 小林 健一(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
- 本間 義規(国立保健医療科学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、既往の特別研究の成果に基づいて、健康住宅に求められる条件を整理し、健康住宅のガイドライン作成のための基礎資料を得るとともに、住宅環境改善の健康状態に対する効果の検証を行うことを目的としている。
研究方法
令和2~3年度に、住宅環境に係る健康影響に関するエビデンスの収集・整理を行い、住宅環境の実態と健康影響レベルの想定に関する分析方法を確立する。令和2~4年度に、住宅環境の実態を踏まえた健康リスクの想定を行うとともに、令和3~4年度に、省エネルギー住宅の普及などの動向を踏まえて、住宅環境の改善にともなう健康状態の改善に関する推定と検証を行う。
居住に係る健康エビデンスの収集・整理(R2~R3)では、住宅環境と健康影響・健康増進に関する最新情報を収集してガイドラインに向けて整理する。住宅環境の実態と健康影響の分析(R2~R4)では、総務省統計局住宅・土地統計調査、省エネ住宅普及率を用いた住宅性能の実態の整理、アメダス気象データ、人口動態統計、家計調査を用いた気象と死亡率の関係の分析、室温の死亡率上昇閾値の推計:既存データとコホートデータリンケージによる分析、化学物質及びダンプネスによる健康リスクの実態の調査を行う。住宅環境改善の健康状態に関する効果の検証(R3~R4)では、研究1、研究2を踏まえて、住宅環境の改善による健康増進効果の可能性を明らかにする。
居住に係る健康エビデンスの収集・整理(R2~R3)では、住宅環境と健康影響・健康増進に関する最新情報を収集してガイドラインに向けて整理する。住宅環境の実態と健康影響の分析(R2~R4)では、総務省統計局住宅・土地統計調査、省エネ住宅普及率を用いた住宅性能の実態の整理、アメダス気象データ、人口動態統計、家計調査を用いた気象と死亡率の関係の分析、室温の死亡率上昇閾値の推計:既存データとコホートデータリンケージによる分析、化学物質及びダンプネスによる健康リスクの実態の調査を行う。住宅環境改善の健康状態に関する効果の検証(R3~R4)では、研究1、研究2を踏まえて、住宅環境の改善による健康増進効果の可能性を明らかにする。
結果と考察
WHOは、環境汚染やその他の環境リスクが全死亡の24%を引き起こしており、これらの死亡は、国、地域およびセクターのレベルにおいて、しっかりとした予防措置を講じることで、大幅に削減可能と述べている。
一般集団におけるWHOの冬季の適切な室温に対する認知度は高くないことと考えられ、生活習慣病予防を目的とした住環境整備の一環として冬季の適切な室温維持を普及させるためには、まずはWHOの推奨の認知度を向上させることが重要と考えられる。
わが国における日中室温と外気温の関連を一般加法モデルで用いて回帰した結果から、総死亡の相対危険が上昇する室温の閾値を推定し、室温維持の重要性を確認した。
気象条件と死亡に関する分析によって、夏期の温度上昇よりも冬期の温度低下が死亡率上昇に与える影響が強く、その感度は寒冷地よりも温暖地の方が高かった。特に温暖地での断熱性能の強化と寒冷地でもエネルギー価格の上昇をふまえたさらなる断熱性能の向上が必要であることが示唆された。
健康リスクを低減する健康住宅の要素を抽出し再構築して,健康住宅ガイドラインに資する基礎資料を作成し、情報活用例として,換気行動に着目した居住リテラシーの統合モデル構築を試行した。
現状において省エネルギー施策に伴う断熱化による温熱環境の改善効果は確認できたが、その発現は緩やかであり、現時点から室温が有意に上昇するには15年の期間を有し、WHOが提唱している18℃以上を維持するには至っていないことがわかった。
居住環境と疾病、障がい、高齢化、QOL の関係、医療費及び環境改善費の関係について整理を行い、住宅環境の改善効果の波及範囲に関する考え方を示した。
一般集団におけるWHOの冬季の適切な室温に対する認知度は高くないことと考えられ、生活習慣病予防を目的とした住環境整備の一環として冬季の適切な室温維持を普及させるためには、まずはWHOの推奨の認知度を向上させることが重要と考えられる。
わが国における日中室温と外気温の関連を一般加法モデルで用いて回帰した結果から、総死亡の相対危険が上昇する室温の閾値を推定し、室温維持の重要性を確認した。
気象条件と死亡に関する分析によって、夏期の温度上昇よりも冬期の温度低下が死亡率上昇に与える影響が強く、その感度は寒冷地よりも温暖地の方が高かった。特に温暖地での断熱性能の強化と寒冷地でもエネルギー価格の上昇をふまえたさらなる断熱性能の向上が必要であることが示唆された。
健康リスクを低減する健康住宅の要素を抽出し再構築して,健康住宅ガイドラインに資する基礎資料を作成し、情報活用例として,換気行動に着目した居住リテラシーの統合モデル構築を試行した。
現状において省エネルギー施策に伴う断熱化による温熱環境の改善効果は確認できたが、その発現は緩やかであり、現時点から室温が有意に上昇するには15年の期間を有し、WHOが提唱している18℃以上を維持するには至っていないことがわかった。
居住環境と疾病、障がい、高齢化、QOL の関係、医療費及び環境改善費の関係について整理を行い、住宅環境の改善効果の波及範囲に関する考え方を示した。
結論
住宅環境の実態を踏まえた健康リスクの想定を行い、省エネルギー住宅の普及などの動向を踏まえて、住宅環境の改善にともなう健康状態の改善に関する推定と検証を行った結果、住宅性能の向上を加速させることに加えて、既存の住宅及びハイリスク対象の住居における、居住リテラシーの醸成が必要であることを示した。
公開日・更新日
公開日
2023-08-01
更新日
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