特異体質性薬物誘導性肝障害のバイオマーカーの検討および予測評価試験系の開発研究

文献情報

文献番号
200909001A
報告書区分
総括
研究課題名
特異体質性薬物誘導性肝障害のバイオマーカーの検討および予測評価試験系の開発研究
課題番号
H20-バイオ・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
横井 毅(国立大学法人 金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 美紀(国立大学法人 金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬バイオマーカー探索研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
43,496,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトに初めて投与される開発候補薬や、市販後に多くの患者に投与される薬が、ヒト特異的に重篤な薬物誘導性肝障害を発現する場合が現在でも少なくない。特異体質性肝障害の発症頻度は10万人に1人以下と非常に低いため、医薬品の研究・開発段階で発見が困難である。本研究では薬物誘導性肝障害の予測評価試験系の開発研究について、本年度は特に免疫学的因子の関与を明らかにする研究を重点的に実施した。
研究方法
In vitroの細胞評価系の構築においては、ヒトモノサイト由来の細胞を用いた。肝保護因子の検索、Th1およびTh2細胞の関与の検討においては、マウスを主に用いた。
結果と考察
(1)In vitro評価系の構築研究において、テルビナフィンの処置によるTHP-1細胞のIL-8およびTNFα産生増加には、ERK1/2経路が重要な役割を果たすことが示され、薬物性肝障害の予測に役立つと考えられた。
(2)ジクロキサシリン誘導性肝障害における免疫学的因子の関与の研究では、ジクロキサシリン誘導性肝障害の発症にはTh2因子の関与が示され、薬物誘導性肝障害の新規の研究手法になると考えられる。
(3)薬物誘導性肝障害に対するタモキシフェンによる肝保護作用機序の研究では、肝保護薬の創薬戦略に有用な情報を与える結果となった。
(4)グルタチオン減少モデルラットにおける薬物誘導性肝障害の検討研究では、モデルラットが急性および亜急性の薬物誘導性肝障害を高感度に検出できることを明らかにした。
(5)ヒト肝細胞キメラマウスにおけるトログリタゾン投与実験を行った結果、肝障害マーカーの上昇が認められ、ヒトにおける副作用を未然に防ぐ有用な手段になることが期待できる。
(6)ヒトhepatocyte nuclear factor 4αのmicroRNAによる制御は、miR-24およびmiR-34aによって負に制御され、細胞ストレスや代謝酵素の発現など広範な影響を及ぼしていることを明らかにした。
結論
薬物誘導性肝障害のヒトにおけるin vitro予測系や免疫学的因子の関与について新規の知見を多く見いだす事が出来た。さらに、高感度モデル動物の作出、ヒト肝細胞モデルマウスの利用、そしてmicroRNAによる核内転写因子の制御について、より詳細な検討に成功した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-19
更新日
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