文献情報
文献番号
200909002A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤性腎障害の非侵襲性マーカーの探索と臨床的重要性の解明に関する研究
課題番号
H20-バイオ・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
増田 智先(京都大学医学部附属病院 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
- 深津 敦司(京都大学医学部附属病院 腎臓内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬バイオマーカー探索研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
44,341,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
腎障害を誘発・増悪させる潜在的要因を持つ患者への様々な薬物の使用には、腎機能(尿細管薬物輸送能)を正確に把握した上で患者個々に応じた薬物投与設計に加え、薬剤性腎障害の速やかな発見と適切な対応が望まれている。本研究では、ヒト尿検体、腎生検組織を用いたプロテオミクス、トランスクリプトーム、病理解析を並行して、より迅速かつ的確な薬剤性腎障害の非侵襲性マーカー探索とその臨床的重要性を解明するという計画を立案した。
研究方法
ラット薬剤性急性腎不全(AKI)モデル尿を用いたプロテオーム、慢性腎不全モデルラット腎より単離した近位尿細管を用いたトランスクリプトーム解析を行った。また、ヒト腎生検組織を用いた尿中プロテオーム解析並びにトランスクリプトーム解析を行った。さらに、シスプラチンを投与された患者由来の尿検体を用いて、尿中バイオマーカーの測定とその評価を行った。
結果と考察
ラット単離近位尿細管を用いたマイクロアレイ解析によって、代償性腎不全期(欠落した細胞を補うための増殖反応)には細胞周期分裂期のCyclin B2やCdc2が、末期腎不全期においては、mTOR経路の活性化が重要な役割を担うことを明らかにした。バンコマイシン及びシスプラチン腎症モデルラット尿及び慢性腎臓病患者の尿、バンコマイシン腎症患者由来の尿を用いたメタボローム解析及びプロテオーム解析から、個々の薬物による腎症を反映しうる分子の特定を行い、低分子化合物についてはLC-MS/MS法による4化合物の同時測定系を確立した。さらに、ヒト腎生検組織を用いたマイクロアレイ解析を進めると同時に、ヒト尿検体を用いた網羅的なELISA系の実施によって、ケモカインCCL2(MCP-1)の尿中への漏出が近位尿細管上皮細胞の障害と対応すること、このタンパク質は軽度シスプラチン腎症モデルラットを用いたマイクロアレイ解析でも発現亢進すること、シスプラチン投与を受けている肺がん患者の尿においても見いだされ、新しい尿中バイオマーカーとして有望であることが強く示唆された。
結論
当初の計画を順調に達成することができ、次年度以降の継続にあたり研究計画の変更は不要であると結論するに至った。特に、シスプラチン腎症の尿中バイオマーカーとしてMCP-1が見出された。
公開日・更新日
公開日
2011-05-19
更新日
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