子宮頸がん検診におけるHPV検査導入に向けた実際の運用と課題の検討のための研究

文献情報

文献番号
202208042A
報告書区分
総括
研究課題名
子宮頸がん検診におけるHPV検査導入に向けた実際の運用と課題の検討のための研究
課題番号
22EA1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
青木 大輔(慶應義塾大学 医学部 産婦人科学)
研究分担者(所属機関)
  • 八重樫 伸生(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科 婦人科学分野)
  • 藤井 多久磨(藤田医科大学 医学部 産婦人科学)
  • 宮城 悦子(横浜市立大学 大学院医学研究科 生殖生育病態医学)
  • 中山 富雄(国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
  • 齊藤 英子(国際医療福祉大学三田病院 予防医学センタ-)
  • 森定 徹(杏林大学 医学部 産科婦人科学教室)
  • 高橋 宏和(国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
  • 戸澤 晃子(小野 晃子)(聖マリアンナ医科大学 医学部産婦人科)
  • 雑賀 公美子(JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター 総合医療情報センター  )
  • 黒川 哲司(福井大学 学術研究院医学系部門 産科婦人科学)
  • 上田 豊(大阪大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国立がん研究センターより「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン2019年度版」(ガイドライン)が刊行され、検診方法の推奨として細胞診単独法の推奨グレードAと並んでHPV検査単独法:同A、細胞診・HPV検査併用法:同Cが示された。またHPV検査を導入して効果を上げるためには、検診プログラムの手順と運用方法(アルゴリズム)の検討と決定、さらに検診提供者と受診者とがそのアルゴリズムを遵守できるような工夫と精度管理が必要とされている。地域住民検診の内容の決定においては、科学的根拠に基づくがん検診ガイドラインでの推奨に加え、検診の精度管理のあり方を含む実際の運用方法を決定するという過程を経る必要がある。本研究では前年度までの研究に引き続いて、実際の運用を検討する際の根拠とする学術的見解を示すことを目的とする。
研究方法
以下4つの項目について調査を行う。
(1)HPV検査を用いた子宮頸がん検診のアルゴリズム内の追跡精検に関する検討:
HPV検査陽性の多くはその時点では病変を有していないものの、その後に病変が発生する可能性があるリスク保持者である。このHPV検査陽性/細胞診陰性者に対してどの精密検査をどのタイミングで行うのが最適かについて統一した見解がない。そこでHPV検査陽性/細胞診陰性者のわが国における管理方法決定に資する文献を収集・検討した。まず、HPV検査陽性/細胞診陰性者の管理法に関する情報を含む論文を抽出するために、キーワードを用いて文献の抽出を行った。
(2) HPV検査を用いた子宮頸がん検診を運用する際の課題の検討:
HPV単独検診を導入している国(豪州・蘭・英・フィンランドなど)における検診の運用の問題点について調査を行った。また、HPV検査を用いた検診についての運用経験のある市町村に対する実態調査の準備を行った。
(3) HPV検査を用いた子宮頸がん検診を導入する際の課題の検討:
HPV検査による検診では、トリアージとして細胞診も同一検体を用いて行いうる液状化検体(LBC)が採用される可能性が高いが、LBCのわが国の充足状況の情報は得られていない。そこで検査関連施設等へのヒアリングおよびアンケートを実施した。
(4)細胞診単独検診におけるASC-USの取り扱いについての検討:
細胞診判定ASC-USの取り扱いについてわが国で実施可能性のある管理方法について検討した。
結果と考察
(1)網羅的に文献抽出とハンドサーチの結果、673の文献を得た。研究分担者により今回の目的を満たさないと判断される論文を除外し検診アルゴリズムについて記載のある56文献(87個のアルゴリズム)を選別した。そのうち48のアルゴリズムでHPV単独法と陽性者に対しては細胞診トリアージが採用されており、ガイドラインの推奨グレードも勘案すると本法がわが国でも採用されるべきと考えられた。また、30のアルゴリズムでHPV検査陽性/細胞診陰性者の追跡生検としてHPV検査が用いられていた。
(2 )欧州でHPV検査の導入が始まった2017年以降で、HPV検査を用いた検診の運用上の問題点に関する論文を検索した。この検診では検診間隔が延長できるため、検診登録システムの混乱、受診率への影響などが課題として報告されていた。さらに、HPV検査を用いた検診の実施可能性についてのアンケートとしては「子宮頸がん検診における細胞診とHPV検査併用の有用性に関する研究(日本医療研究開発機構)」に参画した市町村を対象とすることとし、実態調査の準備としてHPV検査を用いた検診の実施可能性についてのアンケートフォームを作成した。
(3) HPV検査を用いた子宮頸がん検診を導入する際の課題の検討
細胞診判定をしている衛生検査所等やLBCを作成する大型機器を販売する企業および国内で細胞診を取り扱う大手検査会社にヒアリングを行った結果、現時点でLBCの件数は少ないものの検査として実施可能であることが確認された。
(4) ASC-USの取り扱いについて現行の管理方法(直ちにコルポ診、6, 12, 18ヶ月の細胞診、HPV検査によるトリアージ)について海外論文のレビューを行った。またASC-USの運用方法について、わが国の検診実施施設のデータをもとに検討し、ASC-USの後はHPV検査によるトリアージに限定すべきことを論文として公表した。
結論
今回の検討により、HPV検査陽性/細胞診陰性者の管理については、HPV検査による追跡精検が妥当と考えられた。しかしながら実際の想定される運用上の問題点を含めて、わが国で実施可能なHPV検診のアルゴリズムを構築するためにはさらなる調査、および関係者のコンセンサスの醸成が必要であることがわかった。またHPV検診を運用・導入面においても液状化検体のインフラなど、先立って準備しておくべき項目も明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202208042Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,400,000円
(2)補助金確定額
10,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,229,961円
人件費・謝金 634,988円
旅費 454,808円
その他 2,681,330円
間接経費 2,400,000円
合計 10,401,087円

備考

備考
1,087円は自己資金より支出

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-