文献情報
文献番号
200909005A
報告書区分
総括
研究課題名
プロテオーム解析による糖尿病性細小血管症の早期診断マーカーの探策
課題番号
H20-バイオ・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
春日 雅人(国立国際医療センター 研究所)
研究分担者(所属機関)
- 野田 光彦(国立国際医療センター戸山病院)
- 鏑木 康志(国立国際医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬バイオマーカー探索研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年急増している糖尿病の特徴は慢性的な経過で糖尿病性細小血管症を合併することであり、その進行と伴に失明、腎不全、下肢切断等の重篤な合併症を引き起こす。本計画では、この糖尿病性細小血管症を早期に診断可能な血清及び尿のバイオマーカー探索を目的とする。
研究方法
健常者500名、2型糖尿病患者1000名から血清及び尿検体を採取すると共に、2型糖尿病患者からは糖尿病性細小血管症の有無及び進行度を含む詳細な臨床情報を収集する。臨床検体にて探索するバイオマーカー候補蛋白は、主に培養細胞や疾患モデル動物のトランスクリプトーム解析にて探索する。これらのバイオマーカー候補蛋白の臨床検体での定量解析は、今年度別予算にて導入された質量分析器を用いたMRM法での解析を中心にして行う。
結果と考察
健常者、2型糖尿病患者の臨床検体及び臨床情報については今年度から収集を開始し、さらに他の2つの医療機関にて収集する準備を整えた。バイオマーカー候補蛋白探索のためのトランスクリプトーム解析を、まずhigh glucose処理にてROSの産生が確認された各種臓器由来の内皮細胞にて行い、網膜及び糸球体由来内皮細胞にて有意に発現上昇する複数の分泌蛋白を検出した。その一部について、健常者血清を試料としてMRM法による予備解析を行い、各蛋白由来のペプチド及びそのプロダクトイオンの検出が可能であった。なお、本計画では当初臨床検体をまずiTRAQ法を用いた網羅的定量法で解析する予定であったが、血清あるいは尿にて有意な変動がみられた蛋白であってもその由来する臓器、糖尿病の様々な病態との関連性を検証することが困難なこと、測定感度がMRM法と比較して低いことから、MRM法を用いた解析を本計画の中心とすることに変更した。
結論
本研究は初期の糖尿病性細小血管症を簡便に診断可能なバイオマーカー開発を目標としている。今年度にMRM法を中心とした研究デザインに変更したことにより、糖尿病性細小血管症との関連性が証明済みのバイオマーカー候補蛋白をより高感度に定量することが可能となってきた。糖尿病性細小血管症の詳細な臨床情報を有する臨床検体を試料として、MRM法等にて糖尿病性細小血管症との関連性を検証することによって、簡便な診断法が確立されれば糖尿病性細小血管症の早期治療に有用であり、その意義は大きい。
公開日・更新日
公開日
2011-05-19
更新日
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