小児がんの統合病理診断体制に関する研究

文献情報

文献番号
202208047A
報告書区分
総括
研究課題名
小児がんの統合病理診断体制に関する研究
課題番号
22EA1007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
義岡 孝子(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 病理診断部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 達也(国立研究開発法人 国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター)
  • 谷田部 恭(愛知県がんセンター 中央病院 遺伝子病理診断部)
  • 中澤 温子(中川 温子)(埼玉県立小児医療センター臨床研究部)
  • 大喜多 肇(国立成育医療センター)
  • 井上 健(大阪市立総合医療センター 病理診断科)
  • 柳井 広之(岡山大学病院 )
  • 小田 義直(九州大学大学院 医学研究院 形態機能病理学)
  • 加藤 元博(国立大学法人東京大学 医学部附属病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
15,380,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児がんの病理診断にでは、十分な経験と専門的知識を有する病理診断医が限られているため、大学病院やがんセンターなどの専門医療施設であっても、迅速な病理診断とそれに基づく最適かつ早期の治療開始が困難な状況にある。また小児がんの治療は化学療法が主体で、治療の層別化の根拠となるリスク分類には遺伝子解析を含めた病理診断が不可欠で、現状では、日本小児がん研究グループ(JCCG)の研究として行われている中央診断が、小児がんのエキスパート病理医による質の高い病理診断として、治療方針の決定に役立っている。しかし、研究として行われている中央病理診断には、後継者不足や運営基盤、必要な特殊補助診断法(専門的な免疫染色・遺伝子解析)のための試薬・技師・医療機器の資金不足など、様々な問題があり、質の高い小児がん病理診断をもとに治療を行う体制の持続可能性が危ぶまれている。
 本研究では、JCCGで構築された中央病理診断システムを医療経済的な観点を含めて見直し、より効率的で精度の高い統合的な病理診断に向けた具体的な体制を提案し、「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」にエビデンスを提供して小児がん拠点病院等の整備指針の策定に活用することを目標とする。
研究方法
令和4~5年度には①小児がん中央機関・拠点病院及び連携病院における病理診断の現状(小児固形腫瘍の病理診断・術中迅速診断数、検体提出から確定診断までの時間、免疫染色・遺伝子解析などの特殊検査への依存度・検査施設等、小児がん専門病理医の診断へのアクセス方法、病理専門医、病理検査技師・事務担当者の人員など)調査による問題点の抽出、②JCCG中央病理診断システムに係る経費、診断の迅速性の調査および集約化することの利点と問題点の検討、③既存の遺伝子パネル検査やメチル化解析の小児がん診断における有用性の検討、④小児がん病理診断ガの策定を目標とする。令和5~6年度には⑤小児がんエキスパート病理診断(仮)(小児がんについて十分な診断経験と専門的知識を有する病理医による診断)が迅速に受けられるために、①②の問題点を克服すべく、③の検討結果を検証した上で、小児がん中央機関及び拠点病院等において構築すべき体制の提案と病理診断に必要な検査項目(上記④のガイドラインに準拠)および保険診療下での持続可能な小児がんエキスパート病理診断体制の提案を行うことを目指す。
結果と考察
小児がんの病理診断体制の現状は、専門性を有する病理医不足や、中央病理診断にかかる経費の調達先など、様々な問題を抱えており、質の高い病理診断を元に治療を行う体制の持続可能性が危ぶまれている。本研究では、JCCGで構築された中央病理診断システムを医療経済的な観点を含めて見直し、より効率的な制度の高い統合的な病理診断ができる具体的な体制を提案することを目的とする。
令和4年度では、まず、現状把握として中央病理診断にかかる費用を算出した。2019年(令和元年)より、中央病理診断依頼数は年間1,000件を越え、概ね年間1,200件である。消耗品にかかる費用は、2020年は約17,000,000円、2021年は約15,000,000円であった。これには脳腫瘍の分子診断費用は含まれていないことから、さらに詳細な解析が必要であり、令和5年度には、小児がん拠点病院・連携病院から得たアンケート調査結果を含めて詳細な検討を要する。

結論
日本小児がん研究グループの研究として行われている中央病理診断の症例数、診断にかかる経費などを明らかにした。
1)調査方法:JCCG小児固形腫瘍観察研究に登録された症例で、2020年および2021年に中央病理診断に提出された症例において、腫瘍グループ別に件数、免疫染色にかかる経費、RT-PCRに係る経費、FISHにかかる経費を求める
2)免疫染色は、1,500円/1枚、RT-PCRは10,000円/1種、FISHは20,000円/1枚で計算した。上記検査は国立成育医療研究センターで施行している検査に限り、脳腫瘍の中央分子診断施設(大阪医療センター、順天堂大学)で行っている検査の経費は含まれていない。今回の調査では脳腫瘍の分子診断にかかる経費が含まれておらず、近年、診断ツールとして用いられるメチル化解析の経費も含まれていないため、2022年のデータ解析は、脳腫瘍の分子診断やメチル化解析の経費も含めて解析を行う。
 令和5年度に明らかとする小児がん拠点病院・連携病院へのアンケート調査結果と合わせ、診断に必須である検査、それに係る経費などを考慮し、持続可能な中央病理診断体制を提案するための基礎データとする。

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202208047Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,994,000円
(2)補助金確定額
19,987,000円
差引額 [(1)-(2)]
7,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,976,174円
人件費・謝金 328,457円
旅費 0円
その他 68,860円
間接経費 4,614,000円
合計 19,987,491円

備考

備考
491円は自己資金で補ったため

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
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