文献情報
文献番号
200909008A
報告書区分
総括
研究課題名
難治がんの創薬バイオマーカー探索研究
課題番号
H20-バイオ・一般-012
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山田 哲司(国立がんセンター研究所 化学療法部)
研究分担者(所属機関)
- 金井 弥栄(国立がんセンター研究所 病理部)
- 中山 敬一(九州大学生体防御医学研究所)
- 近藤 格(国立がんセンター研究所 プロテオームバイオインフォマティクスプロジェクト)
- 本田 一文(国立がんセンター研究所 化学療法部)
- 柴田 龍弘(国立がんセンター研究所 ゲノム構造解析プロジェクト)
- 浅村 尚生(国立がんセンター中央病院 第一領域外来部)
- 小菅 智男(国立がんセンター中央病院)
- 工藤 雅文(アステラス製薬株式会社薬理研究所 癌研究室)
- 竹内 雅博(アステラス製薬株式会社薬理研究所 癌研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬バイオマーカー探索研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年多キナーゼ阻害薬であるsorafenib (BAY 43-9006)が進行した肝細胞がん患者の生存期間を有意に延長することが第3相試験にて報告され、米国の米国食品医薬品局に切除不能の肝細胞がん患者の治療薬として承認されている。しかしこの臨床試験は比較的良好な肝機能を示す症例に限られ、肝機能の予備能の乏しい症例での有効性については明らかではなかった。背景肝組織で発現せず、肝細胞がん組織に特異的に発現し、肝細胞がん細胞の増殖に必須な分子を同定できれば、肝細胞がんの新たな治療薬の標的になるものと考えられる。
研究方法
国立がんセンター中央病院にて切除を受けた20症例の肝細胞がんのがん組織と背景肝組織、19種類の全身の正常組織を用いて、ヒト全エクソンにプローブの設計されたHuman Exon 1.0 ST arrays (Affymetrix社製)にてゲノム網羅的なエクソンレベルでの遺伝子発現解析を行った。
結果と考察
エクソンアレイを用いて網羅的な遺伝子発現解析を行い、多段階の検証・特異性の検討・機能解析を行い、最終的に治療標的候補分子としてAKR1B10, HCAP-G, RRM2, TPX2の4遺伝子を同定した。これら4種類の遺伝子の発現をRNA干渉にて抑えると、免疫不全マウスに移植した腫瘍の増殖が有意に抑制されることが明らかになった。これら4種類の遺伝子産物は肝細胞がんで著明に発現し、有望な治療標的分子であると考えられた。
結論
今後はこれらの遺伝子に対するsiRNAを用いた核酸治療、あるいはAKR1B10とRRM2は酵素であるため、これに対する阻害化合物の開発に取り組む。肝臓に特異的にsiRNAをデリバリーする方法は既にいくつか考案されているものがある。これら4遺伝子の発現は背景肝組織での発現が低くsorafenib治療の対象にならない肝機能の不良症例でも、副作用を抑えた治療が可能であるかもしれない。
公開日・更新日
公開日
2011-05-19
更新日
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