文献情報
文献番号
202208048A
報告書区分
総括
研究課題名
新型コロナウイルス感染症によるがん診療及びがん検診などの受診状況の変化及び健康影響の解明にむけた研究
課題番号
21EA2003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 宏和(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所検診研究部検診実施管理研究室)
研究分担者(所属機関)
- 祖父江 友孝(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 社会医学講座環境医学)
- 後藤 温(国立がん研究センター 社会と健康研究センター 疫学研究部 代謝疫学研究室)
- 松本 綾希子(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部)
- 町井 涼子(国立がん研究センター がん対策情報センターがん医療支援部検診実施管理支援室)
- 土岐 祐一郎(大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学)
- 佐藤 靖祥(東京大学医学部附属病院 外来化学療法部・腫瘍センター)
- 石井 太祐(国立がん研究センター がん対策研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,485,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
新型コロナウイルス感染症の影響により、がん検診やがん医療の受診状況に変化が起きていること示唆されている。がん検診については、2020年4月から5月にかけて受診者が減少していることが、医療機関から報告されており、がん医療については受診控えによるがん発見や治療の遅れが危惧されている。本研究においては、わが国におけるがん検診の受診状況や、がん医療の受療行動における、新型コロナウイルス感染症の影響を検討することを目的とする。
研究方法
がん検診の受診状況や、がん医療の受療行動における、新型コロナウイルス感染症の影響を把握するために、1)がん検診受診者数、2)がん罹患者数、3)受療行動について検討する。研究統括は高橋が行う。
1)がん検診受診者数
地域住民検診によるがん検診受診者数は、地域保健・健康増進事業報告で年次ごとに集計されているため、新型コロナウイルス感染症による影響を評価するのは難しい。そのため、がん検診受診者数の月次データを計上できる検診実施機関に協力を募り、前年同月比を算出する。すでに、厚生労働科学研究班「がん検診の適切な把握法及び精度管理手法の開発に関する研究」班において、これらデータの提供を受けている日本対がん協会、全国労働衛生団体連合会、聖隷福祉事業団から協力への同意を得ており、引き続き連携体制を維持する。(町井)
2)がん罹患者数
2021年の新型コロナウイルス感染症に関するがん罹患・診療への影響を迅速に把握するため、全国がん登録よりもより早くデータが収集され、日本のがん患者の約70%をカバーする院内がん登録を用いて、がん罹患数を推定するとともに、前年2019年診断例と比較しての検診での発見例の割合、UICC TNM分類による病期分布等のがん診療について把握を行う(石井)。
3)受療行動
新型コロナウイルス感染症はがん医療へのアクセスにも影響することが予想される。がん診療連携拠点病院等への調査により、がん診療への影響を検討する(高橋)。受診行動や受療行動の変化については、Webによる全国調査を解析することにより評価を試みる(松本)。さらに、JMDCレセプトデータやDPCデータにより、2019年~2020年の2年間の受療行動の比較を行う(後藤温先生)。
1)がん検診受診者数
地域住民検診によるがん検診受診者数は、地域保健・健康増進事業報告で年次ごとに集計されているため、新型コロナウイルス感染症による影響を評価するのは難しい。そのため、がん検診受診者数の月次データを計上できる検診実施機関に協力を募り、前年同月比を算出する。すでに、厚生労働科学研究班「がん検診の適切な把握法及び精度管理手法の開発に関する研究」班において、これらデータの提供を受けている日本対がん協会、全国労働衛生団体連合会、聖隷福祉事業団から協力への同意を得ており、引き続き連携体制を維持する。(町井)
2)がん罹患者数
2021年の新型コロナウイルス感染症に関するがん罹患・診療への影響を迅速に把握するため、全国がん登録よりもより早くデータが収集され、日本のがん患者の約70%をカバーする院内がん登録を用いて、がん罹患数を推定するとともに、前年2019年診断例と比較しての検診での発見例の割合、UICC TNM分類による病期分布等のがん診療について把握を行う(石井)。
3)受療行動
新型コロナウイルス感染症はがん医療へのアクセスにも影響することが予想される。がん診療連携拠点病院等への調査により、がん診療への影響を検討する(高橋)。受診行動や受療行動の変化については、Webによる全国調査を解析することにより評価を試みる(松本)。さらに、JMDCレセプトデータやDPCデータにより、2019年~2020年の2年間の受療行動の比較を行う(後藤温先生)。
結果と考察
悉皆性の高いデータをもとに、新型コロナウイルスのがん診療およびがん検診に与えた影響について評価を行った。がん検診受診者数、がん罹患者数、がん関連手術件数などは、おおむね2020年4-6月に大きく減少したのち、徐々に回復する傾向にあった。2020年度と比べ、2021年度は減少分のおおよそ半分まで回復した。本検討においては、がんによる死亡者数の変化まで評価できていないため、中長期的な影響を評価することが望ましい。
結論
新型コロナウイルス感染症によるがん検診やがん医療は、感染者数の増加よりも、第1回目の緊急事態宣言ならびにそれによる対策により大きな影響を受けた。この影響は職域に比べ住民検診に大きく、より早期のがんにおいて大きく、緊急事態宣言の発出された都道府県において大きい傾向にあった。今後は、がんによる死亡者数の変化を解析すること、ならびに来るべき有事への対応策の検討などが望まれる。
公開日・更新日
公開日
2023-07-04
更新日
-