がん診療連携拠点病院等における緩和ケアの質の向上に資する実地調査の実装、及びがんと診断された時からの緩和ケアの更なる推進に資する研究

文献情報

文献番号
202208050A
報告書区分
総括
研究課題名
がん診療連携拠点病院等における緩和ケアの質の向上に資する実地調査の実装、及びがんと診断された時からの緩和ケアの更なる推進に資する研究
課題番号
22EA2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小川 朝生(国立研究開発法人国立がん研究センター 先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野)
研究分担者(所属機関)
  • 木澤 義之(筑波大学 医学研究系)
  • 宮下 光令(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 中澤 葉宇子(国立がん研究センター がん対策情報センター がん医療支援研究部)
  • 川越 正平(あおぞら診療所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん対策推進基本計画においては、がんと診断された時からの緩和ケアを推進することを掲げられている。しかし、均てん化に関しては、患者体験調査等を通して、提供されている緩和ケアの質に施設間差があることが指摘されてきた。本研究では、都道府県行政が主体となり、
① がん診療連携拠点病院等を対象に緩和ケアの提供体制やその質に関する効率的かつ有用性の高い実地調査を行い、PDCAサイクルを確保できる実地調査の方法を開発すること
② 実地調査の実効性等の検証を行い、公開・実装する
ことを目的としている。
研究方法
本研究では、地域緩和ケア、がん診療連携拠点病院の緩和ケアの提供に関して、効果的な介入を検討するために、ロジックモデルを構築することを目指している。目標を達成するために、以下の方法を予定した。
1. 地域緩和ケア、がん診療連携拠点病院の提供する緩和ケアに関するロジックモデルの構築
 「疾病・事業及び在宅医療に係る医療提供体制の構築に係る指針」(2017)、および医療法改正の付帯決議に基づき、アウトカム目標の設定と指標を用いたプログラム評価に基づく実地調査方法を検討・作成する。

1. 実施されてきた施策の効果検証、緩和ケアの現状と将来に関するデータの収集と分析
現在の基本計画までに実施されてきた施策を整理し、地域緩和ケアの現状と今後の利用頻度、リソースに関するデータを収集する。
あわせて、実地調査に関する先行例を収集し、現状の課題を把握する。
2. ロジックモデルの構築
プログラム評価に則り、目標と基本的な施策を作成する
3. ステイクホルダーとの調整
関連領域(がん治療医、在宅医、訪問看護)の医療者、行政(都道府県担当者、市町村の地域包括ケア担当者)、患者支援団体、住民などの医療ニーズや意見の把握・聴取
4. マニュアルの原案作成
修正を加えた後に、評価指標や数値目標を設定するとともに、指標の収集方法も定め、マニュアルの原案を作成する。

2. 実施可能性の検討
地域向け、がん診療連携拠点病院に向けに作成したマニュアル原案をもとに試行し、実施可能性を検証する。
試行とあわせて、実施プロセスを実装フレームワークに基づいて追跡する。各施設の実働スタッフならびに導入を担当したコアメンバー、管理者を対象にインタビュー調査を実施し、課題を抽出し、マニュアルに反映させる。

 本年度は、第4期がん対策推進基本計画の改定前であることから、改定後を見越して現状把握を行った。
 実施は、
1 実地調査の先行例を収集し、実地調査に関する現状把握
2 今まで実施されてきた緩和ケアの施策の効果検証、緩和ケアの現状と将来に関するデータ収集
の2点を中心に行った。
結果と考察
1)実地調査の先行例を収集し、実地調査に関する現状把握
実地調査を行っていた県は2県あった。
そのうちの1県では、県の緩和ケア部会を中心に、19項目で構成する県内共有の評価指標を設定し、各拠点病院のデータを収集していた。もう一つの県では、県の緩和ケア部会が主体となり、緩和ケアチーム研修会の一環としてPDCAサイクルに取り組んでいた。

2)今まで実施されてきた緩和ケアの施策の効果検証、緩和ケアの現状と将来に関するデータ収集
 がん診療連携拠点病院の緩和ケア担当者に対して、拠点病院新整備指針(2022)の臨床への反映状況と地域連携の質の向上に向けたロジックモデルの採用状況を尋ねた。453施設中259施設(57.2%)より回答を得た。
各拠点病院の担当範囲と想定される二次医療圏内において、緩和ケアの地域連携体制に関係する施設協議体は、24.3%に管理者・実務者別の会議体が、62.2%は管理者・実務者一緒の会議体があった。
 緩和ケアに関するロジックモデルについては、67.6%が緩和ケアの地域連携の課題に応じた数値目標を設定していない、56.8%が地域連携の目的や目標達成に向けて活動計画を設定していない、78.4%が緩和ケアの地域連携の目標と活動計画の関連(ロジックモデル)を明確にしていないと回答した。
結論
実地調査に関する事務関連の業務負担が少なく、共有する場をどのように構築するかが実装する上での課題であることも確認できた。しかし、ロジックモデルの構築は一部に留まっており、ロジックモデルの知識と理解が前提として必要な段階であった。実地調査モデルを開発するためには、具体的な方法を提示する必要がある。
今後は、都道府県がん対策担当者の現状把握を行うとともに、具体的な実施モデルの構築に向けた検討を進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202208050Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,280,000円
(2)補助金確定額
4,553,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,727,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 146,783円
人件費・謝金 746,810円
旅費 127,388円
その他 1,852,688円
間接経費 1,680,000円
合計 4,553,669円

備考

備考
自己資金:669円

公開日・更新日

公開日
2024-05-23
更新日
-