大規模生体内分子測定による薬物誘発性肝障害バイオマーカーの探索研究

文献情報

文献番号
200909007A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模生体内分子測定による薬物誘発性肝障害バイオマーカーの探索研究
課題番号
H20-バイオ・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
曽我 朋義(慶應義塾大学 環境情報学部 および 先端生命科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 本間 雅(東京大学医学部附属病院薬剤部)
  • 渡部 浩治(アステラス製薬株式会社安全性研究所)
  • 奈良岡 準(アステラス製薬株式会社安全性研究所)
  • 竹内 健一郎(アステラス製薬株式会社安全性研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬バイオマーカー探索研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
一般に薬物誘発性毒性は肝障害として現れる例が多く、東大病院においても、薬物性肝障害発症患者は年間約100名程度と見積もられている。しかしながら、薬物性肝障害に共通する特徴的な所見は必ずしも無く、現状では確定診断は困難である。また、糖尿病治療薬トログリタゾンのように投与中止後も症状が悪化する例も報告されており、確定診断を可能にする所見の発見は急務である。本研究は、最新の測定技術を用いて生体内の内因性分子を大規模に測定し、薬物性肝障害の早期かつ正確な診断マーカーの開発を目指すものであり、平成20年度より5年計画で実施する。
研究方法
薬物性肝障害モデル動物を構築し、コントロール動物の肝臓と血清の生体内分子を網羅的に測定・比較することで、ヒトの臨床を反映する薬物性肝障害マーカーを探索する。さらに薬物性肝障害およびウイルス性肝炎など他の肝障害疾患の患者および健常人の血液検体を測定し、実臨床において有用な薬物性肝障害マーカーを開発する。
結果と考察
平成21年度は、初年度に確立した技術的基盤に立脚し、モデル動物の解析より見出されたバイオマーカー候補物質に関して、ヒト臨床検体を用いて検証を行った。また、薬物性肝障害の発症メカニズムとの関連に関しても検討を加えた。その結果、肝障害に広く共通するバイオマーカーとして、複数のオフタルミン酸関連ペプチドを見出し、またそれらの濃度変動を組み合わせることで、発症原因を峻別診断できる可能性が示された。この結果は同時に、肝臓内グルタチオン・レベルの低下が、肝障害発症に関連する重要なメカニズムの一つとなっている可能性を強く示唆している。この点は、動物モデルを用いた薬物性肝障害の発症メカニズム解析からも、強く支持される結果となった。さらに、薬物誘発性肝障害が急性肝障害であることを反映して、特異的に変動すると考えられるバイオマーカー候補物質を新たに2種類見出すことができた。
結論
平成21年度までに、ヒトにおける広範な肝障害に共通するバイオマーカーとして、オフタルミン酸関連ペプチドを見出すことに成功した。平成22年度以降は、新たに見出されているバイオマーカー候補分子2種類に関して、その変動メカニズムを臨床検体および動物モデルを用いた検討を通じて明らかにし、ヒトにおける診断バイオマーカーの確立・検証に向けた準備を進める予定である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-19
更新日
-